応用生物学系 半塲祐子教授と富山大学の共同研究成果が英国の学術誌 「Scientific Reports」に掲載されました

 国立大学法人富山大学 学術研究部 理学系の研究グループ(土`田 努 准教授(リーダー)、玉置 大介 助教、唐原 一郎 教授、若杉 達也 教授ら)は、マダラケシツブゾウムシを用いて実験室内で年間を通して「虫こぶ」*1を形成させる系を確立し、本学応用生物学系 半塲祐子教授と共同で、本種による虫こぶ形成が完全寄生植物*2であるアメリカネナシカズラの光合成を活性化することを明らかにしました。

 アメリカネナシカズラは、寄生した植物から栄養分を奪って成長するため、ほとんど光合成を行わない植物であるが、虫こぶ内では光合成活性が著しく増加して、ゾウムシ幼虫にとって”栄養豊富なシェルター”として機能していることが示されました。これにより、虫こぶ形成の生態的役割についての理解が進むとともに、光合成の活性化による植物バイオマスの増産等の技術開発に資することが期待されます。

 半塲教授の専門は光合成などの植物生理生態学であり、今回は、虫こぶが形成されているアメリカネナシカズラの光合成速度測定の解析を担当しました。

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※本研究結果は『Scientific Reports』(外部サイト)に掲載されました。

(A) 蔓性寄生植物アメリカネナシカズラに形成された虫こぶ(矢尻で示した箇所)
(B) マダラケシツブゾウムシ                        

(提供:富山大学 土`田研究室)

(用語解説)
*1:虫こぶ
 昆虫(あるいは微生物)によって植物に作り出される異常発達した組織。栄養豊富な餌場、兼、天敵からのシェルター等として機能することが知られている。虫から植物へと送り込まれる物質によって、虫こぶ形成が引き起こされると考えられているが、詳細は不明である。虫癭(ちゅうえい)や、ゴール(GALL)とも呼ばれる。

*2:寄生植物
 一般的な植物は、光のエネルギーを利用して自身の成長に必要な栄養の多くをつくることができる(これを、光合成という)。一方、寄生植物は、自身では栄養をつくり出すことができず、他の植物に寄生し、栄養分を吸収して生長する。アメリカネナシカズラは、寄主となる植物なしでは生きていけず光合成をほとんど行わない、完全寄生植物である。