注目研究の紹介 2021年4月

 本学の注目研究を毎月1つずつ紹介します。

 【2021年4月】
  高分子ソフトマテリアルの力学物性と刺激応答特性の研究 (材料化学系 浦山健治 教授)

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高分子ソフトマテリアルの力学物性と刺激応答特性の研究

 “しなやか”という言葉には,「柔軟さ」だけでなく「強靭さ」を兼ね備えた響きがあります。我々は日常的に人体からタイヤ,食品に至るまでしなやかな材料の恩恵を多岐に渡って受けています。 これらの材料の“しなやかさ”は,ひも状の屈曲性の巨大分子である高分子が形成する3次元網目構造に由来しています。我々は,このような高分子ソフトマテリアルと称される物質群の力学特性を独自の手法で多角的に調べています。得られた知見は,柔軟性と強靭性を高度に兼ね備えたソフトマテリアルを開発するための基礎となります。

 高分子ソフトマテリアルの重要な性質には,温度変化,ひずみ,電場などの外部刺激に応答してマクロに変形する特性があります。このような刺激応答特性は,高分子の分子設計や液晶分子などの導入によって付与することができ,ソフトアクチュエータなどへの応用展開が期待されています。我々は,高分子ソフトマテリアルの刺激応答特性の理解と創出を目的とした研究も行なっています。

多軸変形測定による大変形挙動の解析

 材料の力学測定には簡便な単純引張や圧縮がよく使われますが,特性の一面しか捉えていません。我々は,二方向にひずみを自在に与えた状態で各方向の張力を測定できる装置を複数開発し,高分子ソフトマテリアルの力学特性の全容を解明する研究をしています。
特に,自重で変形するような超ソフトゲル材料の二軸伸長特性を調べられる装置は国際的にも極めて希少です。国内外の研究機関で創製された強靭な新規高分子ソフトマテリアルの力学特性を本装置で詳細に調べる共同研究も行っています。

図1

2種の自在二軸伸長測定装置.
測定対象は(左)硬質ゴム,(右)ソフトゲル.

高速で進展するき裂の解析

 き裂の進展は製品の安全性に直結するため,き裂の発生や発生したき裂の進展を抑制する材料設計が必要とされています。材料が変形された状態で発生したき裂は時速100kmを超える高速で進展することも珍しくありません。高分子ソフトマテリアルのき裂の進展機構は未解明の点が多く残されています。我々は高分子ソフトマテリアルを高速で進展するき裂を高速カメラや画像解析で捉えて解析し,進展機構を解明する研究をしています。

図2

高速進展(時速約80km)するゴムのき裂の外観とき裂によって生じるひずみの分布.
硬さの異なる2種のゴムでの比較.

液晶エラストマー・液晶ゲルの刺激応答特性

 液晶エラストマー(LCE)は液晶性をもつゴムです。LCEは,「液晶配向の変化に追随してマクロ変形する」,「液晶配向がマクロ変形をアシストして非常に小さな力で大変形できる(ソフト弾性)」というユニークな性質をもちます。LCEは人工筋肉などのアクチュエータの素材として期待されるなど,アイデア次第で様々な刺激応答挙動を創出できる興味深いソフトマテリアルです。我々は,液晶配向が制御されたLCE膜の伸縮,屈曲,ねじりなどの多様な熱変形挙動や,ソフト弾性に由来するLCEの特異な力学特性を様々な変形を用いた測定によって明らかにしています。

図3

ツイスト配向LCEのらせん形態の温度による変化.
らせんは低温では右巻き,高温では左巻きであり,温度変化によって掌性が反転する.

機能性ゲル微粒子分散液のレオロジー挙動の研究

 溶媒を多量に含むソフトゲル微粒子は硬質粒子と異なり変形や体積変化を示します。このため,その分散液では微粒子を超高密に充填でき,外力がある大きさ以下では流動せず(固体的挙動)それを超えると流動する(液体的挙動)ユニークな特性が発現します。また,体積や粒子間相互作用が温度やpHに応答して変化するゲル微粒子を用いると,環境変化に応答してレオロジー特性が劇的に変化する機能性液体となります。微粒子合成を専門とする学外研究機関と共同で,分散液のレオロジーと機能性に関する基礎研究を行っています。

  • 図4

    ソフトゲル微粒子

  • 図5

    ゲル微粒子が超高密に充填された分散液.
    接触変形によってゲル微粒子は平面的な輪郭(赤の破線)をもつ.

【主な発表論文】

  • Aoyama, T., Yamada, N., Urayama, K. Macromolecules, 54, 2353–2365 (2021).
  • Mai, T.-T., Okuno, K., Tsunoda, K.,Urayama, K. ACS Macro Lett. 9, 762-768 (2020).
  • Okamoto, S., Sakurai, S.,Urayama, K. Soft Matter (2021). DOI: 10.1039/d0sm02244f.
  • Minami, S., Yamamoto, A., Oura, S., Watanabe, T., Suzuki, D.,Urayama, K. J. Colloid Interface Sci., 568, 165-175 (2020).

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