材料化学系 中西英行 教授らの研究グループは、光の時空間制御により樹脂中のナノ粒子の移動・集積を誘起する方法を明らかにしました

 材料化学系 中西英行 教授らの研究グループは、光を当てることで固まる樹脂の中で、ペロブスカイト量子ドット(注1)と呼ばれる発光性ナノ粒子が自発的に移動・集積し、模様を形成する過程を詳しく調べました。
 通常、物質は拡散によって均一に広がろうとします。例えば、水に落としたインクは時間とともに広がり、濃さの差が小さくなっていきます。ところが、ナノ粒子(注2)を含む光硬化樹脂(注3)に空間的に強弱をつけた光を照射すると、最初は均一に分散していたナノ粒子が特定の場所へ移動し、濃淡のあるパターンを形成します。一見すると、通常の拡散とは逆向きに物質が集まっていくように見える興味深い現象です。
 本研究グループは、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)(注4)を用いて光の空間分布を制御し、顕微鏡によるその場観察と組み合わせることで、ナノ粒子の移動と光重合反応との関係を調べました。その結果、ナノ粒子を移動させる駆動力は、光の強弱によって生じる化学組成の差と密接に関係する一方、最終的な模様はその駆動力だけでは決まらず、重合の進行に伴ってナノ粒子の移動性が失われていく過程との競合によって決まることが分かりました。
 さらに、光を連続して照射するだけでなく、途中で止める断続照射や、オン・オフを繰り返す周期照射を行うことで、ナノ粒子の移動量と最終的なパターンを制御できることを示しました。すなわち、「どこに光を当てるか」という空間情報だけでなく、「いつ、どのように光を当てるか」という時間情報も、ナノ粒子を配置するための重要な設計因子になります。
 本研究は、光硬化樹脂を単に形を固める材料としてではなく、光によって内部のナノ材料を動かし、集め、配置することのできる「プログラム可能な反応場」として利用する新しい考え方を示すものです。本成果は、JST研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)産学共同 ステージⅠ(育成フェーズ)「金属を組み込んだ新しい導電性ソフトマテリアルの開発」(研究責任者:中西英行、課題番号:JPMJTR25TC)の一環として得られたもので、今後、金属ナノ材料を樹脂中の必要な位置へ集積させる技術への展開を目指します。

光を当てると、ナノ結晶が自ら動き、日本の伝統文様を描き出す

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本研究成果は、2026年10月1日付で学術雑誌『Advanced Science』にオンライン掲載されました。

用語解説:
注1)ペロブスカイト量子ドット
ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を持つ材料からできた、数ナノメートル程度の非常に小さな発光性粒子のこと。光を当てると非常に明るく光り、しかも色を鮮やかに制御できることから、次世代のディスプレーや照明、太陽電池材料として注目されている。一方で、水分や溶媒などに弱く、加工や取り扱いが難しいという課題もある。

注2)ナノ粒子
大きさがナノメートル(10億分の1メートル)の範囲にある非常に小さな粒子のこと。ナノ粒子は、サイズが極めて小さく、普通の大きさの物質とは異なる性質を示すことがあり、発光、触媒作用、電気的・光学的機能など、さまざまな分野で利用が期待されている。

注3)光硬化樹脂
光を当てることで化学反応が進み、液体から固体へと変化する樹脂のこと。3Dプリンティング、コーティング、接着剤などに広く使われている。必要な場所にだけ光を当てて固められるため、微細な加工に向いている。本研究では、この光硬化樹脂が単に固まるだけでなく、内部のナノ粒子の動きや集まり方を左右する場として働くことが重要なポイントです。

注4)デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)
非常に小さな鏡を大量に並べた光制御デバイスのこと。1つ1つの鏡は個別に傾きを変えることができ、光を反射するかしないかを高速で切り替えられる。これにより、光の当たる場所や強さを細かく制御できる。プロジェクターなどにも使われている技術で、本研究ではこの仕組みを利用して、試料上の位置ごとに異なる強さの光パターンをつくり、ナノ粒子の動きを精密に調べた。

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