我々は、ショウジョウバエをモデル系にして、染色体数異常症等の遺伝病、癌、糖尿病、生体老化の発症機構の解明とそれらを抑制する薬剤等の探索をおこなっている。今回は、ショウジョウバエの造血組織が悪性腫瘍の症状を示す突然変異体について紹介する。
この遺伝子産物はコア・ヒストン遺伝子群の転写とmRNAプロセシングに必要であった。また、網羅的RNA-seq解析の結果、この癌化個体では自然免疫経路が全て活性化していることがわかった。強制発現により癌を抑制する遺伝子群もみいだした。この変異体の原因遺伝子は他の生物にも存在する。ヒトへの応用の可能性も議論したい。
【演 者】
井上 喜博
京都工芸繊維大学・昆虫先端研究推進センター・昆虫バイオメディカル研究部門、応用生物学系・バイオメディカル分野