オープンキャンパス2021研究室紹介(先端ファイブロ科学専攻)

先端ファイブロ科学専攻の研究室(10グループ)の概要を紹介します。
もっと詳しく知りたい方は、先端ファイブロ科学専攻のホームページもご覧ください。

テキスタイル科学研究室  (鋤柄 佐千子、YU ANNIE)
【研究テーマ】テキスタイルの物性から人の感性に訴える布の設計を考える
【キーワード】テキスタイル/触感・視感/心地よさ

 本研究室では、人間の感覚と物性分析の融合によって素材の特性評価方法の開発を行っています。また編み機を使って、様々な3D形状の材料製作と評価もしています。これは、使うひとによい素材を提供するためには、人間の感覚を無視できないというのが根底にあります。
 ひとが触れて素材感を感じ、それが材料の価値や機能性にどのようにかかわるのか、特に繊維、糸、布等のテキスタイル、不織布や毛皮、紙、フィルム等を扱っています。布の風合いや“柔らかさ/かたさ”、“冷たさ/あたたかさ”、“しっとり感”、“光沢”等のひと独自の感覚評価を解析し、数値化、指標化することでさらに優れたヒューマンマテリアルの創製に貢献しています。研究室では、国籍も様々な学生が協力しながら研究をしています。研究室HPもご覧ください。

やわらかさデザイン研究室  (佐久間 淳)
【研究テーマ】素材のやわらかさの分析・評価およびそのデザイン技術の研究
【キーワード】柔軟素材/構成式/数値デザイン

 あらゆる身の回りの素材は、力を加えると必ず変形します。この変形を詳細に調べることによって、高性能な構造・システムを設計したり、生物運動や医療技術を科学的に解明したりする事も可能です。
 そこで本研究室では、素材の変形特性「やわらかさ」を理論的に追求するという観点から、観察した現象を支配する因子を解明し、さらに非線形を考慮して計算機シミュレーションで再現する研究をしています。対象となるものは、天然素材から樹脂、食品、金属からヒトの身体に至るまで、身の回りにあるものは何でも調べようとしています。さらに、この成果によって産業の基盤技術から医療診断技術まで評価し、これまでにないモノのデザインへ役立てる研究もしています。

機能加工研究室  (奥林 里子)
【研究テーマ】低環境負荷技術による繊維の染色機能加工
【キーワード】超臨界二酸化炭素/放射線/保存処置

 本研究室では、人間の生活をさらに安全で豊かにする繊維を創造するため、時代の要求に応えた繊維の設計からその調製までを総合的に学習・研究します。現在は、国策の1つに掲げられる「環境負荷低減対策」を念頭に“地球に優しいものづくり”を目標とし、国内外の企業や研究所とともに研究を進めています。
 このような研究に携わることにより、社会に求められる繊維材料とは何かを学び、自分の目標とする繊維を設計し、さらにその繊維をどうつくりだすのか、これまで研究室で培われた繊維加工の技術に新しい手法を取り入れたプロセスを自らデザインし実行することで、あたらしい繊維を創り出す力を身につけます。

ファイブロ設計工学研究室  (横山 敦士)
【研究テーマ】不均質性を考慮した織物構造体の大変形解析法に関する研究
【キーワード】繊維製品/複合材料/数値解析

 近年、情報機器の性能が飛躍的に向上したため、もの作りの現場においてもCAD/CAM・CAEなどコンピュータを援用した設計・製造が主流となっています。当研究室では、コンピュータによるシミュレーション技術を用いた設計法を研究テーマとして、各種材料、加工法を対象としての研究を進めています。研究対象としては織物構造物、繊維強化複合材料、高分子フイルム等の高分子材料があります。これらの素材を実製品に使用する場合の最適設計法や、製品に加工するための成形加工法の最適化について幅広い研究を行っています。

機能材料研究室  (山田 和志)
【研究テーマ】環境調和型高分子を用いた機能性ナノコンポジット薄膜の創製
【キーワード】高分子薄膜/ナノコンポジット/劣化

 当研究室では、繊維や高分子薄膜、ナノコンポジットに関する研究を幅広く行っています。ナノ材料はバルク材料と比較して比表面積が大きいことから表面活性などが高く、バルクでは観察されない現象や構造を形成することが知られています。
 そこで当研究室では高分子材料を主として、機能性繊維材料および機能性フィルムの開発、ナノ粒子またはナノファイバーとのナノコンポジット創製を行い、熱測定や分光法、原子間力顕微鏡等を駆使することにより、高分子フィルムや微細構造変化をナノ~ミクロンレベルで追っていくことを目指します。

