令和元年度大学院工芸科学研究科学位記授与式 学長祝辞

 

 本日、修士あるいは博士を取得されました皆さん、誠におめでとうございます。京都工芸繊維大学を代表し、心からお祝い申し上げます。また、皆さんをこれまで支えてこられたご家族の皆様、関係者の方々に対し、また、研究を指導された教員の方々に心からお祝いを申し上げるとともに感謝の意を表します。
今年、本学は1949年の大学創立から70年、前身校の一つである京都蚕業講習所は1899年に設置されており、120年を迎えました。もう一つの前身校である京都高等工藝学校からは117年になります。博士課程を設けた1988年の工芸科学研究科の設置からは31年目です。 
 その工芸科学研究科設置以来、これまでに10492名の修士学位と930名の博士学位を授与して参りました。
 本日は、修士学位10493号から10513号まで、課程博士931号から942号までの学位を授与いたしました。皆さんの研究成果は、それぞれの分野において更なる展開のため、また技術革新や産業創出のためにも活用されることが期待されます。皆さんに続く後輩たちの研究にも役立つことになるでしょう。
 ところで今、世界は様々なところで揺れ動き、軋轢を伴い、多くの課題が人類に突きつけられています。大学という高等教育機関は、学習や研究によって人類に関わるあらゆる事項について新たな歴史を積み上げていくことも重要ですが、人類にとっての課題解決に果敢に挑戦する人材を育成することが常に求められています。
 さて、皆さんはSDGsを知っていますか?
 2015年に国連総会で採択された「持続可能な開発目標Sustainable Development Goals」のことです。そこには人類としての17の目標が掲げられています。最初の目標は、あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる、というものです。7番目には、すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する、9番目に強靭なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る、などがあり、13番目には、気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる、となっています。すなわちSDGsは、地球全体、人類社会全体にとっての未来像を掲げています。これら17の目標の具体的な取り組みとして169の細目、ターゲットも示されています。ぜひ一度全体を見ていただきたいと思います。
 一方、日本政府は、現時点で目指すべき未来社会の姿としてSociety5.0を提唱しています。Society5.0とは、サイバー(仮想)空間とフィジカル(現実)空間を高度に融合させたシステムにより経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会(Society)です。
 Society1.0は狩猟社会、Society2.0は農耕社会で、Society3.0が工業社会、Society4.0が情報社会ということです。Society4.0では、知識や情報が必ずしも共有されず、分野横断的な連携が不十分であったことを省み、Society5.0では、IoTで全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報を共用し、今までにない新たな価値を生み出すことで、一人一人が快適な社会となること、一人一人にとって幸せな社会を目指しています。
 日本が先端情報技術等を駆使することによって人間にとって快適な社会を目指すとき、地球全体、人類社会全体にとってのSDGsも念頭に置かねばならないことは当然です。
 本日、学位を授与された皆さんは、理工系の専門研究者、技術者として、SDGsやSociety5.0の実現に向けて、お題目ではなく、具体的に課題を克服し、目標の実現に向けて取り組むことのできる専門研究力、開発力を持っていると期待される人材になったということです。
 皆さんが提出された学位論文の内容・成果は、もちろん重要です。しかし、それ以上に大切なことは、その学位論文をまとめる際に行った実験や調査、論文執筆などを通じて、研究する力を身につけたあなた方自身なのです。そのことを今日、しっかりと自覚してください。博士になった、修士になったことがゴールではなく、その力をどう生かすかを考えるスタートに立ったということなのです。
 社会の様々な課題に対して、皆さんの考える力を駆使して、21世紀の世界の科学、産業、文化に大いに貢献されますことを祈念して、お祝いの言葉といたします。

令和元年9月25日
国立大学法人京都工芸繊維大学長
森 迫  清 貴