機械工学系 小林祐生 助教らの研究グループは、カーボンナノチューブ内の液体が示す特異な熱の伝わり方を解明しました

 博士前期課程学生(研究当時) 久本健太さん、機械工学系 小林祐生 助教、山川勝史 教授、未来デザイン・工学機構 池田高浩 特任助手らの研究グループは、カーボンナノチューブ(注1)の内部に閉じ込められた液体アルゴンについて、管の太さによって熱の伝わり方が大きく異なることを、分子動力学シミュレーション(注2)により明らかにしました。具体的には、細い管では管が長くなるほど熱伝導率(注3)が増加する一方、太い管ではその増加が大きく抑えられることを確認しました。さらに、これらの熱の伝わり方の違いと原子の並び方や壁との摩擦との関係を示しました。
 熱伝導率は通常、試料の長さによらない物質固有の値として扱われます。しかし、原子や分子の動きが一方向に制限されるような極めて細い管の中では、管が長くなるほど熱伝導率が増す場合があります。この増加が続く条件や抑えられる条件、また液体の構造や壁との摩擦がどう関わるのかは、十分に明らかになっていませんでした。
 本研究では、管の太さによって内部のアルゴン原子の並び方が変化することに着目しました。アルゴン原子が一列または一層の筒状に並ぶ細い管では、調べた範囲で管が長くなるほど熱伝導率が増加しました。一方、アルゴン原子が複数の列や層を形成する太い管では、この増加が大きく抑えられました。さらに、こうした違いには、原子の集団運動(注4)や管の壁面との摩擦(注5)が関係していることを示しました。
 これらの結果は、ナノスケールの流路における熱輸送現象の理解を深め、熱伝導率を正確に予測・評価するための新たな知見となることが期待されます。

図 1. 計算モデルと、管内の原子の並び方・熱伝導率の変化。
(A)計算モデル。赤色はアルゴン原子、水色は炭素原子を示します。両端の液体領域に温度差を与え、管内の液体が長さ方向に熱を伝える様子を調べました。
(B)原子の並び方の断面表示(左)と、管の長さに対する熱伝導率の変化(右)。一列状・一層の筒状配列では増加が続き、複数の列や層が共存する構造では増加が弱まります。

本件の詳しい内容はこちら(PDF)

本研究成果は、2026年11月4日に英国王立化学会の学術誌『Nanoscale』にオンライン掲載されました。

用語解説:
注1)カーボンナノチューブ
炭素原子が網目状につながった、ナノメートルの太さを持つ管状の物質です。

注2)分子動力学シミュレーション
原子や分子の運動をコンピュータ上で模擬する手法です。粒子間の相互作用をモデル化し、古典力学におけるニュートンの運動方程式を数値的に解くことで、各粒子の位置と速度の時間変化を計算します。

注3)熱伝導率
物質の熱の伝わりやすさを表す量です。通常は、同じ物質で温度や密度などの条件が同じであれば、試料の長さによらない値として扱われます。実際に流れる熱の量は、熱伝導率に加え、試料の長さや断面積、温度差にも依存します。

注4)集団運動
多数の原子や分子が連動して動くことです。液体の密度の変化が音波のように周囲へ伝わっていく運動も、その一つです。

注5)壁面摩擦
液体が壁面に沿って相対的に動くときに生じる抵抗です。その程度を表す量が壁面摩擦係数で、値が大きいほど、液体と壁との相対運動に対する抵抗が大きいことを意味します。

【このページに関する問い合わせ先】
総務企画課広報係 
TEL:075-724-7016
E-mail:koho[at]jim.kit.ac.jp(※[at]を@に変換してください)