オープンキャンパス2022研究室紹介(デザイン・建築学課程)

デザイン・建築学課程の研究室(34グループ)の概要を紹介します。
もっと詳しく知りたい方は、デザイン・建築学課程のホームページもご覧ください。

情報デザイン研究室  (櫛 勝彦、畔柳 加奈子)
【研究テーマ】ボトムアップ型デザインアプローチの手法及びその応用研究
【キーワード】プロダクトデザイン/インタラクションデザイン/デザイン方法論

 情報技術が進化した今日、デザインの対象は、実体をともなうモノだけでなく、例えば、ネットワーク上のサービスにまで拡がっており、超高齢化・成熟社会とも相まって、人・社会のニーズがますます見えにくくなっています。しかし、社会状況の変化にも関わらず、ニーズの発見とそれに対する創造的解決の生成が、デザイン行為であることに変わりはありません。
 研究室では、複雑化する社会におけるデザイン方法論を、情報収集と分析における論理性と、直観・体験を基とした感覚的アプローチを組み合わせることによって構築しようとしています。

現代デザイン研究室  (水野 大二郎)  ※水野 大二郎教授の紹介動画はこちら
【研究テーマ】マテリアルとサービスのデザインディレクション
【キーワード】マテリアルデザイン/サービスデザイン/ブランディング/デザインディレクション

 本研究室では、主に立体物のデザインを対象として社会とデザインの関係を研究しています。立体物に対する社会的な課題やニーズはどのように生まれるのか。デザインという行為によってそれらはどのように解決され、満たされるのか。過去あるいは現代の事例を分析するとともに、製造や流通の現場に実践的に関わることによって、社会的な課題やニーズに応えるための新たなデザイン手法の開発を進めています。

視覚デザイン研究室  (中野 仁人)
【研究テーマ】グラフィックデザインの展開について、日本の伝統工芸とデザインの関係について
【キーワード】タイポグラフィ/イラストレーション/写真/印刷/エディトリアル/伝統工芸

 現代社会における視覚デザインの役割を調査、分析し、その社会的効果を理論的に検証すると同時に、デザイン活動に如何に反映させ、有効なデザインの実践をおこなっていくかを研究しています。タイポグラフィ、イラストレーション、写真などをベースにして、広告、エディトリアル、商品開発やブランディングなども含みます。
 また、京都の伝統をキーワードにしたデザインの実践にも積極的に取り組み、商品開発とともに展覧会等も随時開催しています。
 <写真:中野ゼミ展 ポスター&フォント デザイン>

伝達デザイン研究室  (西村 雅信)
【研究テーマ】コミュニケーションデザインの展開、構築とその応用
【キーワード】ヴィジュアルデザイン/パッケージデザイン/インフォグラフィックス/新製品開発デザイン/V.I/C.I

「生活をつくるグラフィックデザイン」
 「生活」を「環境・モノ・情報」でとらえた上で、視覚デザインの分野から平面、立体を問わず、広く研究・活動を行っています。特に商品開発デザイン、パッケージデザイン、ブランド構築デザインを専門とし、「価値の伝達」を核に、タイポグラフィ、図像処理、印刷技術、カラー&マテリアル、成形技術、インフォメーション&サインシステムデザイン等を駆使し、検討、実践を行い、今日的視覚デザインの営為の本質を解明し、世に問いかけます。

インテリアデザイン研究室  (多田羅 景太)
【研究テーマ】豊かさの本質とインテリア空間の関係を様々な視点から研究する
【キーワード】インテリアデザイン/インテリアプロダクトデザイン/ファニチャーデザイン/エコロジカルデザイン/デザイン倫理

 現代のインテリアデザインが提供する「便利さ」「美しさ」「豊かさ」の在り方を、デザイン倫理や地球環境保全の側面からも問い直し、物理的にも心理的にも長持ちする室内環境を追求します。
 また、生活者や使用者の価値観を持続・節約型へ導いていく指導的役割も、インテリアデザイナーの資質と位置づけます。そしてこれからのストック型社会において、「創ること」、「維持すること」、「教育・啓蒙すること」が同時にできる人材の養成を目指しています。
 <写真:椅子の実測演習>

