オープンキャンパス2022研究室紹介(機械工学課程)

機械工学課程の研究室(19グループ)の概要を紹介します。
もっと詳しく知りたい方は、機械工学課程のホームページもご覧ください。

熱エネルギー工学研究室  (西田 耕介)
【研究テーマ】燃料電池の内部現象解析と高性能化に関する研究
【キーワード】熱工学/電気化学/燃料電池/バイオ電池/レーザ計測

 燃料電池やバイオ電池など「次世代エネルギー変換デバイス」の開発・高性能化を目指し、デバイス内の熱・物質輸送や化学反応の計測・解析を通じて、本質的な課題の抽出と解決に取り組んでいます。
 具体的には、X線やレーザを用いた先進計測技術を駆使して、実作動状態の固体高分子形燃料電池(PEFC)や固体酸化物形燃料電池(SOFC)内の水分やガスの移動現象を包括的に評価し、高効率化・高耐久化を実現する電池デバイスの開発に繋げます。また、ヒトの汗で発電可能な乳酸バイオ電池の高出力密度化を図るため、電気化学的測定に基づいて、広い反応界面かつ高い溶液含浸性を有する微細多孔質炭素電極の設計・開発を進めています。

輸送現象制御学研究室  (北川 石英)
【研究テーマ】マルチスケールの熱流動現象に対する制御技術の構築
【キーワード】摩擦抵抗低減/対流熱伝達/マイクロ流体デバイス

 流体の運動によって熱や物質が運ばれる現象は、環境・日用品・工業装置などで見られる物理現象です。この輸送現象を理解し、またそのメカニズムを解明することは、輸送現象の新たな制御法を見出したり、それを応用した新製品を開発したりするために重要です。
 本研究室では、機能表面を利用した気泡輸送、気泡や粒子を含む流れの熱伝達、撥水面を利用した摩擦抵抗の低減、液体中のマイクロプラスチックの捕集などに注目し、実験およびシミュレーションによる研究を行っています。

バイオマイクロシステム研究室  (外岡 大志)
【研究テーマ】細胞の動作原理を利用したマイクロ・ナノロボットの創製
【キーワード】マイクロ・ナノマシン/人工細胞/バイオセンサ/人工細胞膜

 ロボットを微小化すると、より狭い環境、例えば消化管内や血管内等で活躍するロボットを実現することができると考えられます。しかし、機械部品を小さく加工し組み立てるという従来の方法では、ロボットの微小化には限界があります。マイクロメートル、あるいはナノメートルのサイズまで微小化するためには、従来法の延長ではない新たなアプローチによるロボットの作製が求められます。
 当研究室では、直径数マイクロメートルにも関わらず様々な機能を有する「細胞」に着目し、タンパク質やDNA等の細胞を構成する材料を利用することで、細胞型のマイクロ・ナノロボットを実現しようとしています。

エネルギー変換輸送工学研究室  (山川 勝史)  ※山川 勝史教授の紹介動画はこちら
【研究テーマ】複雑な変形を伴う移動物体周りの流れ場に対する計算技術の構築
【キーワード】計算流体力学/数値飛行機/連成計算

 本研究室では、流動現象が関係する分野のコンピュータシミュレーション技術に関するアルゴリズムとその応用、またその基礎となる流れに関する物理の解明など、様々な面から研究を進めています。
 学問分野では計算流体力学(Computational Fluid Dynamics、CFD)に分類されますが、本研究室では、その枠を超えた、流れに関係するあらゆる運動力学を含めた総合的なCFDの展開を目指し、計算格子形成、高効率アルゴリズム、並列計算、計算の知能化、可視化、さらに、流体中の物体の運動力学等に関する研究、またそれらを統合したシミュレーション技術の構築に向けて研究を行っています。
 なお、山川教授の研究テーマは2020年11・12月に本学の注目研究として紹介されました。

流体エネルギーシステム研究室  (福井 智宏)
【研究テーマ】赤血球に学ぶ機能性流体の創製
【キーワード】生物流体力学/生体医工学/レオロジー

 微小循環系における血液の見かけ上の粘度(実効粘度)は、その力学的環境 (ひずみ速度)や幾何学的環境(血管径)に合わせて、実に10倍も変化します。 これは主に、赤血球と血漿ならびに血管壁との力学的相互作用に起因します。
 本研究では、血液のように自発的・機能的レオロジー制御を可能とするような、 機能性流体の創製を目指します。

