令和2年度 学位記授与式 学長祝辞

令和2年度 学位記授与式 祝辞

工芸科学部、大学院博士前期課程、大学院博士後期課程での本学学長からの祝辞を掲載しています。

 

工芸科学部 学位記授与式 祝辞

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 本日、京都工芸繊維大学工芸科学部を卒業され、工学士あるいは農学士の学位を取得されました皆さん、誠におめでとうございます。京都工芸繊維大学を代表し、心からお祝い申し上げます。
 昨年度は、新型コロナウィルス感染症が蔓延し始め、残念ながら学位記授与式を行うことができませんでした。それから一年経ちましたが、新型コロナウィルス感染症の感染拡大は収まらず、ウィルス感染症の怖さを真に人類に知らしめ続けています。われわれは、その間、これまでの日常活動を一変させるような自粛行動を行って来ました。
 その中で、ウィズコロナの生活として、本日の学位記授与式を挙行することとしましたが、皆さんをこれまで支えてこられたご家族・関係者の方々、また指導された教員の方々には、式への出席を控えていただかざるを得ませんでした。それらの方々にも、学長として感謝の意を表します。みなさんからよろしくお伝えいただきますようお願いします。

 この一年、みなさんは、学部最終年度として計画していた様々なことが全くできなかった、あるいは、十分にできなかったということが数多くあったのではないでしょうか。特に、TECH LEADERである専門技術者として計画していた卒業研究、卒業設計等が思うように進まず、通常では経験し得ないような苦労をされたことと思いますが、それぞれの指導教員のもと各課程の卒業認定を取得されたことに対し、心より賛辞をお贈りしたいと思います。

 本学は、様々な課題に直面している我が国そして世界の社会状況を踏まえ、TECH LEADERとなる人材を育成することを目標としています。テック・リーダーとは、履修要項にも記載していますが、本学が名付けた「専門分野の知識・技能を基盤として、グローバルな現場でリーダーシップを発揮してプロジェクトを成功に導くことのできる人材」のことです。このことは、入学後に多くのみなさんが受講された「工芸科学基礎」の授業でも、私からお話ししました。

 みなさんは、専門力を身につけて、本日卒業を迎えられましたが、テック・リーダーの要素である「リーダーシップ」、「文化的アイデンティティ」についてはいかがでしょう。京都という地にある本学での授業や学生生活はお役に立ったでしょうか。また、英語コミュニケーション力の一つの目安としてのTOEICのスコアは向上したでしょうか。TOEICのスコアは必ずしも直接的にグローバルコミュニケーション力につながるものではありませんが、卒業後にも必ずや、みなさんのプラスになることと思います。卒業後は大学院に進学される方も多いかと思いますが、今後もテック・リーダーの4要素の修練を心がけてください。また、社会に出られる方におかれても、テック・リーダーのことを心に留めておいてください。学びは一生です。学びは、いわゆる勉強だけではありません。何か足りないことに気づいたとき、何かに感動したとき、何かに刺激を受けたとき、調べること、学ぶこと、そして考えること、これが大事ですが、こうしたことは必ず自身の成長につながっていきます。

 ところで、みなさんは「工芸科学基礎」で私が本学の歴史やテック・リーダー、そして大学の単位のことなどをお話しした後、MIT(マサチューセッツ工科大学)のメディアラボ所長であった伊藤穣一さんの言葉をご紹介したことについてご記憶があるでしょうか。
「Compasses over Maps」という言葉でした。

 皆さんのほとんどは高校から入学試験を経て本学に入られて、卒業後、企業等へ入社、あるいは大学院進学など、それぞれの道を歩まれることとなりますが、ここまでの人生地図は順調だったでしょうか?「Compasses on Maps」と言える、みなさん自身の地図はこれから先、明瞭でしょうか?

 世界の状況を見てみると、4年前に課題であったことは、あまり解決しているとは言えません。社会はやはり不安定で、日本の内外の状況は明るい未来を見せてくれているとは言いがたく、相変わらず手探りの状態が続いているように思います。新型コロナウィルス感染症という4年前には予測もしなかった事態に否応なく放り込まれています。ITを活用した授業はいずれ必ず行われるようになると思ってはいましたが、全授業をオンラインで行わなければならない状況になるとは思いも寄りませんでした。みなさん学生の方々も教員も、授業への取り組み方法が一変したのではないでしょうか。