製品デザイン計画研究室  (木谷 庸二)
【研究テーマ】デザインマネジメントの視点を通した製品デザイン計画
【キーワード】デザインマネジメント/製品デザイン計画/デザイン論/ブランディング/ネットワーク

 この研究室では、デザインの拡がりを研究しています。我々の生活環境を広い視点で捉え、バランスの取れた価値の高い製品を企画・構想し、その実現プロセスを上手くマネジメントしていくことを、デザインを通して研究しています。デザインの計画・企画では、景観や企業のイメージなどをブランドやデザインとして捉えることも非常に重要です。
 そしてこれらの計画を市場にどう理解させるか、人・モノ・金・情報の現実的な検討を重ねながら、どのように経済活動として成立するかを研究し、実際のプロジェクトを通して実践しています。
 <写真:研究室プロジェクト打合せ風景>

色彩・感性工学研究室  (佐藤 哲也、北口 紗織)
【研究テーマ】モノ・コトと人のつながり -感覚・感性の数量化-
【キーワード】色彩工学/感性工学/繊維科学

 私たちの身の回りには、工業的に作られたモノがいっぱいあります。色彩・感性工学研究室では、このモノの特性を評価する研究を行っています。モノの特性評価には、いろいろな評価がありますが、本研究分野では、モノの物理的・化学的評価と人間側から見た感覚的な評価の橋渡しを行っており、特に、「色彩」の評価を中心に国内外のいくつかの研究機関と共同で研究しています。
 具体的には、色彩から受ける印象の数量化と国際比較、カラーマーケティング、グローバルカラーコミュニケーション、色彩の文化的側面の客観的解析、繊維製品の色彩評価などを研究しています。
 <写真:測色器とカラーサンプル>

情報環境工学研究室  (三村 充)
【研究テーマ】ICT/IoT技術を用いたQOLの向上・知的活動支援
【キーワード】IoT/ICT/ユーザインターフェース/コミュニケーション/発想支援

 スマートフォンをはじめとする携帯型スマートデバイスの普及やセンシング技術の発展、IoT技術によって、人々は常に多くの情報に触れると共にその行動・活動はデータとして収集されています。その規模や精度はかつての比でなく、人々の生活を取り巻く情報環境は近年大きな変化を迎えています。これらのデータは人々の行動や振る舞いを分析・予測するために使われ、マーケティングや技術開発を通じて人々の生活にフィードバックされます。
 本研究室では、このようなデータをQOLの向上や生産性の向上に生かすため、コミュニケーション支援や発想支援、学習支援など、人々の生活・活動を支援するための検討を行っています。

生理環境工学研究室  (小山 恵美)
【研究テーマ】昼夜光環境がヒトの生活や睡眠に及ぼす精神生理的影響の研究
【キーワード】睡眠-覚醒/光環境/生体信号/計測評価/精神生理状態

 昼間「覚醒」して夜間「睡眠」をとる、という昼行性動物の特性として自然な生活が、昼夜の区別が希薄になりがちな現代社会において、相当に脅かされていると考えられます。
 生理環境工学研究室では、ヒトの概日リズムを基盤とする時間生物学的な知見をふまえ、睡眠と覚醒のバランスを個人の生活行動に適合させることを目指し、人間が発する生体信号の計測評価手法を探求するとともに、生活をとりまく光など物理的環境の改善や日常生活行動と関わる精神生理状態評価の研究を推進しています。
 このようなヒトに関わる工学研究は、生活をとりまく空間や製品の設計とその評価のために、重要な研究分野のひとつと考えています。
 <写真:作業課題中の生体信号計測評価; 時計表示デザイン評価の実験風景>

環境デザイン経営研究室  (仲 隆介、松本 裕司)
【研究テーマ】ワークプレイスデザイン、Computational design and design tools
【キーワード】ワークプレイス/Computational design/Shape grammars

 ワークプレイスを中心とした空間に関する研究を行っています。ワークプレイスは、〈ワークスタイル〉、〈ワークツール〉、〈ワークスペース〉の3つで構成され、これらの要素を総合的に調和させる必要があります。我々は、これらの3つの視点から、調査、デザイン、評行、評価のプロセスを繰り返すことで、実際に役に立つワークプレイスをデザインする手法の構築を目指しています。
 また、ワークプレイスにかぎらず、価値の多様化に伴って、解くべき課題がますます複雑化、高度化しています。そうした現代のプレイスデザインへのアプローチとして、コンピューテーショナルデザイン(IT技術を活用したデザインの手法)についても研究しています。