計算工学研究室  (西田 秀利、田尻 恭平)
【研究テーマ】ロバストでインテリジェントな流動解析手法の開発
【キーワード】流動解析/計算流体力学/計算スキーム

 ロバストでインテリジェントな高精度・高効率・高汎用性シミュレーション手法の開発及び応用に関する研究を、主として連続体流動現象を対象として行っています。
 具体的には、複雑な流動現象を解析するための汎用性に優れたデカルト座標系による計算手法の開発、複数流動現象を一括して解析するための数値計算手法の開発、また、実験結果とシミュレーション結果とを相互にフィードバックさせる実験結果の情報処理技術に関する研究、開発した計算手法の応用として実形状の琵琶湖内流れのシミュレーションによる酸素濃度等の琵琶湖循環系の予測を実施しています。
 研究を通して高度技術者としての基本的な資質を獲得できる教育を目指しています。

材料力学研究室  (荒木 栄敏、小野 裕之)
【研究テーマ】複合材料のマイクロメカニックス
【キーワード】マイクロメカニックス/複合材料/理論解析

 機械や構造物を設計する際には、その部品や部材に用いる材料の強度を把握することが必要です。特に複合材料の強度はその構造に密接に関係し、材料中の強化繊維や粒子などの空間配置や偏在状態などの微細構造、あるいは、強化材と母材の界面などに生じる微視的な破壊挙動はその巨視的な強度や剛性に大きな影響を与えます。
 机上で設計できると言われて久しい複合材料を、文字通り「机上」で設計するには、これら微細構造と微視的破壊挙動を想定した解析手法の開発が必要であり、本研究室では、マイクロメカニックスの手法を発展させてこれを開発しています。また、結果の確証のために、有限要素法などの数値解析と実験による評価も行っています。

数値材料デザイン研究室  (高木 知弘、坂根 慎治)
【研究テーマ】コンピュータシミュレーションによる材料・構造・形態の予測と最適化に挑戦する研究
【キーワード】コンピュータシミュレーション/材料組織/機械構造物/混相流

 フェーズフィールド法や有限要素法などを用いたコンピュータシミュレーションによって、金属材料の一連の加工熱処理工程において形成される材料組織を予測し、その最適化を目指す、金属材料の高機能化に挑戦する研究を行っています。ここで、スーパーコンピュータを用いた大規模シミュレーション技術開発も進めています。
 また、機械構造物のトポロジー最適化や、混相流シミュレーションなどにも取り組んでいます。このように、機械工学において構造や形態が時間とともに変化する現象に対してコンピュータシミュレーションを適用した研究を行っています。
 なお、高木教授の研究テーマは2020年1月に本学の注目研究として紹介されました。

知的構造システム学研究室  (増田 新)
【研究テーマ】機械・構造物の自己状態モニタリング、知的構造技術による情報処理と適応的応答制御
【キーワード】知的構造/知的材料/振動制御/健全性監視/状態監視/振動発電

 本研究室では、振動の力学を基本原理とした技術を基盤として、環境への適応能力や自己診断能力などの知的な能力を持つ構造システムの研究を行っています。
 具体的には、構造物に神経(センサ)や筋肉(アクチュエータ)を埋め込むことで、振動や騒音を抑制する能力、環境から未利用エネルギーを回収する発電(エネルギーハーベスティング)能力、及び自己状態監視・構造ヘルスモニタリングを行う能力などを付与する研究です。
 さらに、材料や構造および周囲環境とのインタラクションにおける非線形性、受動的性質とエネルギー変換機構を巧みに利用した「賢い構造システム」の創出に挑戦しています。

先端材料学研究室  (森田 辰郎、武末 翔吾)  ※森田 辰郎教授の紹介動画はこちら
【研究テーマ】積層造形技術により作製した金属材料の機能性向上
【キーワード】積層造形/三次元プリンター/チタン/耐熱超合金/アルミニウム

