オープンキャンパス2021研究室紹介(機械工学課程)

機械工学課程の研究室(17グループ)の概要を紹介します。
もっと詳しく知りたい方は、機械工学課程のホームページもご覧ください。

熱エネルギー工学研究室  (西田 耕介)
【研究テーマ】燃料電池の内部現象解析と高性能化に関する研究
【キーワード】熱工学/電気化学/燃料電池/バイオ電池/レーザ計測

 燃料電池やバイオ電池など“ 次世代エネルギー変換デバイス” の開発・高性能化を目指し、デバイス内の熱・物質輸送や化学反応の計測・解析を通じて、本質的な課題の抽出と解決に取り組んでいます。
 具体的には、X線やレーザを用いた先進計測技術を駆使して、実作動状態の固体高分子形燃料電池(PEFC)や固体酸化物形燃料電池(SOFC)内の水分やガスの移動現象を包括的に評価し、高効率化・高耐久化を実現する電池デバイスの開発に繋げます。また、ヒトの汗で発電可能な乳酸バイオ電池の高出力密度化を図るため、電気化学的測定に基づいて、広い反応界面かつ高い溶液含浸性を有する微細多孔質炭素電極の設計・開発を進めています。

輸送現象制御学研究室  (北川 石英、外岡 大志)
【研究テーマ】マルチスケールの熱流動現象に対する制御技術の構築
【キーワード】摩擦抵抗低減/対流熱伝達/マイクロ流体デバイス/細胞膜輸送

 液体の流れやそれら流体中での拡散により熱や物質が運ばれる現象は、生物内外、環境、日用品や工業装置のほとんどすべてに見られる物理・化学現象です。この輸送現象を理解し、またそのメカニズムを解明することは、輸送現象の新たな制御法を見出したり、それを応用した新製品を開発したりするために重要です。
 我々は、マイクロバブルや固体粒子を含む流れの熱伝達、機能面上での液滴による熱伝達変化、人工細胞膜を介した物質輸送などに注目し、実験およびシミュレーションを用いて研究を進めています。また、マイクロ流体デバイス中の輸送現象を制御し、微粒子トラッピングやバイオセンシングに応用する研究も行っています。

エネルギー変換輸送工学研究室  (山川 勝史)
【研究テーマ】複雑な変形を伴う移動物体周りの流れ場に対する計算技術の構築
【キーワード】計算流体力学/数値飛行機/連成計算

 エネルギー変換輸送工学研究室では、流動現象が関係する分野のコンピュータシミュレーション技術に関するアルゴリズムとその応用、またその基礎となる流れに関する物理の解明など、様々な面から研究を進めています。
 学問分野では計算流体力学(Computational Fluid Dynamics、CFD)に分類されますが、当研究室では、その枠を超えた、流れに関係するあらゆる運動力学を含めた総合的なCFDの展開を目指し、計算格子形成、高効率アルゴリズム、並列計算、計算の知能化、可視化、さらに、流体中の物体の運動力学等に関する研究、またそれらを統合したシミュレーション技術の構築に向けて研究を行っています。
 なお、山川教授の研究テーマは2020年11・12月に本学の注目研究として紹介されました。

流体エネルギーシステム研究室  (森西 晃嗣、福井 智宏)
【研究テーマ】流動現象の解明を通した豊かで質の高い社会への貢献
【キーワード】マルチフィジックス/生体工学/流体エネルギー

 タービンや風車のように流体の流れにより生じる構造体の運動、あるいは、ピストンやプロペラの運動により駆動される流体の流れなど、流体と構造体の連成問題は工学の至る所で見られます。もっと身近なところでは、私たちヒトの体の中にも、生命を維持するための機構として、血液(流体)と血管壁(固体)との相互作用を見ることができます。
 本研究室では計算力学解析により、このような流体と構造体の連成現象の再現および解明を目指すと共に、流体と機械の間でのエネルギー変換の高効率化や環境問題、さらには生体工学にまで視野を広げて研究を進めています。

