令和元年度海外教育連携教員派遣報告
三瓶 明希夫 准教授 (RFXコンソーシアム)

所属 電気電子工学系
氏名 三瓶 明希夫 准教授
期間 令和元年11月5日-令和2年3月22日
滞在先 RFXコンソーシアム

【はじめに】

2019年11月頭から翌4月末の予定で,イタリアはパドヴァにあるConsorzio RFXに滞在しました.パドヴァはかの有名なヴェネチアと同じイタリア北東部のヴェネト州にあり, 古くからの石畳と柱廊の美しい,静かながら活気のある街です.一説には北イタリアで最も古い都市とも言われており,美術史上ではジョットやドナテッロ,マンテーニャなど多数の著名な芸術家に所縁の深い街です.ボローニャ大学に次いでヨーロッパで二番目に古いパドヴァ大学を有する“大学者の街”としても知られており,ガリレオやダンテが教授を務めるなど学術史でも重要な位置を占めています.

【派遣先Consorzio RFXでの教育・研究活動について】

派遣先であるConsorzio RFXは,欧州核融合研究機構EUROFusionプログラムの枠組みでの共同事業体であり,組織的にはイタリアのNational Research Council(Consiglio Nazionale delle Ricerche)の一部であるが,事務組織などを含めた運営は主にパドヴァ大学が担っている,という若干複雑な背景があります.教育機関としては,パドヴァ大学と他大学が合同でFusion Science and Engineeringをテーマとしたジョイントドクタープログラムを行なっており,在籍する研究者の何割かはパドヴァ大学の教授を兼任しています.ここではパドヴァ大学を始めとした様々な大学の博士課程の学生が研究を行いながら, 博士号の取得を目指しています.
Consorzio RFXは大型の高温核融合装置RFXを有し,プラズマ物理学や核融合に関する様々な研究が行われています.また,核融合研究の枠組みではITERの中性粒子入射(NBI)加熱装置の建造も進められています.高温プラズマだけではなく,プラズマの医療応用や産業応用などの研究も精力的に行われています.残念ながら,私の滞在期間中はRFX装置が大規模改造中で実験は叶いませんでしたが,理論グループのDr. Roberto Paccagnellaのご好意の下で,データ解析を通じて研究・教育活動に携わることができました.高温プラズマの計測データから内部の平衡状態を再構成する技術を紹介し,RFX装置のデータへの適用を研究者や学生と進めました.この過程で,学生と議論する機会も多くありましたが,実験データの扱いや数理モデルについて学生に教えられることも度々ありました.学生は自分の研究については自分の仕事だという意識が強く,関連する事柄については理解が深い一方,自分の担当以外のことは全くわからないという傾向が感じられました.イタリア人の研究者が学生を指導する機会に同席することも頻繁にありましたが,学生が問題をクリアに明示すること,また議論がスピーディーに終わることに驚かされました.

【新型コロナウイルスについて】

報道等でご存知の通り,ヴェネト州は新型コロナウイルスで大打撃を受けました.2月21日に初の死者が確認され,続いてクラスターが確認されると,発生源とされる11のコムーネはレッドゾーンとして閉鎖され,レッドゾーンの外でも北部イタリアの多くの州で大学や美術館の閉鎖が行われました.パドヴァ大学も閉鎖の対象になりましたが,この時点ではパドヴァ住民の危機感は薄く,街は概ねいつも通りの賑わいを見せていました. 3月8日にはレッドゾーンが北部の州を対象に拡大され,ヴェネト州やミラノのあるロンバルディア州等が封鎖の対象となりました.上記の措置を受けてConsorzio RFXは3月9日から直ちにリモートワークに移行しました.3月10日にはイタリア全土で移動制限が行われ,3月12日からは薬局と食品店以外は閉鎖になり,移動するのに許可証を携帯することが必要になりました.街は閑散とし,カフェでおしゃべりする人も,ベンチで日向ぼっこを楽しむ人も居なくなりました.私も住居とスーパーを往復するだけの日々が続きました.
その後は欧州全体の状況も悪化し,帰国できない状態になることが懸念されたため,4月末の帰国予定を切り上げ,3月22日に帰国しました.このような時期に来たことが不運であると思う一方,貴重な体験であったと思います.

【最後に】

スーパーグローバル大学創成支援事業にてこのような機会を与えていただき,心よりお礼申し上げます.渡航前の手続きから渡航中に渡り,国際課の皆様には大変お世話になりました.また、不在中の業務でご支援, ご協力頂いた電気電子工学系教員の皆様ならびに電子・情報事務室の事務員の方々にはこの場をお借りして心よりお礼申し上げます.また,学生指導につきましても,多くの先生方のご助力をいただきました.重ねてお礼申し上げます.


写真1:パドヴァ市民の憩いの場 Prato della Valle

写真1:パドヴァ市民の憩いの場 Prato della Valle


写真2:パドヴァのシンボル的教会 サンタントニオ・ダ・パドヴァ聖堂

写真2:パドヴァのシンボル的教会 
サンタントニオ・ダ・パドヴァ聖堂


写真3:ITER加熱用NBI装置のイオン源部

写真3:ITER加熱用NBI装置のイオン源部