令和5年度海外教育連携教員派遣報告
坂根 慎治 助教 (シンガポール・シンガポール国立大学)

所属 機械工学系 助教
氏名 坂根 慎治
期間 令和4年10月1日-令和5年9月30日
滞在先 シンガポール国立大学(シンガポール)

【シンガポール国立大学】
 令和4年10月から一年間,シンガポール国立大学に客員研究員として滞在しました.シンガポール国立大学は,QSアジア大学ランキングで四年連続1位,2023年度は北京大学に次ぐ2位(世界大学ランキング11位)と,シンガポールのみならずアジアでトップの大学で,世界中から様々な民族・国籍の学生・スタッフが集まる国際色豊かな大学です.樹々に囲まれた緑豊かで高低差の激しいキャンパス内に,学部棟や研究棟,食堂や売店,図書館,学生寮,体育館やスポーツジム,プールなどが集約されており,その複雑な入り組み具合から,滞在してすぐの頃はよくキャンパス内で迷子になっていました.突発的に雨が降り出すことが日常茶飯事なシンガポールでは,バス停や主要な道には雨除けが付いており,慣れるにつれて,雨の中でも傘を持たずにキャンパス内を移動できるようになります.

シンガポール国立大学工学部棟

シンガポール国立大学工学部棟

10分前まで晴れていたのに突然降り注ぐ大雨(工学部食堂横の階段)

10分前まで晴れていたのに突然降り注ぐ大雨(工学部食堂横の階段)

【滞在先での研究・教育活動】
 客員研究員として受け入れていただいたWentao Yan助教は,金属積層造形(3Dプリンター)をメインターゲットとして主にシミュレーション研究に取り組んでおられるこの分野で非常に有名な先生で,博士学生とポスドクが十数名,修士・学部生十名程度の大きな研究グループのPIでもあります.私はこれまで,鋳造などにおいて形成されるミクロンスケールの凝固組織を数値シミュレーションで高精度に予測する研究を進めており,その研究を金属積層造形に応用し共同研究へと発展させるきっかけになれば,と今回の滞在を受け入れていただきました.滞在中は,研究室の博士学生の方と協力しつつ,積層造形中のレーザー照射により金属粉末が溶けてできた溶融池で凝固組織がどのように成長するか予測する手法の開発に取り組み,現在も共同研究を継続しています.研究室では,週末に,メンバー全員参加のグループミーティングが行われており,私も毎回参加していました.毎週,数名が自身の研究進捗を持ち時間30分の中で発表し,その都度メンバー全員でディスカッションを行う流れです.積層造形に関する最先端のグループの研究動向を直接お聞きできるまたとない機会で大いに刺激を受けました.さらに,同研究室の博士学生1名とポスドク1名のメンターとして,研究に用いる計算モデルやプログラミング,データ処理について,英語での研究指導や議論を経験する機会を得ました.教えるより教わることの方が多い状態でしたが,日本では経験することが難しい非常に有意義で学びになる体験を得ることができました.

【シンガポールでの生活】
 外食が基本で多民族国家のシンガポールでは,様々な国の料理屋が街中にあり,日替わりで各国の料理を楽しむことができます.工学部棟の近くにある食堂でも,シンガポール料理,マレー料理,中華料理,インド料理,西洋料理などを提供するブースが複数並んでおり,平日は研究室のメンバーと一緒に昼食や夕食を楽しみました.食堂のメニューは一食S$5前後(日本円で500円前後)とリーズナブルな価格設定になっています(ショッピングモールのフードコートだと同じか少し高いくらい,レストランだとその数倍という価格感です).食堂では,ハラルかそうでないかで食器が色分けられ,返却口も別で用意されており,多民族が共生するために必要な配慮の一端を感じました.昼過ぎには,研究の息抜きにキャンパス内のカフェでコピ(コンデンスミルクと砂糖が入った甘いコーヒー)を注文し,周囲を歩き回る野鳥や野良鶏を眺めながら一杯飲み終わるまでぼんやりしていました(野良鶏はキャンパスや街中でよく見かけました.家族連れのことも多くほのぼのします).キャンパス内のスポーツジムやプールは格安(S$1前後)で利用可能で,研究室には毎日通っている学生さんもおります.私も週に2,3回は放課後にご一緒し,筋トレをしたり泳いだりと,健康的な生活を送っていました.渡航してから体調を崩すこともなく元気で帰国し,継続的な運動の大切さを実感しました.

国際色豊かな大学食堂のメニュー

国際色豊かな大学食堂のメニュー

キャンパス内を闊歩する野良鶏たち

キャンパス内を闊歩する野良鶏たち

【謝辞】
 最後にこの場をお借りして,一年間の滞在を快く受け入れていただいたシンガポール国立大学のWentao Yan助教,温かく迎え入れていただき日々楽しく過ごさせていただきました研究室の皆様,滞在先の紹介や研究経費のサポートなど様々なご支援をいただきました本学機械工学系の高木知弘教授,長期出張中の大学業務などで大変お世話になりました機械工学系の先生方,不在の間お手間を取らせかつ多々ご助力いただいております本学研究室の皆様に深く感謝の意を示します.また,出張の手続きにあたり,国際課の皆様を筆頭に事務員の方々に大変お世話になりました.さらに,滞在後半にはスーパーグローバル大学創成支援事業の支援を受けましたこと,ここで感謝の意を示させていただきます.