電気電子工学系 三浦良雄 教授らの研究グループは、ハーフメタル材料の磁化歳差運動を電界で変調することに成功しました

 電気電子工学系 三浦良雄 教授らの研究グループは、高性能スピントロニクス※1磁石材料(ハーフメタル材料)であるコバルト(Co)基ホイスラー合金磁石(Co2FeSi)と表面弾性波材料として有名な圧電体ニオブ酸リチウム(LiNbO3)からなる界面マルチフェロイク構造※2を作製することに成功し、ジュール発熱※3のない情報担体として応用が期待されている「スピン波※4(マグノン)」を利用した全電界制御型マグノニクスデバイス※5の実現の鍵となる技術を開発しました。ハーフメタル材料はスピン波の長距離伝搬が示唆される低磁気摩擦特性(低ダンピング定数)を示すため、従来よりも高性能なマグノニクスデバイスを実現できる磁化ダイナミクス(磁化の歳差運動※6)の電界変調を達成しました(図1)。

図1 本研究で実証したハーフメタル材料/圧電体界面マルチフェロイク構造(左)と磁化ダイナミクスの電界変調の概念図(右)。電界の制御(ON/OFF)で圧電体の結晶の歪みが磁性体中に伝搬することで、磁性体中の磁化ダイナミクス(磁化の歳差運動)が変調される。

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 本研究成果は、2025年9月18日に国際学術誌「Advanced Science」(外部リンク)にて公開されました。

<用語解説>
※1 スピントロニクス
電子の電荷とスピン(角運動量)の両方の自由度を積極的に利用することにより、新機能デバイスの開発を目指している研究分野のこと。

※2 界面マルチフェロイク構造
強磁性体と圧電体または強誘電体(圧電体の中でも、自発的に分極が生じ、その自発分極が電界により反転可能な物質)の2層で構成された積層構造で、磁性状態を電界で制御することができる。

※3 ジュール発熱
電気抵抗がある導体に電流を流したときに発生する熱のこと。抵抗加熱とも呼ばれる。

※4 スピン波
スピン(磁石)の歳差運動が空間的にずれて波のように伝わっていく現象。この現象を量子力学的に取り扱ったものをマグノンと呼ぶ。

※5 マグノニクスデバイス
マグノン(スピン波)と呼ばれる準粒子を使って情報を処理・伝達する次世代のデバイスのこと。将来の超低消費電力・高速情報処理を実現する可能性を持つ新しいテクノロジーとして期待され、現在急速に発展が進んでいる。

※6 歳差運動
回っているコマが重力の影響で軸を傾けながら、回転軸の先端が円を描くようにゆっくり動く(コマが首を振る)現象のこと。ここでは、磁場中にある磁化ベクトルが外部磁場のまわりを回転する現象のことを指す。

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