分子化学系 北所健悟 准教授らの研究グループは、経口毒性の高いボツリヌス毒素(※1)が、腸管上皮を覆うムチン層(※2)を透過するメカニズムとその要因であるヘマグルチニンの役割を明らかにしました。
ボツリヌス毒素は、ボツリヌス菌が産生するタンパク質性の毒素で、神経の働きを阻害することで主に食中毒を引き起こします。毒素の種類によって経口毒性に大きな違いを示すものがありますが、その根底にあるメカニズムは不明です。本研究グループは、この違いが毒素複合体の構成成分の一つであるヘマグルチニンによるもので、腸管上皮を覆う粘液層(ムチン層)を通過するための糖鎖親和性の差が原因であることを明らかにしました。
これらの知見は将来、ウイルスを含むさまざまな病原体の体内侵入メカニズムの解明、そして治療や予防法の開発に貢献することが期待されます。

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本研究成果は、2025年11月25日(現地時間)に英国科学誌『Nature Communications』(外部リンク)にて公開されました。
<用語説明>
※1 ボツリヌス毒素
ボツリヌス菌が産生するタンパク質毒素。ヒトや動物に致死性の高い中毒を起こすことで知られる。
※2 ムチン層
いわゆる粘液層のこと。腸管粘膜は厚いムチン層に覆われており、病原体や有害物質の侵入から守る重要な役割をもつ。
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