平成30年度海外教育連携教員派遣報告
村本 真 准教授 (デンマーク王立美術アカデミー)

所属 デザイン・建築学系
氏名 村本 真 准教授
期間 平成30年9月27日-令和元年7月1日
滞在先 デンマーク王立美術アカデミー

デンマーク王立美術アカデミー(KADK)には,Architecture,DesignとConservationについての学部があり,その中のIBT(Institute of Architecture and Technology)に滞在しています.KADKには,多くの履修プログラムが用意され,それぞれ学部または大学院のプログラムが用意されています.大学院のプログラムは学部よりさらに細分化されています.
派遣先の建築の教員および博士課程の学生は,建物1階に研究室があり,教員室の間にキッチンのあるミーティングスペースが用意されています.このミーティングスペースでは,昼食時間に一緒に食事をしたり,小さなミーティングをしたり,オンラインの打ち合わせが実施されていたり,設計実習の草案批評や,学生の質問対応が行われています.ミーティングスペースには,コーヒーメーカー,冷蔵庫と食洗機が設置されていて,飲食しながら,打ち合わせや議論をすることができる環境になっています.こうしたキッチンとミーティングスペースのセットは,コペンハーゲンビジネススクール(CBS)の教員フロアにも見られ,多くの教員同士が議論するきっかけが用意されているように思いました.


KADKの大学校舎

KADKの大学校舎


IBTの教員研究室とミーティングスペース

IBTの教員研究室とミーティングスペース

大学院生は教員と同じ建物の上階に各自の実習机が用意され,プロジェクトに基づいた実習(PBL)を行っています.実習室は,廊下と一体となっており室内全体が見渡せるようになっています.また,プロジェクトの成果等が壁面でポスター掲示され,製作したモックアップやモデルが置かれていました.学生のプロジェクトの講評会では,普段指導していない異なるInstituteの教員も参加した,講評会が行われていました.参加した極限環境下における建築を対象としたアラスカプロジェクトの講評会では,学生の成果物として,調査内容と課題の整理,課題解決のために開発したモデルのモックアップや実験結果などがプレゼンテーションボード,短い動画や実機(ここでは,シェルター,衣服,温熱環境測定機器,リアクターなど)を使ってプレゼンテーションされていました.ここで,学生は,調査や課題解決の方法論を学び,試案としての実機の製作や簡易な環境・構造実験あるいはシミュレーションまでを行っていることが印象的でした.学生に求められる技能は,建築的知識のみならず,電子工作による計測機器の作成,プログラミング,環境シミュレーション,構造解析などで,各自が設定した課題に応じて取り組んでいます.さらに,講評会の後,成果発表としての展覧会が学内で実施されていて,学生は製作を通して学修を継続します.
また,学生の学外見学会などでは,対象建築の設計者の講演を聴くだけではなく,異分野(たとえば,今回は情報系の講演)の研究者の講演も同時に実施され,最新の建築で採用された技術とその関連分野などが意図的に紹介されているように思いました.さらに,教育についての学生アンケート結果について分析した結果が,学科主任から説明される機会ともなっていました.ここで,今後の改善策などが説明されることは,学科教員と学生の相互理解に貢献しているように思えます.学生の学修に関する充実度を上げるような取り組みが組織的になされているように思われました.

デンマークは,4月以降に暖かい日が来るまで,寒い日が続くため,日本の気候とはかなり異なります.都市の中に多くの鳥が生活しており,都心を少しでれば自然も多いように感じます.郊外にいくつかある野外博物館には,デンマークの古い時代の建物が保存されていて,興味深い構法の建物がみられます.ところで,コペンハーゲンにおける住居不足の問題は深刻なようで,期間中に引っ越しをせざるを得なくなり,新たな住居を探すのに苦労しました.ただし,日常生活で現金をほぼ使わない生活はかなり便利でした.


デンマークの古い建物

デンマークの古い建物

今回の海外派遣に際し,スーパーグローバル大学創成支援事業,本学国際課の方々には大変お世話になりました.また,不在中にご支援頂きました学長,デザイン・建築学系の先生方,学域事務室等の方々には,この場を借りて心よりお礼申し上げます.特に,同じ研究グループの金尾伊織教授,満田衛資教授,小島紘太郎助教には,授業等の負担や学内事務手続きを支援して頂き,深くお礼申し上げます.最後に,受け入れ教員であるOlga Popovic Larsen教授およびDaniel Sang-Hoon Lee准教授,IBTの教職員の方々に心よりお礼申し上げます.