 伊藤穣一さんは、AI時代、after Internetの時代への覚悟として、社会は変化が早く予測困難となる時代に突入しており、予め与えられた、あるいは予定した人生地図を進むことは、もはやできなくなっていること、そしてそこでは信頼できるコンパス、方位磁石を自分自身で創らなければならないこと、またそれを常に改良していかなければならないことを教示してくれていたのだと思います。

 実はこのことは、いつの時代にも言えることなのではないでしょうか。

 皆さんは、科学技術の分野を専門として、本日めでたく学位を取得されましたが、各自の専門力とこれまでに修得された力を基礎として、そしてみなさん自身のコンパスを駆使して、存分にその能力を発揮され、「TECH LEADER」として未来を照らす役割を担い、これからの世界の科学、産業、文化に大いに貢献されますことを祈念して、お祝いの言葉といたします。
 健闘を期待しています。

令和3年3月25日
京都工芸繊維大学長
森迫 清貴

大学院工芸科学研究科博士前期課程 学位記授与式 祝辞

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 本日、京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科博士前期課程を修了され、修士の学位を取得されました皆さん、誠におめでとうございます。京都工芸繊維大学を代表し、心からお祝い申し上げます。

 昨年は、新型コロナウィルス感染症感染防止のため学位記授与式を中止せざるを得ませんでしたが、我々はニューノーマルと言われるウィズコロナ生活を続け、ようやく、本日の授与式を挙行することができました。しかしながら、皆さんをこれまで支えてこられたご家族・関係者の方々、また指導された教員の方々には、式への出席を控えていただかざるを得ませんでした。それらの方々にも、学長として感謝の意を表します。皆さんからもよろしくお伝えいただきますようお願いします。
 この一年、経験したことのない生活を強いられ本当に大変だったことと思います。しかし、まだ新型コロナ感染症の終息は見えません。油断せず、今一度気を引き締め、粘り強く感染対策を行いつつ、万全の体調で新しい生活に臨んでください。

 さて、本学は、1988年の工芸科学研究科設置以来、これまでに11019名の修士号の学位を授与して参りました。本日は、修士学位11020号から11500号までの学位を授与いたしました。皆さんの研究等の成果は、各々の分野において更なる展開のため、また技術革新や新たな産業創出のために活用されることが期待されます。皆さんに続く後輩たちの研究にも役立つことと思います。

 本学は、明治維新を端緒とする日本の近代化を進める中で、わが国の状況と時代に応じて変化する産業を支える技術者人材を輩出してきました。今、我々は「TECH LEADER」と呼ぶ高度専門技術者の育成を目標に掲げています。本学の期待するテック・リーダーとは、「専門分野の知識・技能を基盤として、グローバルな現場でリーダーシップを発揮して様々な社会課題に取り組むプロジェクトを成功に導くことのできる人材」のことです。

 何故、本学は「技術者、エンジニア」ではなく、「テック・リーダー」を人材育成目標に掲げているのでしょうか。それは、18世紀後半から始まった産業革命という世界規模の近代化が、地球全体の様々なフェーズで、解決しなければならない難題を引き起こしてしまっているからです。高等教育を受けた技術者は、科学技術の進歩を、真に人類の幸福のために生かすべく、自分自身の専門分野を確実に身につけ修練しつつ、広い視野で様々な分野の人々と協議、協働を心がけていかなければならないと確信しているからです。

 実は、このことは「工芸科学研究科」の設置時から謳われていました。日本初のノーベル化学賞を受賞された福井謙一博士が第6代本学学長を務められたとき、「テクノロジーは、先端的分野の研究開発の推進と同時に、人間の真の豊かさの実現に資し、人間や社会・自然との十分な調和が図られた高次元レベルの指向が必要であり、本学は常にテクノロジーのいわばハード面を基盤としつつも、人間や自然との関係を強く意図したソフト面を強く指向した特色と実績に基づく教育研究を行っており、ソフトテクノロジーを目指す」と提唱され、「工芸科学研究科」と命名されたのです。この精神の基に、本学は2014年、スーパーグローバル大学創成支援事業採択時に、育成目標とする人材をテック・リーダーと名付けました。

 博士前期課程を終え、本日、修士の学位を取得された皆さんは、当に「TECH LEADER」の中核となる人材です。京都工芸繊維大学修士学位取得者としてテック・リーダーの自覚を持ち、未来を明るくする役割を担い、世界の科学、産業、文化に大いに貢献されますことを祈念して、お祝いの言葉といたします。
 
