作品の調査と記録は、いつの時代も美術史研究の出発点です。日本における美術史学が草創期から形成期に入った大正・昭和期、幅広く数多く調査を続けた、相見香雨(1874~1970)田中一松(1895~1983)土居次義(1906~91)。三人の研究者の調査ノートには、三者三様の流儀で作品の記録が連ねられています。当時は、撮影や複写が容易でないことに加え、社会情勢の変化によるコレクションの散逸や、災害や戦争による文化財の破損など、作品をめぐる状況が揺れ動き、目の前の作品の記録をとる行為の切実さは一際強いものでした。三者の記録を通して、美術史学の歩みを回顧すると同時に、調査ノートにとどめられた研究者の目の記憶を再現します。
<出 演>江村知子(東京文化財研究所文化財情報資料部文化財アーカイブズ研究室長)、村角紀子(松江市歴史まちづくり部史料編纂課専門調査員)、多田羅多起子(京都造形芸術大学非常勤講師)
<出 演>並木誠士(京都工芸繊維大学教授)、仲町啓子(実践女子大学教授)、奥平俊六(大阪大学名誉教授)、山下善也(九州国立博物館主任研究員)、五十嵐公一(大阪芸術大学教授)
*本展覧会の準備にあたっては、公益財団法人 出光文化福祉財団より、平成29 年度調査・研究事業助成を受けました。