令和3年度 大学院工芸科学研究科 学位記授与式(秋季)
学長祝辞

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 本日、修士あるいは博士を取得されました皆さん、誠におめでとうございます。京都工芸繊維大学を代表し、心からお祝い申し上げます。本日皆さんと共に、この学位記授与式を挙行できますことは誠に喜ばしく、嬉しく存じます。

 しかしながら、今回の式も、新型コロナウイルス感染症のため、マスクを着用しソーシャルディスタンスを保ちつつ、簡略化して行うことになりました。残念ながら、ご家族の皆様、関係者の方々、また、研究を指導された教員の方々にご列席いただくことはできませんでしたが、皆様から是非、それらの方々に、学長がお祝いを申し上げると共に、心からお礼を申し上げていた、とお伝えください。

 新型コロナウイルスによる感染が日本で初めて確認されてから、まもなく20ヶ月になろうとしています。修士学位を取得された皆さんはその殆どの期間を、博士課程の皆さんも過半の期間を、これまで経験したことのない生活を強いられることとなりました。そのような状況下で、研究をまとめられることは本当に大変だったことと思います。ワクチン接種が進んでいますが、まだまだ新型コロナ感染症の終息は見えません。油断せず、今一度気を引き締め、粘り強く感染対策を行いつつ、これからの新しい生活に万全の体調で臨んでください。

 さて、本学は、1988年の工芸科学研究科設置以来、これまでに11,500名の修士学位と1,215名の博士学位を授与して参りました。本日は、修士学位11501号から11524号まで、課程博士1008号から1023号までの学位を授与いたしました。皆さんの研究等の成果は、それぞれの分野の更なる発展のため、また技術革新や新たな産業創出のために活用されることが期待されます。皆さんに続く後輩たちの研究にも役立つことと思います。

 本学は、明治維新を端緒とする日本の近代化の中で、わが国の状況と時代に応じて変化する産業を支える技術者人材を輩出してきました。われわれは本学が名付けたテック・リーダーと呼ぶ高度専門技術者の育成を目標に掲げています。

 何故、今、本学は人材育成目標として、「技術者、エンジニアあるいは研究者」ではなく、「テック・リーダー」を掲げているのでしょうか。それは、18世紀後半から始まった産業革命という世界規模の近代化によって引き起こった幾多の課題が、地球全体の様々なフェーズで顕在化しているからです。本学の期待するテック・リーダーとは、「専門分野の知識・技能を基盤として、グローバルな現場でリーダーシップを発揮して様々な社会課題に取り組むプロジェクトを成功に導くことのできる人材」のことです。高等教育を受けた技術者、研究者は、自分自身の専門分野については確実に身につけ修練しつつ、広い視野で異なる分野の人々と協議、協働を心がけて、真に、人類の幸福のため、直面する様々な課題を解決していかなければならないと確信しているからです。

 博士前期課程を修了し、本日、修士の学位を授与された皆さんは、当にテック・リーダーの中核となる人材です。京都工芸繊維大学修士学位取得者として、テック・リーダーたる自覚を持って、未来を明るくする役割を担い、世界の科学、産業、文化に大いに貢献されますことを祈念して、お祝いの言葉といたします。

 また、博士後期課程を修了し、博士となられた方々は、ここから真価を問われることになります。博士学位はゴールというより、むしろ出発点であります。これからの仕事が、博士学位に真の価値を与えます。どうかテック・リーダーであるということを念頭に置きつつ、社会に貢献する仕事を為してください。

 みなさんの今後の益々のご活躍を祈って、お祝いの告辞といたします。

 本日は、誠におめでとうございます。

令和3年9月24日
京都工芸繊維大学長
森迫 清貴