電気電子工学系 山下兼一教授らの研究グループは、強固で安定したポラリトン状態の室温凝縮を実現しました

 電気電子工学系 山下兼一教授、高橋駿助教らは、光と物質間のハイブリッドな量子状態として知られるポラリトン状態※1が、全無機ペロブスカイト※2と呼ばれる材料の使用により、新しい形態で形成されることを示しました。従来の無機半導体もしくは有機半導体を用いた技術では、高励起下ではポラリトン状態が崩れやすい、もしくはエネルギー凝縮が起こりにくいといった問題点がありました。本研究の技術では、より強固で安定にポラリトン状態を形成でき、しかも室温で凝縮可能という点で新たな発見となります。本発見はポラリトン状態の物性解明と制御技術の開拓に大きく貢献するものであり、レーザや太陽電池の高効率化や低消費電力での量子デバイス開発の発展に寄与します。

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本研究成果は、2022年1月2日(日本時間)に「Light: Science & Applications」(外部サイト)オンライン版に掲載されました。

図:ペロブスカイト半導体(正八面体)中で生成された電子-正孔対(赤青の球)が、光微小共振器(上下の反射鏡)内で閉じ込められた光子と相互作用してポラリトン状態を形成する概念図。

用語解説
※1)ポラリトン状態
光の波長サイズの狭い領域に光波を閉じ込める微細構造である光微小共振器を、半導体材料を用いて作製することにより、半導体中の電子状態(電子/正孔対)と閉じ込められた光波(光子)の相互作用が強められ、光と物質のハイブリッドな性質を持つ準粒子が生成される。生成された準粒子状態は「ポラリトン状態」と呼ばれ、レーザ光源の低閾値化や太陽電池の高効率化の基礎物理となることが期待されている。

※2)全無機ペロブスカイト
ペロブスカイト型と呼ばれる立方晶系の結晶構造を持つ化合物のうち、鉛ハライドからなる化合物半導体が次世代の光電子材料として知られている。この中でも、すべて無機元素からなる全無機ペロブスカイトは優れた発光特性を示すものとして注目されている。