計算工学研究室  (西田 秀利、田尻 恭平)
【研究テーマ】ロバストでインテリジェントな流動解析手法の開発
【キーワード】流動解析/計算流体力学/計算スキーム

 ロバストでインテリジェントな高精度・高効率・高汎用性シミュレーション手法の開発及び応用に関する研究を、主として連続体流動現象を対象として行っています。
 具体的には、複雑な流動現象を解析するための汎用性に優れたデカルト座標系による計算手法の開発、複数流動現象を一括して解析するための数値計算手法の開発、また、実験結果とシミュレーション結果とを相互にフィードバックさせる実験結果の情報処理技術に関する研究、開発した計算手法の応用として実形状の琵琶湖内流れのシミュレーションによる酸素濃度等の琵琶湖循環系の予測を実施しています。
 研究を通して高度技術者としての基本的な資質を獲得できる教育を目指しています。

材料力学研究室  (荒木 栄敏、小野 裕之)
【研究テーマ】複合材料のマイクロメカニックス
【キーワード】マイクロメカニックス/複合材料/理論解析

 機械や構造物を設計する際には、その部品や部材に用いる材料の強度を把握することが必要です。特に複合材料の強度はその構造に密接に関係し、材料中の強化繊維や粒子などの空間配置や偏在状態などの微細構造、あるいは、強化材と母材の界面などに生じる微視的な破壊挙動はその巨視的な強度や剛性に大きな影響を与えます。
 机上で設計できると言われて久しい複合材料を、文字通り‘机上’で設計するには、これら微細構造と微視的破壊挙動を想定した解析手法の開発が必要であり、本研究室では、マイクロメカニックスの手法を発展させてこれを開発しています。また、結果の確証のために、有限要素法などの数値解析と実験による評価も行っています。

数値材料デザイン研究室  (高木 知弘、坂根 慎治)
【研究テーマ】コンピュータシミュレーションによる材料・構造・形態の予測と最適化に挑戦する研究
【キーワード】コンピュータシミュレーション/材料組織/機械構造物/混相流

 フェーズフィールド法や有限要素法などを用いたコンピュータシミュレーションによって、金属材料の一連の加工熱処理工程において形成される材料組織を予測し、その最適化を目指す、金属材料の高機能化に挑戦する研究を行っています。ここで、スーパーコンピュータを用いた大規模シミュレーション技術開発も進めています。
 また、機械構造物のトポロジー最適化や、混相流シミュレーションなどにも取り組んでいます。このように、機械工学において構造や形態が時間とともに変化する現象に対してコンピュータシミュレーションを適用した研究を行っています。
 なお、高木教授の研究テーマは2020年1月に本学の注目研究として紹介されました。

知的構造システム学研究室  (増田 新、三浦 奈々子)
【研究テーマ】機械・構造物の自己状態モニタリング、知的構造技術による情報処理と適応的応答制御
【キーワード】知的構造/知的材料/振動制御/免震/健全性監視/状態監視/振動発電

 当研究室では、振動の力学を基本原理とした技術を基盤として、環境への適応能力や自己診断能力などの知的な能力を持つ構造システムの研究を行っています。
 具体的には、構造物に神経(センサ)や筋肉(アクチュエータ)を埋め込むことで、振動や騒音を抑制する能力、環境から未利用エネルギーを回収する発電(エネルギーハーベスティング)能力、および自己状態監視・構造ヘルスモニタリングを行う能力などを付与する研究です。
 さらに、材料や構造および周囲環境とのインタラクションにおける非線形性、受動的性質とエネルギー変換機構を巧みに利用した「賢い構造システム」の創出に挑戦しています。

先端材料学研究室  (森田 辰郎、武末 翔吾)
【研究テーマ】積層造形技術により作製した金属材料の機能性向上
【キーワード】積層造形/三次元プリンタ/チタン/耐熱超合金/アルミニウム

