分子化学系 布施 泰朗 准教授らの研究グループは、高反応性消石灰によるダイオキシン類デノボ合成の予防的抑制法を開発しました

 分子化学系 布施泰朗 准教授らの研究グループは、廃棄物焼却処理施設から排出されるダイオキシン類の生成を予防的に抑制するため、排ガス冷却過程の200〜400℃温度領域(デノボ合成温度窓)において高反応性消石灰(HR-Ca(OH)₂)(注1)を用いた、化学反応設計基準を確立しました。上層部GC-MS/MS法(注2)と層流管型反応器を用いた交差検証により、高反応性消石灰を銅触媒の上流に配置する「ライムファースト」構成が最も効果的であることを実証し、Ca:Cu質量比≧10かつダムケラー数(注3)Da≧3の条件下で95%以上のダイオキシン類生成抑制を達成しました。加えて、塩化カルシウムがダイオキシン類生成を193%助長するという重要な知見を得て、カルシウムの化学形態制御の必要性を明らかにしました。

布施先生

 本件の詳しい内容はこちら(PDF)

本研究成果は、2026年1月17日付で学術雑誌『Chemosphere』(外部リンク)にオンライン掲載されました。

【用語解説】
注1)高反応性消石灰(HR-Ca(OH)₂)
製造過程で乳化剤を添加し、比表面積を従来品の4〜8倍(35〜40 m²/g)に高めた水酸化カルシウム。もともと排ガス中の酸性ガス(HCl、SO₂等)の中和除去用に開発されたが、本研究ではダイオキシン類のデノボ合成抑制にも有効であることを実証した。450℃以下で化学的に安定である。

注2)上層部GC-MS/MS法
密栓バイアル中の気相成分をガスクロマトグラフ-タンデム質量分析装置で分析する手法。本研究では、バイアル内にデノボ合成の反応条件を再現し、迅速かつ定量的にダイオキシン類前駆体および生成物を測定するワンポット分析法として活用した。

注3)ダムケラー数(Da: Damköhler number)
化学反応速度と物質移動速度の比を表す無次元数。Da=keff·τ(keff:有効反応速度定数、τ:滞留時間)で定義される。Da≧3では反応が十分に進行し、95%以上の塩素スカベンジングが達成される。装置のスケールや形状に依存しない設計基準として使用できる点が工学的に重要である。

【このページに関する問い合わせ先】
総務企画課広報係 
TEL:075-724-7016
E-mail:koho[at]jim.kit.ac.jp(※[at]を@に変換してください)