繊維学系 石井佑弥 准教授らの共同研究チームは、循環型のプラスチックであるポリ(L-乳酸)(PLLA)を材料に用いて、溶剤を全く使用しない溶融電界紡糸(注1)によって作製した繊維膜が、優れた疑似圧電特性(注2)を示すことを世界に先駆けて明らかにしました。これまでに、電界紡糸で作製されたPLLA繊維膜は優れた疑似圧電特性を示すことが知られていましたが、有機溶剤を用いる湿式電界紡糸で作製されていたため、量産化における安全対策コストの増加や環境負荷が課題となっていました。 本研究では、溶剤を使用しない溶融電界紡糸を採用し、荷電の後処理を行わない溶融電界紡糸のワンステップのみで帯電した繊維膜が作製できることを明らかにしました。加えて、作製した溶融電界紡糸PLLA繊維膜が、疑似正圧電特性(注3)と疑似逆圧電特性(注4)の両方の特性を示すことを初めて明らかにし、これらの特性から評価した見かけの圧電d定数(注5)が非常に高い値を示すことも明らかにしました。さらに、この疑似圧電特性の発現の起源が、PLLAのらせん結晶構造や分極帯電由来ではなく、真電荷(注6)帯電に由来することも世界に先駆けて明らかにしました。本成果は、優れた疑似圧電特性を示し、循環型材料であるPLLAからなる繊維膜を、安全に大規模で製造できる可能性を示す研究成果です。製造される繊維膜は、ヘルスケア用の圧力センサやフィジカルAI向けの圧力センサなどへの応用展開が大いに期待されます。
図1. (a)溶融電界紡糸の概説図と(b)作製した溶融電界紡糸PLLA繊維膜の走査型電子顕微鏡像、
この繊維膜が示した(c)疑似正圧電特性と(d)疑似逆圧電特性
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本研究成果は、2026年9月26日付で学術雑誌『Materials Today Communications』にオンライン掲載されました。
用語解説:
(注1)溶融電界紡糸
溶剤を使用せずに熱で溶融させたプラスチックの溶融体を高電圧で帯電させ、静電気力により紡糸する方法
(注2)疑似圧電特性
圧電材料の圧電特性に酷似した特性
圧電:本資料では、チタン酸ジルコン酸鉛や圧電樹脂などの圧電材料の結晶体に生じる正圧電効果と逆圧電効果を総じて圧電と表現している
(注3)正圧電特性
圧電材料の結晶体に圧力を加えると、ひずみが生じて電圧が発生する特性
(注4)逆圧電特性
圧電材料の結晶体に電場を加えると、ひずみが生じて変形する特性
(注5)圧電d定数
圧電性能の指標の一つ
(注6)真電荷
外部に取り出したり外部から加えたりすることができる電荷(対立概念は分極電荷)
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