 近年、温室効果ガスの排出量やエネルギーコストを削減するため、優れた材料の使用並びにその高強度化・高機能化による機械製品の効率改善が強く求められています。このような背景から、本研究室では3Dプリンター製チタン合金や異種接合材などの特性評価を行うとともに、各種材料の強度及び機能性の改善を目的として表面改質・熱処理に係る研究を進めています。
 得られた結果は知的財産権の取得や学協会活動を通じて社会へ還元し、生産活動の一助となるために努力しています。同時に、研究活動による学生諸君の能力開発にも力を注いでおり、所属する学生諸君は自主的な研究活動や国際会議参加などを通じて実践力を高めています。
 なお、森田教授の研究テーマは2022年4月に本学の注目研究として紹介されました。

塑性工学研究室  (飯塚 高志)
【研究テーマ】新しい板材成形技術の開発と塑性変形メカニズムの解明
【キーワード】塑性加工/塑性力学/板材成形/成形限界/テーラードブランク/形板成形

 材料を固体のまま流して(変形させて)形を作る加工を塑性加工といいます。塑性加工は、主に素材を製造する圧延・押出し・引抜き、板から加工する板材成形、バルク(塊)から加工する鍛造、分離、接合、整形など加工の目的によってさらに分類されています。
 本グループでは、板材成形を中心に新しい成形技術の開発を主に行っています。そのほか、降伏から破断までの塑性変形メカニズムの解明から関連する溶融・接合などの加工プロセスの研究まで幅広い分野を対象として取り扱っています。修士課程では主に実験を中心にした研究活動を行い、実験装置・部品および試験片の設計、加工、作製から実験、データ整理まで一連の作業を一通り行います。

精密加工研究室  (射場 大輔)
【研究テーマ】⻭車を通じて機械工学の神髄を究める
【キーワード】⻭切り/仕上げ加工/精度・性能評価/振動解析/損傷予兆検知

 非常に古典的ですが機械工学の神髄を知る上で最適な機械要素である⻭車を研究対象として、⻭切り、仕上げ加工、及び振動に関する研究を進めるとともに、精度・性能評価、損傷予兆検知技術についての研究も行っています。主なプロジェクトは以下の通りです。
 ⻭車振動の周波数解析と人工知能による⻭車のヘルスモニタリング、導電性インクの印刷による⻭車用センサの開発、ネットワーク理論を用いた⻭車形状の評価、オペランド分光分析に基づく高分子⻭車の破壊メカニズムの解明、プラスチック⻭車の負荷容量評価。
<写真:スマートギヤに関する研究成果(導電性インクのレーザー焼結によるセンサとアンテナの⻭車への印刷)>

マイクロ・ナノ加工学研究室  (江頭 快)
【研究テーマ】マイクロ・ナノメートルオーダーの微細加工
【キーワード】微細加工/特殊加工/マイクロ工具

 本研究室では、先端機械・機器を創出するキーテクノ ロジーとして、マイクロ・ナノオーダーの微細加工の教 育・研究を行っています。
 微細加工の試みとして、微細 放電加工を中心に、微細切削、微細研削、微細電 解加工、超音波重畳微細加工、微細打抜き加工な どの最小加工可能寸法を追究する研究を行っていま す。さらに、これらの研究に不可欠な、極小のマイクロ 工具の製作に関する研究にも取り組んでいます。

機能表面加工学研究室  (山口 桂司)
【研究テーマ】高機能表面の創成に関する研究
【キーワード】機能表面創成/研削/研磨/特殊加工

 材料の表面に微細な凹凸を形成することで、本来材料にはない新たな機能を発現することができます。例えば、ハスの葉の表面に現れる超撥水性(ロータスエフェクト)があります。これは、表面に存在する微細な突起によって発現した機能です。
 本研究室では、高速鏡面研削や紫外光支援加工による高能率ナノ鏡面加工に加え、マイクロフォーミングやレーザーテクスチャリングなどによって、物質の表面機能を制御する微細表面構造を創成する研究を行っています。特に、ダイヤモンドなどの非常に硬い材料や人工関節等に利用されるチタン合金などを対象に、さまざまな加工技術を応用した鏡面加工や微細構造創成に取り組んでいます。