 母校は常に応援しています。頑張ってください。

令和3年3月25日
京都工芸繊維大学長
森迫 清貴

大学院工芸科学研究科博士後期課程 学位記授与式 祝辞

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 本日、京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科博士後期課程を修了され、学術博士あるいは工学博士の学位を取得されました皆さん、誠におめでとうございます。京都工芸繊維大学を代表し、心からお祝い申し上げます。 研究を完成させ、論文を纏めるという重要な時期に、これまで経験したことのない様々な制約を受け、ここまでの道のりは本当に大変だったことと思います。皆さんのご努力に心より賛辞をお贈りしたいと思います。

 昨年は、新型コロナウィルス感染症感染防止のため学位授与に関する式典は行わず、一人ずつこの会場に入っていただき、学位記を手渡しました。今年一年、ニューノーマルと言われるウィズコロナ生活を続けて、ようやく本日の授与式を挙行することができました。しかしながら、これまで皆さんを支えてこられたご家族の方々、関係者の方々、また指導された教員の方々には、式への出席を控えていただかざるを得ませんでした。それらの方々にも、学長として感謝の意を表します。皆さんからもよろしくお伝えいただきますようお願いします。また、式典の時間をできるだけ短くするということで、代表の方に学位記をお渡しする形としました。ご了承ください。

 本学は、1988年の工芸科学研究科設置以来、これまでに1186名の博士号の学位を授与して参りました。
 本日は、課程博士980号から1007号まで、論文博士208号の学位を授与いたしました。皆さんの研究成果は、本学の知的財産に加えられ、提出していただいた学位論文は広く社会に公開され、各々の分野において更なる展開のため、また技術革新や産業創出のためにも活用されることが期待されます。さらに、皆さんに続く後輩たちの研究にも役立つことになるでしょう。学長として誠に喜ばしく、誇りに思います。

 さて、本学は、前身校から120年、国立大学として70年の歴史と伝統の上に立ち、工科系大学としての国立大学法人京都工芸繊維大学は、今年、新しい標語を掲げることにしました。それは、「京都思考KYOTO Thinking」という言葉です。2021年の正月の新聞広告あるいは京都駅の広告パネルでご覧になった方もおられるでしょう。

 京都工芸繊維大学は、言うまでもなく京都にある国際的工科系大学です。この、世界に知られた歴史文化都市、京都にある、ということが重要です。この地は日本の文化の本質にあたる部分を生み出してきたと同時に、ものづくりの発信拠点として多くの「もの」を生み出し、洗練してきました。「匠の技」と呼ばれる伝統工芸のものづくりの技術は、単に継承されるだけのものではなく、常に新しい技術を創出し、革新的な挑戦を続けることによって、更に研ぎ澄まされ、国内外の信用を得てきました。それは、人々の生活を豊かにすることを思考することで、社会的なイノベーションを常に生み出そうとする「みやこ」としての自負によってなされてきたものです。この創造的挑戦心を育んできた京都という場のもつ力を、工学の研究・教育に活かし実践する、これこそが本学のミッションであり、「京都思考KYOTO Thinking」と呼ぶものです。

 さらに、KYOTO Thinkingに3つの理念を示唆するキー・スローガンを掲げました。
 一つ目は、ART×(かける)SCIENCE です。アートはデザインの一つ上位の概念になります。心を突き動かす、パッション、夢です。我々はイノベーションのための飛躍的発想としての科学空想的思考、すなわち現時点ではあり得ないことまで空想する思考と、緻密な分析的思考を融合させ、新価値の創造を目指します。
 二つ目は、LOCAL×GLOBALです。すなわち質の高いものづくりと信用に支えられた京都思考に加え、地球的課題への取組と国際的に通用する価値を理解し、新価値の創造を目指します。
 そして三つ目は、TRADITION×INNOVATIONです。京都の歴史・文化への深い理解と、その信用ベースの価値体系への寄り添いに、追随できない匠の技を掛け合わせ、新価値の創造を目指します。
 かけるの記号はベクトル積的意味もあり、質の異なる空間、分野を新たに生み出すことでしょう。「京都思考KYOTO Thinking」の標語、そして3つのキー・スローガンは、今年度、若手教員を交えた将来構想ワーキングチームの未来投資チームによって考案されました。本学の洋々たる未来を示していると思います。

 皆さんは、京都の地にある本学で研究し、論文を纏められました。根底には「京都思考KYOTO Thinking」があったのではないかと思います。これからは、本学における博士学位取得者として、様々なフェーズで「京都思考KYOTO Thinking」を想い起こし、思考そして行動の活力としていただきたいと思います。21世紀の世界の科学・産業・文化に大いに貢献されますことを祈念して、お祝いの言葉といたします。

令和3年3月25日
京都工芸繊維大学長
森迫 清貴