製品産業経営学研究室  (勝本 雅和)
【研究テーマ】イノベーションの企業経営に及ぼす影響や活用法についての研究
【キーワード】イノベーション/MOT/知的財産権

 本研究室は、急速に変化する社会・経済環境の重要な動因の1つであるイノベーションに焦点をあて、その企業経営に及ぼす影響や活用法について研究を行います。領域としては、マクロレベルの技術経済や科学技術政策から、ミクロレベルの技術経営(Management of Technology[MOT])までを対象とします。
 具体的には、技術経済領域において情報技術の活用度の国際比較、政府プロジェクトの効率的な選定法など、また技術経営領域において、企業の技術戦略、技術系ベンチャー企業の起業戦略などの企業戦略、知的資産経営に地域資源も含め企業経営だけでなく地域経営や、技術をはじめとした知的財産の金銭的価値評価手法を研究します。

感性論(美学)・芸術学  (三木 順子)
【研究テーマ】人間の生と芸術における感性及び想像力の意義と可能性
【キーワード】美的経験/芸術諸ジャンル/感性/想像力/形象

 絵画・彫刻・建造物から、写真・映画・演劇・舞踏、さらには音楽や文芸に至る様々なジャンルの作品を考察の対象として、芸術の理論を探求しています。時間や空間や身体についての意識、あるいは、感性や想像力の働きは、芸術を通してどのように変容し成熟していくのでしょうか。芸術への問いは、人間の知覚の在り方、ひいては人間の生き方への問いとして深まっていくこととなります。
 学生は各自で研究のテーマを設定し、ゼミでの研究発表や質疑応答などを通して考察を進め、論文を執筆します。
 <写真:展示のための「切り文字」を東京にて制作中(2019年度は、各自の研究論文執筆に加えて、芸術系の大学の教員・学生とともに、東京で展覧会のインストールを行いました)>

現代芸術論研究室  (平芳 幸浩)
【研究テーマ】現代の芸術実践を社会的文脈(対話・衝突・変容)において検討する
【キーワード】現代アート/受容/キュレーション

 既成の価値観を問い直し新しい価値を創造する「現代芸術」について、多角的なアプローチで研究を行います。個人の表現と解されがちな芸術創造の背景には、表現者自身も気づいていない歴史的・地理的・文化的・政治的文脈が存在しています。いったん生成した表現は解釈を生み、解釈という言葉がもたらす「意味」は、表現を変質させることもあります。
 それゆえ、現代芸術について研究するということは、社会における価値の在り方を問い、文化や社会全般について深く考察することでもあるのです。
 <写真:研究をもとにしたキュレーションにより、京都国立近代美術館で実施した展覧会 2017年>

表象文化論研究室  (井戸 美里)
【研究テーマ】日本美術を中心とする視覚芸術を学際的な視点から研究する
【キーワード】日本美術/視覚芸術/絵画

 芸術作品を成立させる諸要素について多角的に分析を行います。私自身は日本の絵画(特に建築や室礼空間とともに存在する屏風絵や障子絵)を中心に、それらが享受された空間や描かれた図像学的な意味について研究を進めています。
 この研究室では、さまざまな方法論を学び、同時代の文学、歴史、建築など領域横断的な研究を通して、人々が生み出した作品の持つ豊かな世界を明らかにすることを目指します。地域、文化、時代に関わらず、学生は各自の関心のある作品やテーマについて調査し、自分の言葉で伝えることを目標とします。
 なお、井戸准教授の研究テーマは2021年3月に本学の注目研究として紹介されました。
 <写真:美術館での作品調査の様子>

デザイン思考・アントレプレナーシップ研究室  (Sushi Suzuki)
【研究テーマ】人や社会に向けた新しい価値の創造と共有に関する研究
【キーワード】デザイン思考/イノベーション/アントレプレナーシップ

