第17回OPEN TECHシンポジウムを開催しました ‐SGU事業‐
(テーマ:ショウジョウバエにおける遺伝子発現制御に関する講演会)

 平成29年3月27日(月)、本学のスーパーグローバル大学推進拠点は、「OPEN-TECH INNOVATION」(スーパーグローバル創成支援(SGU)事業)として、本学昆虫先端研究推進センター ショウジョウバエ遺伝資源研究部門と共催で、平成28年度第17回OPEN TECHシンポジウムを開催し、地域企業および本学学生や教職員など12名の来場がありました。

 今回は、アメリカ国立衛生研究所 国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所 セクションチーフのBrian Oliver博士をお招きし、ショウジョウバエにおける遺伝子発現制御に関するご講演を行っていただきました。遺伝子発現は雌雄によって異なるが、性差が作り出される過程おいて重要な役割を果たしているdouble sex(dsx)遺伝子の機能解析とその結果について、スライド用いたわかりやすい説明がなされました。

 性差が作り出されるには、スプライシングの違いによって性特異的なdsx 遺伝子産物(メス型DSXタンパク質とオス型DSXタンパク質)が作られることは古くから知られています。しかし、組織によっては性特異的な型があるだけではなく、DSXタンパク質の発現量が性特異的であることが、古典的遺伝学と最新のゲノム学との併用によって得られることを見事なデータによって示したことをご講演いただきました。最新の研究方法だけではなく、古典的な方法とを組合せた複合的な研究によって、古くからの課題を解決できることがよくわかり、研究手法や研究を推進するためのアイディアをどのように発想するかその方法論も得ることができました。
 また、古くから知られていたDSXタンパク質の型の性差は、それだけでは生き物の性差を説明するには不十分であり、発現量も重要であること、及び量と質のバランスにより生物の機能や形態が決められていくことは、論理的に考えれば不思議ではないが、確かなデータで示されてはじめてその仮説が実証されることをご講演いただきました。一見当然のように思われることも実証データの積み上げが必要であり、それに基いて新たな研究が発展するということを主張されました。
 講演後には、活発な質疑応答が行われ、若者だけではなく、シニア研究者にとってもよい刺激となりました。

 ショウジョウバエ遺伝資源研究部門にとって、海外の第一線の研究者との連携をより深め具体的な共同研究などに結び付けることは、今後の課題となります。遺伝子発現制御は、ショウジョウバエ遺伝資源研究部門においても進めている研究課題です。本講演をきっかけとして共同研究の模索がされていくことが期待されます。

  • Oliver博士Oliver博士
  • 会場の様子会場の様子