デザイン・建築学課程の研究室35個の概要を紹介します。もっと詳しく知りたい方は、課程等のホームページもご確認ください。
情報デザイン研究室 (櫛 勝彦、畔柳 加奈子)
【研究テーマ】ボトムアップ型デザインアプローチの手法およびその応用研究
【キーワード】プロダクトデザイン/インタラクションデザイン/デザイン方法論
情報技術が進化した今日、デザインの対象は、実体をともなうモノだけでなく、例えば、ネットワーク上のサービスにまで拡がっており、超高齢化・成熟社会とも相まって、人・社会のニーズがますます見えにくくなっています。しかし、社会状況の変化にもかかわらず、ニーズの発見とそれに対する創造的解決の生成が、デザイン行為であることに変わりはありません。
本研究室では、複雑化する社会におけるデザイン方法論を、情報収集と分析における論理性と、直観・体験を基とした感覚的アプローチを組み合わせることによって構築しようとしています。
現代デザイン研究室 (岡田 栄造)
【研究テーマ】マテリアルとサービスのデザインディレクション
【キーワード】マテリアルデザイン/サービスデザイン/ブランディング/デザインディレクション
本研究室では、主に立体物のデザインを対象として社会とデザインの関係を研究しています。立体物に対する社会的な課題やニーズはどのように生まれるのか。デザインという行為によってそれらはどのように解決され、満たされるのか。過去あるいは現代の事例を分析するとともに、製造や流通の現場に実践的に関わることによって、社会的な課題やニーズに応えるための新たなデザイン手法の開発を進めています。
プロダクトデザイン研究室 (中坊 壮介)
【研究テーマ】プロダクトデザイン
【キーワード】プロダクトデザイン/ファニチャーデザイン/インテリアデザイン
複雑化していく社会の中で、アイデアの実現にはその仕組みに無理なく収まるデザインがこれまで以上に求められていくと考えられます。
本研究室では、身の回りの製品のモノづくりや素材、機能、流通、文化的背景や情緒的作用など、デザインを形作る要素に対する深い観察と分析を行い、「いかにしてそれらの製品がそのようにそこに在るのか」という、モノの背後にある本質を導きだし、製品と社会の仕組みとの関係を明らかにしていきます。この観察・分析を持って、実製品のデザインプロジェクトなど、実践的に研究を進めます。
視覚デザイン研究室 (中野 仁人)
【研究テーマ】グラフィックデザインの展開について、日本の伝統工芸とデザインの関係について
【キーワード】タイポグラフィ/イラストレーション/写真/印刷/エディトリアル/伝統工芸
現代社会における視覚デザインの役割を調査、分析し、その社会的効果を理論的に検証すると同時に、デザイン活動に如何に反映させ、有効なデザインの実践をおこなっていくかを研究しています。タイポグラフィ、イラストレーション、写真などをベースにして、広告、エディトリアル、商品開発やブランディングなども含みます。
また、京都の伝統をキーワードにしたデザインの実践にも積極的に取り組み、商品開発とともに展覧会等も随時開催しています。
<写真:中野ゼミ展 ポスター&フォント デザイン>
伝達デザイン研究室 (西村 雅信)
【研究テーマ】コミュニケーションデザインの展開、構築とその応用
【キーワード】ヴィジュアルデザイン/パッケージデザイン/インフォグラフィックス/新製品開発デザイン/V.I/C.I
『生活をつくるグラフィックデザイン』
「生活」を「環境・モノ・情報」でとらえた上で、視覚デザインの分野から平面、立体を問わず、広く研究・活動を行っています。
特に商品開発デザイン、パッケージデザイン、ブランド構築デザインを専門とし、「価値の伝達」を核に、タイポグラフィ、図像処理、印刷技術、カラー&マテリアル、成形技術、インフォメーション&サインシステムデザイン等を駆使し、検討、実践を行い、今日的視覚デザインの営為の本質を解明し、世に問いかけます。
メディアデザイン研究室 (池側 隆之)
【研究テーマ】映像のエビデンス能力とナラティブ能力を活かしたメディアデザイン研究
【キーワード】映像コンテンツ/コミュニケーションデザイン/ヴィジュアル・リサーチ/コミュニティアーカイヴ
