令和4年度 入学宣誓式 祝辞

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令和4年度 入学宣誓式 学長祝辞

 京都工芸繊維大学工芸科学部及び大学院工芸科学研究科の新入生諸君、入学おめでとうございます。本学を代表して心より歓迎の意を表します。
 また、新型コロナウイルス感染症流行のため、2年以上、様々な制約を受けながらも、本日こうして新たなスタート地点に立たれた皆さんに賛辞を贈りたいと思います。ワクチンや治療薬の開発も進み、ウィズコロナの日常を模索する中、皆さんを支えてこられたご家族、関係者の方々にはやむを得ず本式典へのご出席をご遠慮いただくこととなりました。それらの方々に、深い感謝の意と祝意をお伝えしたいと思います。

森迫清貴学長の祝辞

 この4月に入学されたのは、編入生59名を含む学部生656名、大学院博士前期課程528名、博士後期課程45名です。専門は異なるかもしれませんが、2022年度、令和4年度のそれぞれの学年の京都工芸繊維大学同級生です。本学は、我々が予想し得る未来社会の構築に貢献できる工科系人材を育成する取組を行なっています。未来に挑戦するプロジェクトでは、既存の枠組みを超えた専門分野横断型の取組が必要不可欠です。皆さんは縁あって同級生あるいは同時期に在学することとなりました。そのことが、きっと近い将来意味を持つことになると思います。

 本学は、百二十有余年前、京都高等工藝学校及び京都蚕業講習所に端を発し、永きにわたり発展を遂げてきました。この間、日本文化の源である京都の風土の中で培われた、〈知と美と技〉を探求する独自の学風を築き上げ、学問、芸術、文化、産業に貢献する幾多の人材を輩出してきました。  
 本学の探究する〈知と美と技〉は、京都の文化・文明をベースとしたものです。京都の文化・文明は、高技術・高品質・完璧さを備える匠のものづくりと信用ベースの人間関係によって培われてきました。その京都の高等教育機関として、本学は、卓越したシステムとスタイルの構築と発信、文化のダイバーシティと千年の知恵の集約、京都の地域社会から学ぶ発想と実装を心がけてきました。そして、近年では新たな問題解決を為すデザイン思考から未来の飛躍的発想を為すアート思考の取組みを始めるとともに、異分野和合の知見による新領域学問の創成に挑戦しています。

 二十一世紀において、本学は、国立大学法人として、自主自律の大学運営により社会の負託に応えるため、現在、地球規模で顕在化し直面している幾多の課題の解決法を探究し、未来の持続可能な世界を実現する使命を負っています。そのために、一昨年、学内教職員による将来構想ワーキングチームを立ち上げ、様々な角度から討論を重ね、京都発の先鋭的な国際的工科系大学KYOTO Institute of Technologyとして、これまでにない新しい発想や価値の創造を実現すべく、昨年7月に新たな大学の理念を宣言しました。
 その理念は、未来社会の構築に貢献する新価値の創造を目指し、本学を象徴する3つの方向から創られています。
 第一の方向は、ART×SCIENCEです。すなわち、未来を拓く夢・科学的空想・イノベーションのための飛躍につながるARTの発想と、緻密な分析に基づき、これに具体的形を与えるSCIENCEを統合させ、新価値の創造を目指すというものです。二つ目は、LOCAL×GLOBALです。すなわち、質の高いものづくりと信用に支えられたLOCALで培われた〈京都思考〉に基づき、持続可能な世界的問題を解決するGLOBALな〈地球思考〉を併せ、新価値の創造を目指すというものです。そして三つ目が、TRADITION × INNOVATIONです。すなわち、京都の歴史・文化TRADITION への深い造詣・共存と、それを基盤として磨かれた匠の技INNOVATIONを掛け合わせ、他に追随のできない信用ある新価値の創造を目指すというものです。
 そして、これらの理念のもと、京都が持つ知と技を活用して、教育研究を展開し、新たな価値創造による次世代の社会システムを構築することにより、地球と日本の未来に、人類が「平和で豊か」な美しい社会、「美」を育むことに貢献することを社会的使命として掲げています。

 教職員一同と在学生達は、新しい時代を切り拓くために果敢に挑戦しています。我々は、皆さんの新しい力に期待すると共に、皆さん自身が新たな気持ちで勉学、研究に取り組まれるであろうことを大いに期待しています。皆さんもぜひ我々の取組に加わっていただき、人類、世界にとってWell being な社会を実現するために頑張っていきましょう。
 本日は、誠におめでとうございます。

令和4年4月5日
京都工芸繊維大学長
森迫 清貴