材料化学系 細川三郎 教授らの研究グループは、メリライト型構造(注1)をもつ酸素貯蔵材料Ba2MnGe2O7+δが従来にない特異な酸素吸収放出特性を示すことを発見しました。放射光X線吸収分光法(注2)、放射光その場X線回折(注3)、単結晶X線回折(注4)、粉末中性子回折(注5)を用いた先端分析により、酸素吸収放出に伴う複雑な結晶構造変化を解明しました。
従来のマンガン系酸素貯蔵材料では酸素を放出するために水素などの還元雰囲気(注6)が必要でしたが、本材料は大気中や酸素雰囲気中でも温度変化だけで可逆的に酸素吸収放出できます。また、酸素吸収放出に伴い青色⇔白色と可逆的に変色するユニークな特徴も見出し、酸素センサーや酸素感応性無機顔料としての応用が期待されます。
図1. Ba2MnGe2O7+δの可逆的な酸素吸収放出における色の変化と結晶構造変化
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本研究成果は、2026年1月24日付で米国の化学会の専門誌『Chemistry of Materials』(外部リンク)にオンライン掲載されました。
【用語解説】
(注1)メリライト型構造
一般式A2BC2X7で表される結晶構造。天然鉱物のメリライト(黄長石、化学式Ca2MgSi2O7)に由来する名称で、構造中の四面体配位したカチオンが層状に連なった平面ネットワークを特徴とする。さまざまな元素の組み合わせが可能で、磁性体、蛍光体、イオン伝導体、触媒など幅広い機能性材料の母体構造として注目されている。
(注2)放射光X線吸収分光法
放射光X線を用いた分析法。物質にX線を照射し、特定元素による吸収スペクトルを測定することにより、その元素の価数や局所的な配位環境を調べることができる。本研究ではSPring-8, BL28XUにて測定を実施した。
(注3)放射光その場X線回折
結晶構造の分析法。温度変化や特殊雰囲気などの条件下で試料の結晶構造変化をリアルタイムに観測する手法。高輝度の放射光を利用して短時間でデータ取得することにより、反応中の構造変化を追跡できる。本研究ではSPring-8, BL13XUにて測定を実施した。
(注4)単結晶X線回折
結晶構造の分析法。単結晶にX線を照射し、回折パターンから原子の三次元配置を精密に決定する。粉末試料では得られない詳細な構造情報が得られるため、新物質の構造決定に有効である。
(注5)粉末中性子回折
結晶構造の分析法。試料からの中性子散乱における干渉効果(回折)を利用して物質中の原子配列を決定する。水素など軽元素の感度が高いため、軽元素を多く含む物質の結晶構造解析に有効である。本研究ではJ-PARC, BL09, SPICAにて測定を実施した。
(注6)還元雰囲気
物質から酸素を奪い取る性質をもつガス雰囲気。水素、アンモニア、一酸化炭素などが代表例。製鉄において鉄鉱石から酸素を取り除いて鉄を得る工程など、工業的に広く利用されている。
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