複合材料研究室  (大谷 章夫)
【研究テーマ】連続繊維強化複合材料の成形および構造部材への応用に関する研究
【キーワード】連続繊維強化複合材料/成形/評価

 高性能な複合材料は、金属よりも優れた力学的特性を有し、鉄に対して約1/5の質量であることから、様々な分野で使用が拡大しています。反面、量産方法が確立されていないため、一般的な量産自動車の構造部材のような優れた性能と高生産性が求められる分野への適用が進んでいないのが現状です。
 本研究室では、複合材料の中でも特に高性能を有する連続繊維で強化した複合材料の設計、成形、および評価に関する研究を行っています。高性能化と量産化に必要な樹脂の強化繊維束への含浸メカニズムや、繊維と樹脂の界面特性発現メカニズムについての研究、さらに複合材料が普及した際に不可欠となる部材同士の接合に関する研究などを行っています。

メディア工学研究室  (桑原 教彰)
【研究テーマ】生体データからの深層学習による情動推定
【キーワード】e-Textile/深層学習/生体計測

 超高齢社会を迎えた日本では、働く意欲のある高齢者や障がい者の方が活躍できる場、生産性を向上させる環境づくりを進めていくことが必要です。このような社会的な要請に応えるべく、メディア工学研究室では、高齢者や障がい者の方の社会参加へ向けた、人と人、人と機械をつなぐメディア(媒体)を活用した情報支援の技術を研究しています。
 具体的には高齢者や障がい者の方にとって分かりやすいインタフェースの研究、認知症や記憶障がい者の日常生活を工学的に支援する技術の研究などをスマートテキスタイル、IoT、深層学習などの最新の技術を活用して実施しています。さらに身体、感覚、認知機能に複合的に障がいを有する方を支援する技術の研究にも取り組んでいます。

ファイブロ環境工学研究室  (井野 晴洋)
【研究テーマ】繊維材料を用いた環境に優しい社会の創生
【キーワード】繊維リサイクル/機能紙/ナノファイバー/繊維強化複合材料

 現代社会においては、資源・エネルギーの保全と環境問題が大きなテーマとなっております。ファイブロ環境工学研究室では繊維材料を中心とした廃棄物の新たなリサイクル手法の開発、天然素材を原料に用いた環境に優しいグリーンコンポジットの開発、天然繊維や合成繊維を二次元的に絡み合わせた機能紙の開発の3つを主なテーマにすえ、環境にやさしい繊維材料・繊維産業の構築を目指して学際的視点で研究を推進しています。
 本研究室の学生には積極的に国内外の学会に参加するチャンスを与えて自分の研究をプレゼンテーションする能力を養うよう指導しており、また、研究所や企業とも交流・情報交換をする場を与えています。

スマートテキスタイル研究室  (石井 佑弥)
【研究テーマ】機能性ポリマナノ/マイクロファイバの創製と光電子素子への応用
【キーワード】ナノマイクロファイバ/エレクトレット/疑似圧電/センサ/電界紡糸

 あらゆるモノにセンサを搭載し、大量の情報をインターネット上に接続し利活用するInternet of Things(IoT)は、第4次産業革命をもたらす技術革新として大きな注目を集めています。特にセンサは、IoTを支える最重要素子の1つです。
 一方で、繊維や衣服にセンサなどを編み込み新たな機能を付与したスマートテキスタイルは、従来の衣服のように違和感のない着用と生体情報のセンシングが期待され注目されています。本研究室では、スマートテキスタイルに応用可能な機能性繊維の開発と応用素子の研究に取り組んでいます。
 なお、石井助教の研究テーマは2021年2月に本学の注目研究として紹介されました。

環境・運動生理学研究室  (芳田 哲也、山下 直之)
【研究テーマ】熱中症予防対策の構築、暑熱軽減・体温冷却対策の構築/運動能力の向上のための体温管理
【キーワード】熱中症/冷却/体温調節/有酸素運動/無酸素運動/被服

 本研究室では環境変化を伴う身体運動時の生体反応について生理学的・生体力学的解析を行っています。具体的には様々な環境条件下での運動中のエネルギー供給量や体温調節反応を測定し、ヒトが効率的に作業できる環境を評価し、ヒトの適応能力や運動能力の限界を突き止めて、特殊環境における作業能力の維持・向上の方策について検討しています。
 また、ヒトの生活行動や身体運動(スポーツ)を生理学や生体力学(バイオメカニクス)から捕え、動作分析やアンケートからスポーツ選手のコンディショニングや傷害予防の要点を解明する調査・実験を実施しています。これらの研究は、ヒトが作り出した衣服や機器をヒトの反応から評価する重要な役割を果たしています。