平成30年度職員海外派遣研修(短期)
中村 亜希

所属 施設環境安全課
氏名 中村 亜希
期間 平成31年1月20日~平成31年2月2日
派遣先 QQ English ITパーク校(フィリピン共和国)

1.研修内容等について

本研修の目的は、本学のSGU事業数値目標達成にむけての職員の英語力の向上と異文化理解の促進です。内容は、海外にてTOEIC対策カリュキュラムを受講するとともに各国からの参加者との対話によるコミュニケーション能力の向上を図るというものです。

(1)派遣先地域の特徴

語学学校の立地するセブシティは、首都マニラに次いで人口の多い都市です。なかでも経済特区に指定されているITパークは、24時間営業の店が多く各所に警備員が配置されており、フィリピンのなかでは安全が確保され整備された街でしたが、スリなどの被害は依然として多いそうです。一方でパークを出ると、広い道路以外は舗装されておらず、路地に入れば所狭しと家が建ち並び、野犬や鶏がいるような生活感にあふれた大変趣深い印象を受けました。ITパークはセブ島の内陸に位置し、一般的なセブ島のイメージはありません。

(2)第二言語としての英語教育について

フィリピン共和国は7000以上の島から成り、多くの地域言語が存在していますが、ほとんどの人が共通言語として英語を話すことができるそうです。語学学校のオーナー(藤岡頼光氏)からの挨拶では、フィリピン人は世界で最も成功した英語の学習者であり習得のツボを心得ているので、教育者としても適しているとの話がありました。英語が第二言語であるのは日本もフィリピンも同じですが、フィリピンでは本格的な英語教育の開始時期が6歳からと早く、また英語が公用語となっているため日常的に英語に触れる頻度が日本とは比べものにならないほど多く、その習得率が高いとのことでした。教師の大半は第二言語として英語を習得したフィリピン人であり、かつ大学の出身者で、全員にTESOL資格(他言語話者に英語を教える国際標準資格)の取得を義務付けているそうです。


ITパークの街並み

ITパークの街並み


宿舎からの眺め

宿舎からの眺め

(3)授業等について

朝は7時頃に宿舎を出、徒歩10分圏内にある学校で朝食をとり、8時から授業が始まります。授業は1コマ50分で、以降9時~10時~11時~と午前に4コマ、昼休憩を挟み午後1時から4コマ受講するというのが1日の流れです。内容や時間割は、受講コースや最初に受けるレベルテストの結果により1人1人アレンジされています。私の受講したTOEIC強化プログラムは、マンツーマンレッスンが6コマ、グループレッスンが2コマの合計8コマからなります。平日は朝から順番にspeaking、reading、grammar、listening、昼休憩、グループレッスン(conversationとtalking)、vocabulary、CALLAN (定型質問と回答を反復することで英語の反射神経を鍛えるという教科)を繰り返し受講し、土曜日にはその成果をはかるTOEICの模擬試験を受験しました。教科ごとに担当教員がつき、毎日顔をあわせる先生は陽気で気さくな方が多いので、質問等もしやすく楽しく受講することができました。
 グループレッスンでは、会話の組み立て方やポイントを教えてもらい、それを色々なテーマで練習しました。限られた時間内に英語で話すことは難しく、自分の英語コミュニケーション力の低さや語彙の少なさを痛感しました。私のクラスは同世代の日本の社会人の方とサウジアラビア人の学生で、毎回自分の意見を強く主張するスタイルに刺激をもらいました。教育や文化、互いの考え方を共有したり、何とか伝え理解しようとして通じたときの喜びがあり、語学学習の楽しさを感じる貴重な時間でした。


この建物の7-10階が校舎です

この建物の7-10階が校舎です


グループレッスン後の記念撮影

グループレッスン後の記念撮影

(4)TOEIC強化プログラム以外のコースについて

受講プログラムは他にもビジネス英会話や日常英会話、プレゼンテーションコース、IELTS特訓コース(SpeakingとWritingに特化したプログラム)などがあります。他コースの受講者からは、プレゼンテーションコースでは短期間で一つのプレゼンを仕上げていくので非常に実践的であったという話や、中国では就職時の英語力の指標はTOEICではなくIELTSが主流であるといった話を聞くことができました。海外で学会発表の機会がある教員・院生や、話す力・書く力・伝える力をより鍛えたい場合などであれば、プレゼンテーションコースやIELTSコースの受講を検討してもよいかもしれません。

(5)様々な留学理由

食事時間等には他の受講生と海外で英語を勉強するに至った経緯や理由、それぞれのカリキュラムの話、行ってみてよかったところなどの話をうかがいました。海外で働くため、仕事で必要なため、TOEIC・IELTSの目標点数達成のため、留学や移住を控えた準備、転職前の有給消化、人生を楽しむため…など、滞在期間も理由も様々でしたが、皆英語を習得したいという想いは共通していました。年齢、国籍、職業、学業等関係なく多様な人に異国の地で出会い、ともに英語習得を目指すという経験ができるということは、学生・教職員にとっても将来の選択肢や視野・視点を広げる大変よい機会になると感じました。


食堂では色々な国の料理が提供されます

食堂では色々な国の料理が提供されます


素材や調理方法から選べるレストラン

素材や調理方法から選べるレストラン

(6)異文化について

前述のとおり、フィリピンでは英語が公用語となっているため、ほとんどの人が英語を話すことができるとのことですが、公立学校と私立学校では教育の内容や質が大きく異なっていたり、地方によっては学校数が絶対的に足りていなかったり、都会であっても十分な教育を受けられていない子どもが多くいるそうです。私の担当教師のうち数名は教育学部の出身者で、自国の教育制度に問題意識を抱き、よりよい教育を目指したいと意識を高くもっている先生がいらっしゃったことが印象的でした。また、家族構成や結婚についての考え方、教育の形態、LGBTに対する意識等、他国と日本では違うところが多くあり、異文化理解を深める機会にもなりました。

2.海外派遣の効果について

今回の研修目的は、「語学能力と英語コミュニケーション能力の向上」でした。語学力の向上(具体的にはTOEICのスコアアップ)については、カリキュラムに試験対策が十分に盛り込まれており、帰国後も継続して勉強を続けることで大きな効果が期待できるのではないかと思います。英語でのコミュニケーション能力の向上については、日本語では簡単なことも英語では表現できないというもどかしさを常に感じ、それを解消する間もなく期間を終了してしまいましたが、自分の不足部分(最初と最後に受けるレベルテストの分析結果や聞けば教師から的確なアドバイスがもらえます)などを認識できたこと、英語への特別な意識が解消され、使う楽しさを知ることができたことは、今後につながる成果だと考えています。
 私は渡航前から言葉が通じないことや成果が出せるのかといった不安や緊張を感じていました。しかし、ホスピタリティの高い教師陣や参加者との他愛もない会話を通じてこれらは解消されました。このような不安や緊張は本学の留学生も同様に感じるものであると思います。留学生とも積極的にコミュニケーションをとることが重要であると再認識しました。この派遣で知ったホスピタリティを発揮できるよう、拙い英語でもコミュニケーションツールとして積極的に使い続け、今後の業務に還元していきたいと考えています。
 今回の研修にあたっては株式会社QQEnglishの教職員の皆様をはじめ、人事労務課、国際課の方々に大変お世話になりました。また二週間という長期間送り出してくださった施設環境安全課の皆様に感謝いたします。


日本に詳しいHeidi先生との記念撮影

日本に詳しいHeidi先生との記念撮影


食堂(奥はメインカウンター)

食堂(奥はメインカウンター)