送り手と受け手の相互作用に基づくコミュニケーションの総体を俯瞰しながら、映像を中心としたメディアデザインの可能性について考察します。本研究室の対応領域として、視覚情報伝達を担い既存の各媒体に対応するコンテンツ・クリエーション(映像作品、ドキュメンタリー、アニメーション制作等)が想定されます。
また方法論として人類学や社会学といったフィールドワークに重きをおいた隣接領域との接続を積極的に考えながら、視覚を軸とした新しいメディアとコミュニケーションのあり方についても検討します。
<写真:地域の魅力を伝えるための映像制作(取材準備の様子)>
インテリアデザイン研究室 (野口 企由、多田羅 景太)
【研究テーマ】豊かさの本質とインテリア空間の関係を様々な視点から研究する
【キーワード】インテリアデザイン/インテリアプロダクトデザイン/ファニチャーデザイン/エコロジカルデザイン/デザイン倫理
現代のインテリアデザインが提供する「便利さ」「美しさ」「豊かさ」の在り方を、デザイン倫理や地球環境保全の側面からも問い直し、物理的にも心理的にも長持ちする室内環境を追求します。
また、生活者や使用者の価値観を持続・節約型へ導いていく指導的役割も、インテリアデザイナーの資質と位置づけます。そしてこれからのストック型社会において、「創ること」、「維持すること」、「教育・啓蒙すること」が同時にできる人材の養成を目指しています。
<写真:椅子の実測演習>
製品デザイン計画研究室 (木谷 庸二)
【研究テーマ】デザインマネジメントの視点を通した製品デザイン計画
【キーワード】デザインマネジメント/製品デザイン計画/デザイン論/ブランディング/ネットワーク
本研究室では、デザインの拡がりを研究しています。我々の生活環境を広い視点で捉え、バランスの取れた価値の高い製品を企画・構想し、その実現プロセスを上手くマネジメントしていくことを、デザインを通して研究しています。デザインの計画・企画では、景観や企業のイメージなどをブランドやデザインとして捉えることも非常に重要です。
そしてこれらの計画を市場にどう理解させるか、人・モノ・金・情報の現実的な検討を重ねながら、どのように経済活動として成立するかを研究し、実際のプロジェクトを通して実践しています。
<写真:研究室プロジェクト打合せ風景>
色彩・感性工学研究室 (佐藤 哲也、北口 紗織)
【研究テーマ】モノ・コトと人のつながり -感覚・感性の数量化-
【キーワード】色彩工学/感性工学/繊維科学
私たちの身の回りには、工業的に作られたモノがいっぱいあります。本研究室では、このモノの特性を評価する研究を行っています。モノの特性評価には、いろいろな評価がありますが、本研究室では、モノの物理的・化学的評価と人間側から見た感覚的な評価の橋渡しを行っており、特に、“色彩”の評価を中心に国内外のいくつかの研究機関と共同で研究しています。
具体的には、色彩から受ける印象の数量化と国際比較、カラーマーケティング、グローバルカラーコミュニケーション、色彩の文化的側面の客観的解析、繊維製品の色彩評価などを研究しています。
<写真:測色器とカラーサンプル>
情報環境工学研究室 (三村 充)
【研究テーマ】ICT/IoT技術を用いたQOLの向上・知的活動支援
【キーワード】IoT/ICT/ユーザインターフェース/コミュニケーション/発想支援
スマートフォンをはじめとする携帯型スマートデバイスの普及やセンシング技術の発展、IoT技術によって、人々は常に多くの情報に触れると共にその行動・活動はデータとして収集されています。その規模や精度はかつての比でなく、人々の生活を取り巻く情報環境は近年大きな変化を迎えています。これらのデータは人々の行動や振る舞いを分析・予測するために使われ、マーケティングや技術開発を通じて人々の生活にフィードバックされます。
本研究室では、このようなデータをQOLの向上や生産性の向上に生かすため、コミュニケーション支援や発想支援、学習支援など、人々の生活・活動を支援するための検討を行っています。
生理環境工学研究室 (小山 恵美)
【研究テーマ】昼夜光環境がヒトの生活や睡眠に及ぼす精神生理的影響の研究
【キーワード】睡眠-覚醒/光環境/生体信号/計測評価/精神生理状態
昼間「覚醒」して夜間「睡眠」をとる、という昼行性動物の特性として自然な生活が、昼夜の区別が希薄になりがちな現代社会において、相当に脅かされていると考えられます。
