血液の分子が脳に侵入すると神経細胞に多大なる悪影響を与える。例えば、食物に含まれているグルタミン酸は、脳神経には強い興奮作用があり細胞死をおこす。ゆえに、脳の血管系は血液脳関門により自由な分子移動を制限している。しかし、脳には血液脳関門を欠く脳室周囲器官と呼ばれる部位が存在し、体液組成の変動や細菌などの侵入を直接感知している。このことは、生命維持に重要なホメオスタシス機構は、脳が直接感知することで、正確で、迅速な応答を可能にしていることを示している。
本セミナーでは、演者らが最近得た脳室周囲器官に関する以下の知見を紹介する。
さらに、これらの新しい知見を総括し、脳室周囲器官を標的にした脳疾病の治療方法開発の可能性について展望する。
【演 者】
宮田 清司
京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 応用生物学系 生体機能学研究分野 教授