 どうやって世の中に新しい価値を生み出すのでしょうか?この数十年で、イノベーションはニッチな言葉からビジネスの流行語になりました。デザイン思考は20年前には存在していませんでしたが、今では誰もが話題にしています。スタートアップとシリコンバレーの精神は、サブカルチャーから多くの都市の注目の的になりました。アイデアはどのように製品化され、どのように起業され、どのように企業として成功するのでしょうか?
 特定の業界、製品/サービス、または地理に限定せずに、世界で新しい価値を生み出すためのミクロおよびマクロレベルのプロセスと背景を考察します。

サステイナビリティデザイン研究室  (津田 和俊)
【研究テーマ】デザイン、ファブ、バイオ:サステイナビリティの実践的研究
【キーワード】資源循環/ライフサイクルデザイン/工藝/サーキュラーデザイン/パーソナル・ファブリケーション

 オープンデザインやデジタル・ファブリケーション、バイオテクノロジーなどの技術の急速な進展や民主化を背景に、多様な個人が、これらの技術を扱うための知識や実験機器を手元に備え、芸術表現や文化創造、課題解決、工藝制作、または日常生活へと活用していく動きがはじまっています。
 本研究室では、デザイナーやアーティスト、研究者、市民との様々な実践を通じて、オープンデザインやデジタル・ファブリケーション、バイオテクノロジーがより一層身近な技術として受容される未来像を描きます。また、これらの技術による循環型社会や自然共生社会の構築や、サステイナビリティの向上に向けたデザインリサーチの可能性を模索したいと思っています。

都市地域居住空間計画学研究室  (魚谷 繁礼)
【研究テーマ】京都及び国内外の都市地域の計画・変容そして現況に関する調査研究、都市地域における建築モデルの提案
【キーワード】都市/地域/建築/タイポロジー/モデル/グリッド都市/京都/アジア

 都市や地域を歩いているなかで出逢う多様な空間はどのようにして生成されるにいたったのか。多くの都市は計画により建造され、少なくない都市は、計画主体亡き後も、人々が棲みこむことによりその構造を変容させつつ生き続けてきました。その延長としての都市構造の現況を調査研究したいと思います。
 主な対象は京都旧市街です。(加えて国内外の都市、特にアジア諸都市を対象に、その形式と構造の変容過程についても比較研究したいと思います。)またそのような都市において、いかなる建築を計画すればいいでしょうか。この問いに応えるべく現代において型となりうるような建築モデルの設計案を検討したいと思います。それは新築かもしれないし、既存建築の改修や増築かもしれないですが、例えばそれは街区構造を改編するような建築であると考えます。

建築設計研究室  (角田 暁治)
【研究テーマ】村野藤吾の設計プロセス及び建築造形の根拠の在り様について
【キーワード】村野藤吾/情緒性/建築造形原理

 本研究室では、建築設計に関わる有形無形の諸要素や現象についての理論的研究や、建築言語の造形原理の根拠についての分析を行うとともに、実践的な設計を通してその具体的な展開を検証しています。着想したアイデアを建築として成立可能なものとするために幅広い視点から問題を捉え、自らの意図を正しく第三者に伝えるための修練を行っています。
 また、本学美術工芸資料館所蔵の村野藤吾の設計図面の整理と分析を通して、設計プロセスと作品の関係についての考察も行っています。

建築デザイン研究室  (木下 昌大)
【研究テーマ】最適化する建築 -持続可能な風景をめざして
【キーワード】建築デザイン/設計手法/最適化/サスティナビリティ/風景

 建物がつくられるとき、そこにはあらゆる次元で多くの与条件が存在します。それらの与条件が取りこぼされず、切り捨てられず、高度に統合されたとき、その建物は内外の環境をより最適なものに変える「建築」と呼べるものになると考えます。そのような「建築」をどのようにしてデザインするのか、その方法論を研究と実践の両側面から探究していきます。

建築設計研究室  (金野 千恵)  ※金野 千恵特任准教授の紹介動画はこちら
【研究テーマ】生きることとつくることをつなぐ建築意匠論・設計論
【キーワード】建築設計/建築意匠論/ロッジア/コモン/ケア/コンビビアリティ

 現代の私たちの暮らしと、それを取り巻く環境の関係について、調査研究や設計を通して思考していきます。近代化を経て、私たちの生活は安定し便利さを獲得しましたが、その代わりに生きる術や、暮らしを楽しむクリエイティブな能力を減退させてきたのではないでしょうか。
 私たちの身体に比して大きな建築やまちを含む環境を、対象化するのではなく身体と連続する存在と捉え、ともに構築し持続させていく術を考えていきたいと思います。