本研究室では、ヒトの概日リズムを基盤とする時間生物学的な知見をふまえ、睡眠と覚醒のバランスを個人の生活行動に適合させることを目指し、人間が発する生体信号の計測評価手法を探求するとともに、生活をとりまく光など物理的環境の改善や日常生活行動と関わる精神生理状態評価の研究を推進しています。
このようなヒトに関わる工学研究は、生活をとりまく空間や製品の設計とその評価のために、重要な研究分野のひとつと考えています。
<写真:作業課題中の生体信号計測評価; 時計表示デザイン評価の実験風景>
環境デザイン経営研究室 (仲 隆介、LI Andrew、松本 裕司)
【研究テーマ】ワークプレイスデザイン、Computational design and design tools
【キーワード】ワークプレイス/Computational design/Shape grammars
ワークプレイスを中心とした空間に関する研究を行っています。ワークプレイスは、〈ワークスタイル〉、〈ワークツール〉、〈ワークスペース〉の3つで構成され、これらの要素を総合的に調和させる必要があります。
本研究室は、これらの3つの視点から、調査、デザイン、評行、評価のプロセスを繰り返すことで、実際に役に立つワークプレイスをデザインする手法の構築を目指しています。
また、ワークプレイスにかぎらず、価値の多様化に伴って、解くべき課題がますます複雑化、高度化しています。そうした現代のプレイスデザインへのアプローチとして、コンピューテーショナルデザイン(IT技術を活用したデザインの手法)についても研究しています。
製品産業経営学研究室 (川北 眞史、勝本 雅和)
【研究テーマ】イノベーションの企業経営に及ぼす影響や活用法についての研究
【キーワード】イノベーション/MOT/知的財産権
本研究室は、急速に変化する社会・経済環境の重要な動因の1つであるイノベーションに焦点をあて、その企業経営に及ぼす影響や活用法について研究を行います。領域としては、マクロレベルの技術経済や科学技術政策から、ミクロレベルの技術経営(Management of Technology(MOT))までを対象とします。
具体的には、技術経済領域において情報技術の活用度の国際比較、政府プロジェクトの効率的な選定法など、また技術経営領域において、企業の技術戦略、技術系ベンチャー企業の起業戦略などの企業戦略、知的資産経営に地域資源も含め企業経営だけでなく地域経営や、技術をはじめとした知的財産の金銭的価値評価手法を研究します。
デザイン&イノベーション研究室 (Park Jae Hyun)
【研究テーマ】理論と実践が融合したアプローチによる顧客中心設計とイノベーション研究
【キーワード】デジタルイノベーション/ユーザーエクスペリエンス/情報システム
本研究室では、たとえば、顧客中心の視点で製品やシステム、サービスをデザインするといった新しいイノベーションを生み出すビジネスの仕組みを研究します。イノベーションを生み出し続けるためには、ビジネス、デザイン、テクノロジーをこれまでとは違う形で融合させる必要があります。
そして、顧客中心のアプローチは、ビジネス、デザイン、テクノロジーの新しい関係を分析し、融合させて成功に至るための重要なキーワードとなります。
美術史・美術館学研究室 (並木 誠士)
【研究テーマ】日本の美術・工芸の歴史的展開および美術館・博物館における展示研究
【キーワード】日本美術史/近代京都研究/美術館学
本研究室の中心的な研究テーマは、日本の絵画、彫刻、工芸品などについての歴史的、芸術学的な分析です。そして、第二のテーマは、絵画や工芸品を展示するという行為を通して、それらの作品の魅力や意義、価値を多くの人びとに伝えることです。
本研究室に所属する学生は、大学内の美術工芸資料館での調査研究や展示活動にも積極的にかかわって、美術・工芸作品のあらたな価値の創造につとめています。
<写真:美術工芸資料館収蔵資料を用いた展示実習の様子>
造形史研究室 (永井 隆則)
【研究テーマ】近代美術とアール・ヌーヴォーを軸に近代造形、現代デザインを研究
【キーワード】近代性/造型/反近代化/セザンヌ/アール・ヌーヴォー
本研究室は、西洋美術史、日欧の近代美術史、デザイン史、現代デザイン論研究を志す研究者を養成する事を目的とする。文献資料だけを頼りとする主知主義的研究ではなく、制作も同時に行いながら、制作の中で思考した成果を論文としてアウトプットできる人材を育成する。
