学長の挨拶

  • 京都工芸繊維大学長 森迫 清貴京都工芸繊維大学長 森迫 清貴

 京都工芸繊維大学は、京都にある工科系大学です。この京都にあるということが重要です。千年の都である京都は、日本の文化の本質にあたる部分を生み出してきましたが、同時にものづくりの発信地として多くの「もの」も生み出してきました。伝統工芸と言われるそのものづくりの思想は、現代でも、いや現代こそ新しい技術革新に生かされるものであります。それは、ものを作る技術を常に人々の生活の中で検証することで社会的なイノベーションを生み出そうとする思想です。そうした思想を生む京都という場のもつ力を、実際の工学の研究・教育として実践する、それが本学のミッションです。
 そのために、どのような人材を育成するのか。掲げているのは、単なる技術者ではなく、テック・リーダーを育てることです。テック・リーダーとは、工学の基礎的知識・技能に基づいてリーダーシップを発揮し、さまざまな社会的プロジェクトを成功に導くことができる人材です。そのために、専門力、リーダーシップ力、外国語運用能力、文化的アイデンティティ精神の4つを工繊コンピテンシーとして位置付け、それらを確実に高めることのできる教育プログラムを、工芸科学部6課程、大学院工芸科学研究科博士前期課程14専攻、博士後期課程8専攻のすべてにおいて構築します。
 もうひとつ目指しているのは、デザイン・シンキングです。社会的なイノベーションは、専門に特化した研究だけでは実現できません。広範な分野の融合が必要です。しかし、単に集まるだけでは何も生まれません。どのようにすればその融合がイノベーションを生み出すことができるのか。それを広い意味でのデザインと考え、その実践をデザイン・シンキングとして捉えます。そのために、世界一線級デザイナー、建築家との連携活動拠点とするKYOTO Design Labをすでに設置し、デザイン・シンキングの思想や方法を創出する拠点を構築してきました。そこからさらに、専門分野の枠を超えて繊維・高分子研究拠点、グリーンイノベーション研究推進拠点、昆虫先端研究推進拠点などにも導入することで、大学全体でデザイン・シンキングを方法的基盤とする体制を作ろうとしています。
 こうした大学としてのチャレンジに欠かせないのが、「連携」です。それは工学の教育・研究を捉える視野を広げることです。世界的な視野から評価する視点を導入することは、すでにKYOTO Design Labなどの国際連携の実践として多くの成果をあげつつあります。そして、地域社会や企業からの視野については、京都府北部の福知山市に設けたキャンパスとそこをベースとする学部横断型の地域創生Tech Programの展開や、京丹後市、綾部市での拠点設置など、強固な地域連携の事業として進めているところです。
京都から世界に向け、新しい工学のイノベーションの波を創り出す。本学の挑戦は続きます。

1952年 広島県尾道市生まれ
京都工芸繊維大学工芸学部建築工芸学科卒業
京都工芸繊維大学大学院工芸学研究科建築学専攻(修士課程)修了
京都大学工学部研究生終了
京都大学博士(工学)
2000年 京都工芸繊維大学 教授
2012年 京都工芸繊維大学 理事・副学長
2018年 京都工芸繊維大学長