ゲゲゲの鬼太郎、千と千尋の神隠し、妖怪ウォッチなど現在も日本人が愛してやまない妖怪たちは、日本人にとって古くからなじみのある存在でした。怪奇現象や超自然的なモノの存在は、平安時代末期の「今昔物語集」など多くの説話集に残されています。実際に、こうした現象が鬼や妖怪というかたちで造形化されてくるのは、絵と文字で物語を伝える絵巻が登場する中世以降のことですが、その文化が貴族から庶民へと広がるにつれ、個性的な「妖怪」がたくさん誕生することになりました。
代表的な妖怪のひとつに「つくも神」がいます。あらゆるものに魂が宿ると考えるアニミズムを背景に、日本では百年の時を経たモノは「変化」の能力をもつと信じられてきました。よく知られる「百鬼夜行絵巻」では、古くなった台所用品や道具、楽器や武器から変化した恐ろしくも愉快なつくも神たちが、にぎやかに行進しています。魔女やデビルといった西洋の異形のモノたちが、恐ろしく忌避の対象として描かれるのに対し、日本の妖怪たちがこうした古典的作品から現代のアニメ作品に至るまで、どこか愛嬌のある憎めない存在として描かれるのは、日本における異形のモノたちの特徴といえるでしょう。
今宵、京都工芸繊維大学美術工芸資料館に眠る妖怪たちが目を覚まし、みなさまを奇妙な世界へとお連れします。
さあ!一歩踏み込めば、そこは妖怪パラダイス!往きはよいよい、帰りはこわい。楽しむあまり足をひっぱられないようにご注意を…