京都の墨流し染・糊流し染 -その系譜と新たな可能性-

ポスター

本展覧会では、明治期から現代までの京都の墨流し染・糊流し染の系譜を辿ることで、この染色技法が時代に即しながら意匠や技術を変化させつつも伝承されてきた技法であることを提示するとともに、その過程において失われた技術である糊流し染「マドレー染」を復活させ新たな可能性を探る取り組みを紹介します。

明治期京都において墨流し業を営む八木家の三代目徳太郎は着物の生地に施す墨流し染の連続模様を考案します。一方、京都高等工芸学校色染科の初代主任教授で後に第二代校長を務めた鶴巻鶴一は、その墨流し染に用いる染料と媒染剤、そしてその使用法を開発しました。この八木と鶴巻が改良した墨流し染は、大正期に、鶴巻の弟子の亀井光三郎に引き継がれ、後に糊流し染と称される「改良流し染」の開発につながります。さらにその権利を譲り受けた友禅業の日比野治三郎は、その糊流し染に更なる改良を加え「マドレー染」と称する独自の染色技術を考案しました。昭和期、その「マドレー染」をもとに新たに開発された糊流し技法の「流線染」を習得していた薗部正典氏は、昭和期末に、新開発の顔料を用いて、また新たな墨流し染の技術を開発しました。

現在、墨流し染を京友禅の確固たる技法のひとつとして確立させ現代の名工となった薗部氏は、墨流し染の第一人者として着物業界以外にもアパレル業界他各方面からの注目を集めています。しかし、この系譜のなかの日比野家の「マドレー染」は世代交代によって技術が途絶え幻の糊流し染技法となってしまいました。

こうした系譜を辿った京都の墨流し染・糊流し染ですが、今、日比野治三郎の曾孫、日比野淳平氏によって「マドレー染」の技術が復活しようとしています。八木と鶴巻によって改良された墨流し染と、鶴巻の弟子亀井の改良流し染、この二つの師弟関係にあった伝統の染色技法は、薗部氏の墨流し染と、日比野氏の糊流し染として、師弟の関係持ちつつ揃って再びここに紹介されることになります。

染色技術の変遷とともに墨流し染・糊流し染の美をお楽しみいただき、あわせて、京都の伝統産業の可能性を探るこの試みを暖かい目でご覧いただければ幸いです。

開催期間
2016年5月23日(月)~6月11日(土)
開館時間
10:00-17:00(入館は16:30まで)
休館日
日曜・祝日
入館料
一般200円、大学生150円、高校生以下無料
*京都・大学ミュージアム連携所属大学の学生・院生は学生証の提示により無料で入場できます。

関連企画

ギャラリートーク
日 時
2016年6月4日(土)10:00-
会 場
京都工芸繊維大学 美術工芸資料館1階
申 込
申込不要
主 催
京都工芸繊維大学美術工芸資料館
立命館大学アート・リサーチセンター 文部科学省 共同利用・共同研究拠点「 日本文化資源デジタル・アーカイブ研究拠点」
企 画
染織資料整理活用研究会「糊流し染「マドレー染」の復活における記録と希少染色技法を活かした新たなものづくりの可能性と事業化について」プロジェクト

[プロジェクトメンバー]
研究代表者:鈴木桂子(立命館大学)
研究分担者:並木誠士(京都工芸繊維大学)、青木美保子(京都女子大学)、日比野淳平(株式会社マドレー)

立命館大学アート・リサーチセンター 文部科学省 共同利用・共同研究拠点「日本文化資源デジタル・アーカイブ研究拠点」
《デジタル・アーカイブ手法を用いた近代染織資料の整理と活用プロジェクト》

[プロジェクトメンバー]
研究代表者:青木美保子(京都女子大学)
研究分担者:並木誠士(京都工芸繊維大学)、上田文(京都工芸繊維大学)、鈴木桂子(立命館大学)、山本真紗子(立命館大学)、加茂瑞穂(立命館大学)

助 成
京都産学公連携機構「文理融合・文系産学連携促進事業」
協 力
京都・大学ミュージアム連携
問合せ先
京都工芸繊維大学 美術工芸資料館
TEL:075-724-7924
FAX:075-724-7920
E-mail:siryokan[at]kit.ac.jp (※[at]を@に変換してください)
URL:http://www.museum.kit.ac.jp/
展覧会HP:http://www.museum.kit.ac.jp/20160523.html