 近年、温室効果ガスの排出量やエネルギーコストを削減するため、優れた材料の使用並びにその高強度化・高機能化による機械製品の効率改善が強く求められています。このような背景から、本研究室では3Dプリンター製チタン合金や異種接合材などの特性評価を行うとともに、各種材料の強度および機能性の改善を目的として表面改質・熱処理に係る研究を進めています。
 得られた結果は知的財産権の取得や学協会活動を通じて社会へ還元し、生産活動の一助となるために努力しています。同時に、研究活動による学生諸君の能力開発にも力を注いでおり、所属する学生諸君は自主的な研究活動や国際会議参加などを通じて実践力を高めています。

塑性工学研究室  (飯塚 高志)
【研究テーマ】新しい板材成形技術の開発と塑性変形メカニズムの解明
【キーワード】塑性加工/塑性力学/板材成形/成形限界/テーラードブランク/形板成形

 材料を固体のまま流して(変形させて)形を作る加工を塑性加工といいます。塑性加工は、主に素材を製造する圧延・押出し・引抜き、板から加工する板材成形、バルク(塊)から加工する鍛造、分離、接合、整形など加工の目的によってさらに分類されています。
 本グループでは、板材成形を中心に新しい成形技術の開発を主に行っています。そのほか、降伏から破断までの塑性変形メカニズムの解明から関連する溶融・接合などの加工プロセスの研究まで幅広い分野を対象として取り扱っています。修士課程では主に実験を中心にした研究活動を行い、実験装置・部品および試験片の設計、加工、作製から実験、データ整理まで一連の作業を一通り行います。

精密加工研究室  (射場 大輔、森脇 一郎、大久保 光)
【研究テーマ】歯車を通じて機械工学の神髄を究める
【キーワード】歯切り/仕上げ加工/精度・性能評価/振動解析/損傷予兆検知/トライボロジー

 非常に古典的ではあるが機械工学の神髄を知る上で最適な機械要素である歯車を研究対象として、歯切り、仕上げ加工、および振動に関する研究を進めるとともに、精度・性能評価、損傷予兆検知技術についての研究も行っています。主なプロジェクトは以下の通りです。
①歯車振動の周波数解析と人工知能による歯車のヘルスモニタリング、導電性インクの印刷による歯車用センサの開発、ネットワーク理論を用いた歯車形状の評価。
②オペランド分光分析に基づく高分子歯車の破壊・潤滑メカニズムの解明、異なる潤滑作用機構を有するナノカーボン添加剤による高機能潤滑剤の開発、100%セルロースナノファイバー成形体の高機能化と機械要素応用。
③Theory of Gearingに基づいた歯車創成加工のコンピュータシミュレーション、プラスチック歯車の負荷容量評価、歯車用高強度鋼材に対するC B F 試験法の開発。
<写真:スマートギヤに関する研究成果(導電性インクのレーザー焼結によるセンサとアンテナの歯車への印刷)>

マイクロ・ナノ加工学研究室  (江頭 快)
【研究テーマ】マイクロ・ナノメートルオーダーの微細加工
【キーワード】微細加工/特殊加工/マイクロ工具

 本研究室では、先端機械・機器を創出するキーテクノロジーとして、マイクロ・ナノオーダーの微細加工の教育・研究を行っています。
 微細加工の試みとして、微細放電加工を中心に、微細切削、微細研削、微細電解加工、超音波重畳微細加工、微細打抜き加工などの最小加工可能寸法を追究する研究を行っています。さらに、これらの研究に不可欠な、極小のマイクロ工具の製作に関する研究にも取り組んでいます。

機能表面加工学研究室  (山口 桂司)
【研究テーマ】高機能表面の創成に関する研究
【キーワード】機能表面創成/研削/研磨/特殊加工

 材料の表面に微細な凹凸を形成することで、本来材料にはない新たな機能を発現することができます。例えば、ハスの葉の表面に現れる超撥水性(ロータスエフェクト)があります。これは、表面に存在する微細な突起によって発現した機能です。
 本研究室では、高速鏡面研削や紫外光支援加工による高能率ナノ鏡面加工に加え、マイクロフォーミングやレーザーテクスチャリングなどによって、物質の表面機能を制御する微細表面構造を創成する研究を行っています。とくに、ダイヤモンドなどの非常に硬い材料や人工関節等に利用されるチタン合金などを対象に、さまざまな加工技術を応用した鏡面加工や微細構造創成に取り組んでいます。

