日仏翻訳学研究」第3回研究会 「通態性」としての翻訳ー東西方法論学的対話ー

案内

19世紀以来、「科学性」を目指した文学研究は、読者の立場を軽視し、「客観的」な読解というものを目指してきた。しかし文学は、読む主体の存在がなければ成り立たないものである。本研究会では、オーギュスタン・ベルクの風土学的思想--人間と、それが生きる風土との相互作用を探求する--を出発点に、文学研究における読者の位相に注目する。文学の受容とは、単に読者が作品の内容を解読するということではない。読者は読む行為の中で、テキストから作用する刺激に反応し、作品に対し問いかけを行い、作品の返答を受け取る。こうした相互作用、ベルクのいう「通態性」の中で受容が行われるのである。こうした受容の問題は、まさに翻訳という場において、可視化されて現れる。翻訳テクストは、作品と読者との「通い合い」の跡を示すものなのである。本研究会では、「通態性」としての翻訳を問うことで、翻訳学研究、ひいては文学研究一般に、新たな視座を提供することが目指される。

開催日:
2018年3月16日(金)、17日(土)
会 場:
京都工芸繊維大学 60周年記念館2階セミナー室 [ MAP ]
主 催:
ジュリー・ブロック(京都工芸繊維大学)、加藤ダニエラ(同大学大学院)、吉川順子(同大学大学院)
問い合わせ先:
・ジュリー・ブロック
 brock[at]kit.ac.jp(※[at]を@に変換してください)
・吉川 順子
 junkoyoshikawa[at]kit.ac.jp(※[at]を@に変換してください)
・加藤 ダニエラ
 danielakato[at]kit.ac.jp(※[at]を@に変換してください)

<プログラム>

3月16日(金)
日本古典文学に見られる通態性

09:00-12:30
研究会 「『万葉集』の和歌の技法と通態性」

  • 岩下武彦
    続「天離る夷」-方法としての枕詞-
  • 駒木敏
    序歌形式の構造-物と心の共鳴-
13:30-18:30
研究会 「詩にみられる自然の解釈と文化の受容」

  • ジュリー・ブロック
    詩作の原動力として働く通態性 -「見ゆ」を含む柿本人麻呂の和歌二首を例に
  • 西澤一光
    17 世紀における契沖解釈学の確立の意義をめぐって 
  • 金子美都子
    俳句仏語訳における通態性-ポール=ルイ・クーシューの翻訳を例に 

3月17日(土)
風土学と翻訳の問題

09:00-12:30 
研究会 「哲学における風土学と翻訳」

  • ロマリク・ジャネル
    他者から自己へ~詩の翻訳についての考察
  • 上原麻有子
    モノローグとしての翻訳
13:30-18:10
研究会 「異なる「風土」を翻訳する」

  • 伊藤玄吾
    言語の歴史性をいかに翻訳するか-フランス・ルネサンス期テクストの日本語訳を例に
  • セシル坂井
    日本現代文学と翻訳の地平線―条件と新しい動向
  • ヨアン・モロー
    風土的な観点から見た通態性と翻訳

※参加研究者・プログラムの詳細は案内パンフレット(PDF) をご覧下さい。