建築設計研究室  (武井 誠)  ※武井 誠特任教授の紹介動画はこちら
【研究テーマ】建築の新しい境界空間
【キーワード】建築設計/境界空間/中間領域/閾/ピロティ/都市計画

 建築を生み出すことは文化をつくることです。人間が本能的に身を守るために洞窟を住処にしてから、人間が創造する構築物が日々の暮らしを豊かにし、人々が集まり住まい、都市が形成されます。そうやって建築を通して人間が歴史をつくっていくことが文化なのです。地球という自然の中で建築をつくることは、地表との物理的な関係性を構築すること、言いかえれば重力を相手にすることです。
 例えば、ル・コルビュジエが自然物と人工物の間の新しい境界をつくり出す建築形式「ピロティ」を考案したように、現代において、私と公、内部と外部、土木と建築といった、異なる2つの領域を横断し、建築の利用者だけでなく、人々が気軽に立ち寄ることのできる、多様な活動を育む新しい境界空間のあり方を探求していきたいと考えています。
 なお、武井特任教授の研究テーマは2021年9月に本学の注目研究として紹介されました。

現代建築設計研究室  (中村 潔)
【研究テーマ】現代建築の設計思想・手法研究
【キーワード】空間/場所/テクトニック/構造/構想力/現代思想/庭園/日本の思想

 モダニティの本質は、事後的に観察される進化や進歩ではなく、また革命的な刷新でもなく、現時点で世界にある過去や自然や思考からもたらされたすべてのものを材料とみなして、未来が善く美しくなる可能性に賭けた、現時点では世界にない新しいものを形成しようとする意思の持続です。私たちはそうした形成への意思をもって、新しい空間形式の実在化を図る建築を現代建築と定義します。
 この研究室では、現代建築の設計を方向づける建築理念の創出、方法の開発、過去データベースの再解釈を研究します。さらにそうした形成の原動力となる、技術や身体や環境や歴史へと回帰し、それらの意味を更新しつつ再統合する構想力を養います。

建築設計学研究室  (長坂 大)
【研究テーマ】既存環境と新しい空間構想
【キーワード】コンテクスト/地球/環境/都市/集落/建築/ランドスケープ/建築家

 建築設計とは人間のための地球の改修計画です。建築単体はもちろん都市や自然といった地球上の空間すべてに美意識を持ってほしい。私が学生時代に最も衝撃を受けたのは『建築家なしの建築』に登場する世界の集落でした。天才建築家といえども到達できない圧倒的な造形美。長期的な時間軸で育まれる人間の生存活動の軌跡。単純な原理と複雑な結末。美しい都市や個性的な集落には、個性的発明や各種の生成原理が蓄積されています。
 それでは私たちは建築家として、家や村や都市を設計するにはどうしたらいいのでしょうか。本研究室ではこんな問いを契機として、新しい建築をつくるための実践的方法を探求しています。

建築・都市設計論研究室  (松隈 洋)
【研究テーマ】日本のモダニズム建築から現代の都市と建築の在り方を学ぶ
【キーワード】モダニズム建築/前川國男/ル・コルビュジエ/村野藤吾/坂倉準三

 建築から都市へと広がる公共空間を軸に、設計方法論を幅広く学ぶ研究室です。特に日本のモダニズム建築に着目し、そこで試みられた方法などを建築家の仕事から学びます。その成果として、本学美術工芸資料館が所蔵する村野藤吾の設計原図を用いた展覧会を継続的に14回にわたって開催してきました。
 その他、ル・コルビュジエ、A・レーモンド、坂倉準三、C・ペリアン、前川國男、白井晟一、谷口吉郎・谷口吉生、丹下健三、大髙正人など、全国各地で開催される多くの建築展の企画にも協力しています。
 モダニズム建築に学びながら、現代に有効な設計方法を見つけ出し、実践的な設計デザインに有効な幅広い研究に取り組むことが目標です。
 なお、松隈教授の研究テーマは2020年6月に本学の注目研究として紹介されました。

建築構造研究室  (金尾 伊織、満田 衛資、村本 真、小島 紘太郎)  ※「建築構造研究室」の紹介動画はこちら
【研究テーマ】歴史的建造物を含む建築物の耐震性能評価と構造設計技術の開発
【キーワード】耐震構造/伝統的建築/構造力学/構造設計