生産システム情報学研究室  (軽野 義行)
【研究テーマ】容器包装に関係する製造工程の数理モデリングとアルゴリズム設計
【キーワード】計画工学/アルゴリズム論/組合せ最適化

 生産や物流のマネジメントに関わる基礎理論の強化には、アルゴリズム設計の体系的な知識が以前にも増して重要になってきています。例えば、計算手間や領域量の評価法、計算複雑度のクラス、動的計画法や深さ優先探索といった基本技法、などです。現在の生産や物流では、取り扱うデータの量が一層増加傾向にあるからです。
 問題の解決に近似アルゴリズムを用いる場合でも、理論に裏打ちされた高速性と精度の保証が望まれています。生産システム情報学研究室では、スケジューリング理論を中心に、組合せ最適化問題として定式化される経路計画や施設配置等の課題について、アルゴリズミックな観点から教育と研究を行っています。

ロボティクス研究室  (澤田 祐一、東 善之)  ※「ロボティクス研究室」の紹介動画はこちら
【研究テーマ】不規則事象を伴うメカトロシステム・ロボットの制御に関する研究
【キーワード】柔軟アーム/ドローン/ロボット/最適制御/確率システム

 メカトロニクス機器やロボットなどは、安定した動作を行わせる目的でフィードバック制御が用いられており、今やなくてはならない重要な技術です。実際にこれらの機器が使用される動作環境は、予測不可能な振動や風などの外乱といった不確定・不規則な要素が作用するため、制御システムを構成する場合も、それらを無視してシステムのモデル化や制御系の設計はできません。
 本研究室では、不確定現象や不規則な外乱を伴う環境下で動作するマニピュレータやドローンなどの制御に関わる諸問題について、ロボット工学、現代制御理論、古典制御理論、確率システム理論などを核として、社会に貢献できる様々な研究に取り組んでいます。
 なお、東助教の研究テーマは2021年7月に本学の注目研究として紹介されました。

ロボットロコモーション研究室  (木村 浩)
【研究テーマ】四脚ロボットの脚負荷に基づく自律歩容生成・遷移、不整地適応
【キーワード】四脚ロボット/歩容生成・遷移/非線形力学系/創発

 ロボット研究の目的には大きく分けて2つあると言われています。1つは「役に立つ機械を作る」ことであり、もう1つは「ロボットを作り動かすことで生物の動く仕組みを理解しようとする」ことです。これら両面からロボット研究を進めようと考えています。
 研究テーマとしては移動(ロコモーション)ロボットを中心に●四脚歩行・走行における歩容自律遷移メカニズムの解明、●四脚ロボットのsplit-beltトレッドミル上での歩容適応機構の解明、等を行っています。

計測システム工学研究室  (村田 滋、田中 洋介)
【研究テーマ】光・流体・音響計測手法の開発と応用
【キーワード】ディジタルホログラフィ/3次元空間計測/動画像解析

 豊かで幸せな人間社会を実現するには、日常生活を支える工業製品の性能から製造プロセスに関わる諸現象、さらに人間そのものの健康状態に至るまで、様々な物理現象や機能を定量的に評価することが欠かせません。
 計測システム工学研究室では、3次元計測・光応用計測・画像処理計測をキーワードに、機械材料や流動などの複雑な現象を把握するための光を利用した新しい計測法に関する教育・研究を行っています。
 特に、レーザ光照明による観測画像をコンピュータで光学理論解析し、測定対象物の空間情報を自動計測するディジタル光画像計測法の開発に取り組むとともに、電子スペックル法の応用計測や動画像解析による多次元流動計測を行っています。