生産システム情報学研究室  (軽野 義行)
【研究テーマ】容器包装に関係する製造工程の数理モデリングとアルゴリズム設計
【キーワード】計画工学/アルゴリズム論/組合せ最適化

 生産や物流のマネジメントに関わる基礎理論の強化には、アルゴリズム設計の体系的な知識が以前にも増して重要になってきています。例えば、計算手間や領域量の評価法、計算複雑度のクラス、動的計画法や深さ優先探索といった基本技法、などです。現在の生産や物流では、取り扱うデータの量が一層増加傾向にあるからです。
 問題の解決に近似アルゴリズムを用いる場合でも、理論に裏打ちされた高速性と精度の保証が望まれています。生産システム情報学研究室では、スケジューリング理論を中心に、組合せ最適化問題として定式化される経路計画や施設配置等の課題について、アルゴリズミックな観点から教育と研究を行っています。

ロボティクス研究室  (澤田 祐一、東 善之)  ※「ロボティクス研究室」の紹介動画はこちら
【研究テーマ】不規則事象を伴うメカトロシステム・ロボットの制御に関する研究
【キーワード】柔軟アーム/ドローン/ロボット/最適制御/確率システム

 メカトロニクス機器やロボットなどは、安定した動作を行わせる目的でフィードバック制御が用いられており、今やなくてはならない重要な技術です。実際にこれらの機器が使用される動作環境は、予測不可能な振動や風などの外乱といった不確定・不規則な要素が作用するため、制御システムを構成する場合も、それらを無視してシステムのモデル化や制御系の設計はできません。
 本研究室では、不確定現象や不規則な外乱を伴う環境下で動作するマニピュレータやドローンなどの制御に関わる諸問題について、ロボット工学、現代制御理論、古典制御理論、確率システム理論などを核として、社会に貢献できる様々な研究に取り組んでいます。
 なお、東助教の研究テーマは2021年7月に本学の注目研究として紹介されました。

計測システム工学研究室  (村田 滋、田中 洋介)
【研究テーマ】光・流体・音響計測手法の開発と応用
【キーワード】ディジタルホログラフィ/3次元空間計測/動画像解析

 豊かで幸せな人間社会を実現するには、日常生活を支える工業製品の性能から製造プロセスに関わる諸現象、さらに人間そのものの健康状態に至るまで、様々な物理現象や機能を定量的に評価することが欠かせません。
 本研究室では、3次元計測・光応用計測・画像処理計測をキーワードに、機械材料や流動などの複雑な現象を把握するための光を利用した新しい計測法に関する教育・研究を行っています。
 特に、レーザ光照明による観測画像をコンピュータで光学理論解析し、測定対象物の空間情報を自動計測するディジタル光画像計測法の開発に取り組むとともに、電子スペックル法の応用計測や動画像解析による多次元流動計測を行っています。

防振システム工学研究室  (三浦 奈々子)
【研究テーマ】振動抑制と振動利用を目的とした制御技術
【キーワード】地震/エレベータ/免震/振動制御

 機械力学分野のうち主に機械振動学に関する研究を行っています。機械振動学とは、機械・構造物に動的な力が作用した場合に、それらがどのように挙動するのかを研究する分野です。現在、
(1) 構造物・昇降機などの地震応答解析・制御
(2) 長周期地震動に対応可能な免震・制振デバイス
(3) 構造ヘルスモニタリング
(4) 振動低減と振動発電を両立するデバイス
などの研究を行っています。

防振システム工学研究室

物理情報科学研究室  (渡村 友昭)
【研究テーマ】流動の本質を見抜く物理情報処理
【キーワード】流体力学/計算力学/混相流工学/計測工学

 私たちの周囲は空気や水など“流体”が存在し、これらは時に混ざりあった“混相流”として振る舞います。本研究室では、単一流体に限らず混相流などの流動現象を対象として、基礎研究を行っています。受動的・能動的機能の利活用や、制御、悪影響の防止などの応用を見据え、理論や実験、数値計算を駆使して課題解決に取り組んでいます。
 また、物理的な情報を駆使することにより、大規模、多重スケールの系を対象とするデータ取得、解析を実現するため、新たな計測、予測技術の開発も進めています。