 本研究室では、歴史的・伝統的建築を含む様々な建築物の耐震性能を向上させる研究から、構造設計技術に至るまで幅広い分野を対象としています。建物が崩壊に至るまで追跡可能な大変形骨組解析法の開発を行うと共に実験的検討を行い、建物の性能を精確に評価する手法を検討しています。
 さらに、長周期地震動と建築物の共振現象を効率的に評価する方法の開発も行っています。評価手法の確立と並行して、構造設計者支援の立場に立ったAIやIoTを用いた新しい時代の構造設計手法の開発を行います。これらの研究成果に基づき、デザイン性と安全性に優れた構造設計技術を確立することを目指しています。
 <写真:茶室などにみられる極めて薄い土壁の性能評価実験の様子>

建築計画・設計研究室  (阪田 弘一)
【研究テーマ】多様性に開かれ持続性に富んだ建築・まちづくりへの取り組み
【キーワード】居住/公共性/再生/防災

 住まいをはじめとする建築、その総体としてのまちは、人の生活の基礎となる空間です。望ましい建築そしてまちをつくることは、住まい手や使い手自身が計画や建設、そして維持管理に積極的に関わり続けていけることが重要です。しかし現代社会は分業化・複雑化が進み、人々が建築やまちとそうした直接的な関係をうまく持てずにいます。
 そこで本研究室では建築・地域計画の分野において近年は以下のような研究テーマに、設計・ものづくりの実践、当事者への支援活動なども含め、取り組んでいます。
1)災害時避難に配慮したまちづくり
2)被災者のための応急居住空間
3)難病患者や認知症高齢者が住み続けられる住まい-まち
4)建築・まちの再生・復興手法
 <写真:都市・建築防災研究と被災地支援の一環として、東日本大震災の津波で全壊した石巻の歴史ある映画館と石巻市民の復興を願い、映画館跡地近くでの一日限りの仮設野外映画祭の企画・設計・施工に携わった。>

建築計画・地域施設計画研究室  (高木 真人)
【研究テーマ】伝統的空間の機能的継承/こどもを元気にする空間づくり
【キーワード】中間領域/こども環境/地域施設

 建築計画の分野において、特に伝統的な中間領域的空間に関する研究やこどものための空間づくりに関する研究を行っています。
1)廊・縁側など伝統的な中間領域的空間を機能的な側面から分析・再評価し、再生・継承することや、保育施設など現代の地域施設計画への応用を考えています。
2)こどもが自由に外遊びできる環境に関する研究や、保育施設計画に関する研究、公立小学校の再編やそれにともなう廃校の利活用に関する研究を行っています。

都市計画・都市史研究室  (岩本 一将)
【研究テーマ】質の高い都市空間の形成手法に関する研究
【キーワード】歴史まちづくり/景観まちづくり/都市計画/都市史/土木史

 都市空間を対象に、社会の抱える問題(環境改善や交通事故の減少、地域コミュニティの強化、歴史的資源の保全・活用)の解決に寄与している国内外の先進的事例に着目し、フィールド調査やヒアリング調査、資料(史料)調査を通じて、官民連携の体制構築や合意形成手法、空間設計の工夫、都市の歴史的変遷などを分析することに取り組んでおります。現在は大きく以下の3テーマを研究しています。
1)歴史まちづくりに資する公共空間デザインに関する研究
2)海外の先進的な公共空間活用の実現過程に関する研究
3)港湾都市の形成に関する都市史研究

都市・建築サーヴェイ研究室  (登谷 伸宏、赤松 加寿江)  ※赤松 加寿江准教授の紹介動画はこちら
【研究テーマ】日本及び西欧の歴史都市、歴史的建造物に関する調査・研究
【キーワード】都市史/領域史/景観史/京都/日本建築史/都市・建築サーヴェイ

