寄生虫は酸素濃度が異なる生活環を経て卵から成虫になる。その過程で、酸素濃度に応じてエネルギー代謝経路を変化させ、ATP合成を行っている。なかでも、宿主内の低酸素環境下で作動する低酸素エネルギー代謝経路は、宿主の好気的エネルギー代謝と異なるので抗寄生虫薬の格好の標的になる。
本セミナーでは、回虫フマル酸還元酵素を創薬標的とし、酵素の立体構造に基づいた阻害剤設計(Structure based drug design)について紹介する。回虫を線虫類のモデル生物として見出した阻害剤は、哺乳類の類縁酵素をほとんど阻害しないだけでなく、フィラリア、アニサキス、捻転胃虫など、様々な線虫類に対しても幅広く効果を示す抗線虫薬リード化合物であることが明らかになった。
【演 者】
原田 繁春
京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 応用生物学系 構造生物工学研究分野 教授