京都工芸繊維大学の前身である京都高等工芸学校は、1902(明治35)年に誕生しました。その初代校長をつとめたのが、工学博士の中澤岩太(1858-1943)です。京都帝国大学理工科大学教授であった中澤は、京都着任以前には母校の東京帝国大学において近代窯業の父・ワグネルの助教をするなど、化学者である一方で美術工芸にも深い関わりをもつ人物でした。また、ベルリン留学やパリ万博視察などの経験を通し、「世界の今」を知る明治人でもありました。19世紀末の京都では、旧来の伝統工芸からの脱却と近代化が強く求められており、中澤は京都高等工芸学校校長として実業教育を推進し、その近代化を牽引していきます。本展では、中澤の東京から京都における業績を振り返り、京都高等工芸学校が美術工芸の近代化に果たした役割を検証します。
本展は、文化庁の2015年度大学を活用した文化芸術推進事業「大学ミュージアム収蔵資料を活用したアートマネージャー育成プログラム―大学ミュージアムによる高度学芸員の育成―」の助成をうけ、京都工芸繊維大学アートマネージャー養成講座2015年度受講生10名が企画いたしました。