 本研究室では、日本やヨーロッパの建築・集落・都市を対象とし、実測調査、古文書・絵図の読解などを通してそれらの持つ歴史的な価値や多様性を理解することを目指しています。さらに、調査・研究を通して、これらを将来の文化遺産としていかに保存・活用していくのかについての提案も行っています。現在は、
1)近世京都の都市史研究
2)中近世移行期における城下町の形成に関する研究
3)近世寺社建築の調査・研究
4)近世イタリアの都市史研究
5)イタリアの建築・集落・都市調査と保存・再生手法の研究
6)ヨーロッパにおける文化的景観の研究、を進めています。
 <写真:1日建築見学会の様子(仁和寺二王門)年に数回、近畿を中心に歴史的な建造物や都市の見学を行っている。>

都市史研究室  (小野 芳朗)
【研究テーマ】日本の都市空間の歴史的研究
【キーワード】都市史/空間史/環境史/名所論

 本研究室では、都市や地域がたどってきた歴史を様々な史料を用いて捉え、その形成・発展あるいは衰退の過程と要因について考究しています。具体的なテーマとしては、近代都市の形成史研究、都市と水に関する研究、近代都市景観の成立史研究、近世武家地・寺社地の空間構造の研究などに取り組んでいるところです。

都市史・都市論研究室  (大田 省一)
【研究テーマ】日本・アジアの近現代都市空間の形成・変容過程と都市解析
【キーワード】都市空間史/近代都市計画史/都市論

 近代の建築の歴史研究を発展させて、建築を成り立たせる都市空間の歴史と論理の研究に取り組んでいます。都市には、政治、経済、文化、生活とあらゆるものが積層しています。都市の空間に着目し調査することで、その状況を分析し、都市を構成するさまざまな要素と、その関係を明らかにしていきます。
 分析対象として取り組むフィールドは、主にアジアと日本の都市です。

近代建築史・近代建築保存再生学研究室  (花田 佳明、中山 利恵、笠原 一人、三宅 拓也)
【研究テーマ】近代建築の歴史及び保存再生、活用、リノベーション
【キーワード】近代建築/保存再生/リノベーション/建築修復技術/建築アーカイヴズ

 近年、優れた近代建築や近代の建築(民家・町家等も含む)が各地で解体の危機に瀕しています。しかし、歴史を正しく生かしつつ現代の用途に適合する優れた保存・活用ができれば、私たちの都市環境に歴史的な深みと新しい機能の両者を与えることができます。
 本研究室では、近代の建築家や大工などの技術者とその作品、そこで展開された造形と技術、それを支えた制度と地域について研究しています。加えて、その近代建築の保存・改修をめぐる理念・方法・技術・美意識について、グローバルな視点での調査・研究を行っています。

日本建築史・都市建築遺産論研究室  (清水 重敦、松田 剛佐、MARTINEZ Alejandro)  ※MARTINEZ Alejandro助教の紹介動画はこちら
【研究テーマ】都都市建築遺産の調査研究とその保存活用の実践/日本建築等の木造伝統建築の様式や意匠、材料や技術などの実証的な調査研究
【キーワード】文化遺産/都市建築遺産/文化的景観/伝統的建造物群/日本建築/建築生産史/寺社/数寄屋/民家

 本研究室では、日本・東アジア、あるいは世界における木造を中心とした伝統建築を研究対象とします。日本あるいは東アジア建築史・都市史の研究を基盤として推進するとともに、研究室から積極的に外に出て、伝統建築、町並み、都市、文化的景観といった文化遺産、すなわち「都市建築遺産」を幅広く対象として具体的な保存再生・まちづくりのプロジェクトを実施していきます。研究室の現在のテーマには、
1)文化遺産の保存活用に関する制度と理念の研究
2)文化的景観や歴史的町並みの調査研究とまちづくりの実践
3)日本建築等の木造伝統建築に関わる意匠・技術・文化の研究、などがあります。

西洋建築史・建築論研究室  (西田 雅嗣)
【研究テーマ】建築とは何かを歴史の中に考える
【キーワード】建築史学/建築考古学/比較建築論

 フィールド調査を軸にした西洋中世建築の考古学研究と、日本建築をフランスの研究者と考える比較建築文化論の研究室です。日仏共同研究のほか、学生も含めた日仏間の行き来が盛んで、特にパリ=ソルボンヌ大学の美術史・考古学研究グループとは密接な関係にあります。
 建築史・建築論は、理論的な基礎研究分野ですが、フランスの中世教会保護活動や、フランスにある日本建築の修理などにも、現地研究者や公共団体などとともに関与しています。