情報工学・人間科学系 村上久助教らの研究グループは、動きを読み合う歩行者たちの即興的な運動協調を明らかにしました

 情報工学・人間科学系 村上久助教、都丸武宜研究員、東京大学先端科学技術研究センターのフェリシャーニ・クラウディオ特任准教授、長岡技術科学大学の西山雄大准教授の研究チームは、二人が向かい合って歩きすれ違う実験を行い、歩行者が互いに動きを読み合うことでおのずと運動の協調が生じることを明らかにしました。

 人々は特別な訓練がなくとも協調的に振る舞うことがあります。とりわけ歩行者が行き交う空間は、見ず知らずの人同士で協調が繰り広げられている場といえます。人にぶつからずに歩くことは日常的に出来て当然に思えますが、具体的な協調の程度や視覚の使われ方など多くのことがわかっていません。

 本研究では、二人の歩行者が離れた場所から向かい合って歩きはじめ、途中ですれ違う実験を行いました。彼らの歩く速さや方向を細かく見てみると、すれ違うまでよく一致していました。特に相手に合わせて歩くような指示は出していないため、彼らは歩行運動をおのずと協調させたのだと考えられます。またこの実験では3つの条件が与えられました。それらを比較すると、協調の度合いは動きの読み合い(相互予期)を阻害した場合にのみ低下しました。従って歩行者は互いに相手の動きを読み合うことで強い協調を実現しているといえます。さらに歩行中どこに目を向けているかを調べたところ、歩行者はあらかじめ将来すれ違う方向に目を向ける傾向にあり、近づいたときは相手の状況に応じて目を向ける方向を柔軟に変化させていました。以上を踏まえ、歩行者は相手の身体動作全体から未来の運動を知らず知らずのうちに駆け引きすることで、互いの運動を協調させている可能性が示唆されました。人混みの中を縫って歩くとき、私たちは通り抜けられる道を自ら見つけ出しているようで、気付かぬうちに道ゆく人達とまるで即興的にダンスするように道を作り出しているのかもしれません。

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本研究成果は、雑誌「iScience」(外部サイト)に掲載されました。

図:研究概要