電気電子工学系 小林和淑 教授が国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の「ムーンショット型研究開発事業」のプロジェクトマネージャーに再選出されました

 電気電子工学系 小林和淑 教授(京都グリーンラボ長兼務)が、ムーンショット型研究開発事業*1ムーンショット目標6「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータ*2を実現」のプロジェクトマネージャー(PM)*3に再選出されました。(2025年10月6日公表)

    参考リンク

  • お知らせ(外部サイト)
    「ムーンショット目標6におけるプロジェクトマネージャーが決定しました。」
  • 決定に関するJST発表(外部サイト)
    「ムーンショット型研究開発事業(ムーンショット目標6、9、10)におけるプロジェクトマネージャーの決定について」

発表の内容

 小林教授は2022年度より、ムーンショット目標6 (MS6)のPMに選出され「スケーラブルな高集積量子誤り訂正システムの開発」の研究題目にてプロジェクトを先導してきました。プロジェクトでは誤り耐性汎用量子コンピュータを実現するために、エラー訂正のための古典ハードウェア向けアルゴリズムとスケーラブルバックエンド、スケーラブルな量子-古典間入出力フロントエンド、それらの大規模集積回路(LSI)化、量子-古典入出力の高帯域・低電力化のための極低温動作光集積回路の技術課題に15名の主任研究者(PI)*4とともに取り組んできました.それにより2050年までエラー訂正により汎用的に使える量子コンピュータを実現することを目的としています。
 量子コンピュータの研究開発は世界中で加速しています。ムーンショットが当初目標としていた2050年よりも先に実現する可能性が高くなり、国も産業技術総合研究所に量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(略称G-QuAT)を設立し、ムーンショットと合わせて量子コンピュータの研究開発の加速を行っています。MS6は2020年度から開始され、当初7名のPMで研究が開始されました。より研究を加速することを狙い、2022年度に追加のPMの公募が行われ、量子コンピュータの実現に欠かせない古典コンピュータ*5内の集積回路の専門家である小林教授が他の4名のPMとともに選出されました。この3年間の研究成果が認められ、このたび小林教授がPMに再選出されたものです。研究期間は2022年度から2030年度までの予定です。

今後の展開

 後半の5年では研究のみならず開発にも注力し、量子ビットのエラー訂正技術や極低温環境からの量子ビットの制御などのデモも実施する予定で、加速する量子コンピュータの研究開発に貢献します。

プロジェクトのロゴマーク

 

用語解説

*1 ムーンショット型研究開発事業
内閣府が主導する国の大型研究プログラムで、日本発の破壊的イノベーション創出を目指し、従来技術の延長線上にない大胆な発想で挑戦的な研究開発を推進するもの。2050年までの実現を目標に掲げ、人々の幸福に貢献する社会課題の解決を目指しており、目標6の量子コンピュータをはじめ、AIと共生するロボット、健康長寿社会を支える医療・介護システム、自然災害の制御、持続可能な食料供給など、実現すれば大きなインパクトが期待できる社会課題に、具体的な「ムーンショット目標」を設定して取り組んでいる。

*2 量子コンピュータ、誤り耐性型量子コンピュータ
量子コンピュータは超伝導素子、シリコン、光などを用いて量子ビットを実現し、0と1の重ね合わせ状態を作り、暗号解読などの処理を古典コンピュータよりも高速に行うコンピュータのこと。現在動いている量子コンピュータは量子ビット計算のエラーを訂正せずに計算を行うNISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer)であり、暗号を解くような大規模な計算はできない。誤り耐性型量子コンピュータ(Fault-Tolarent Quantum Computer, FTQC)とは量子ビットの誤りを訂正しながら大規模な計算を行うことのできる量子コンピュータのこと。

*3 プロジェクトマネージャー(PM)
プロジェクト責任者。複数の主任研究者を束ね、プロジェクトを先導する役割を担う。

*4 主任研究者(PI)
Principal Investigator。PMの下で主として研究を行う研究者で、PIの下には研究協力者が多数いる。

*5 古典コンピュータ
半導体集積回路を用いて、2進数の0か1の確定的な値を用いて演算処理を行うコンピュータ。

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