本研究室で学んだ学生は、将来、美術館学芸、メディア、マスコミ関係、実技と講義を共に担当できる大学教員を職業として目指す事ができる。
<写真:【最新の研究成果】『ピカソと人類の美術』(大髙保二郎/永井隆則編著)三元社、2020年>
感性論(美学)・芸術学 (三木 順子)
【研究テーマ】人間の生と芸術における感性および想像力の意義と可能性
【キーワード】美的経験/芸術諸ジャンル/感性/想像力/形象
絵画・彫刻・建造物から、写真・映画・演劇・舞踏、さらには音楽や文芸に至るさまざまなジャンルの作品を考察の対象として、芸術の理論を探求しています。時間や空間や身体についての意識、あるいは、感性や想像力の働きは、芸術をとおしてどのように変容し成熟していくのでしょうか。芸術への問いは、人間の知覚の在り方、ひいては人間の生き方への問いとして深まっていくこととなります。
学生は各自で研究のテーマを設定し、ゼミでの研究発表や質疑応答などをとおして考察を進め、論文を執筆します。
<写真:展示のための「切り文字」を東京にて制作中(2019年度は、各自の研究論文執筆に加えて、芸術系の大学の教員・学生とともに、東京で展覧会のインストールを行いました)>
現代芸術論研究室 (平芳 幸浩)
【研究テーマ】現代の芸術実践を社会的文脈(対話・衝突・変容)において検討する
【キーワード】現代アート/受容/キュレーション
既成の価値観を問い直し新しい価値を創造する「現代芸術」について、多角的なアプローチで研究を行います。個人の表現と解されがちな芸術創造の背景には、表現者自身も気づいていない歴史的・地理的・文化的・政治的文脈が存在しています。いったん生成した表現は解釈を生み、解釈という言葉がもたらす「意味」は、表現を変質させることもあります。
それゆえ、現代芸術について研究するということは、社会における価値の在り方を問い、文化や社会全般について深く考察することでもあるのです。
<写真:研究をもとにしたキュレーションにより、京都国立近代美術館で実施した展覧会 2017年>
表象文化論研究室 (井戸 美里)
【研究テーマ】日本美術を中心とする視覚芸術を学際的な視点から研究する
【キーワード】日本美術/視覚芸術/絵画
芸術作品を成立させる諸要素について多角的に分析を行います。私自身は日本の絵画(特に建築や室礼空間とともに存在する屏風絵や障子絵)を中心に、それらが享受された空間や描かれた図像学的な意味について研究を進めています。
本研究室では、さまざまな方法論を学び、同時代の文学、歴史、建築など領域横断的な研究を通して、人々が生み出した作品の持つ豊かな世界を明らかにすることを目指します。地域、文化、時代にかかわらず、学生は各自の関心のある作品やテーマについて調査し、自分の言葉で伝えることを目標とします。
<写真:美術館での作品調査の様子>
デザイン思考・アントレプレナーシップ研究室 (Sushi Suzuki)
【研究テーマ】人や社会に向けた新しい価値の創造と共有に関する研究
【キーワード】デザイン思考/イノベーション/アントレプレナーシップ
どうやって世の中に新しい価値を生み出すのでしょうか?この数十年で、イノベーションはニッチな言葉からビジネスの流行語になりました。デザイン思考は20年前には存在していませんでしたが、今では誰もが話題にしています。スタートアップとシリコンバレーの精神は、サブカルチャーから多くの都市の注目の的になりました。アイデアはどのように製品化され、どのように起業され、どのように企として成功するのでしょうか?
特定の業界、製品/サービス、または地理に限定せずに、世界で新しい価値を生み出すためのミクロおよびマクロレベルのプロセスと背景を考察します。
サステイナビリティデザイン研究室 (津田 和俊)
【研究テーマ】デザイン、ファブ、バイオ:サステイナビリティの実践的研究
【キーワード】資源循環/ライフサイクルデザイン/サーキュラーデザイン/パーソナル・ファブリケーション
オープンデザインやデジタル・ファブリケーション、バイオテクノロジーなどの技術の急速な進展や低廉化を背景に、多様な個人が、これらの技術を扱うための知識や実験装置を手元に備え、芸術表現や文化創造、課題解決、また衣食住など日常生活へと活用していく動きがはじまっています。
本研究室では、デザイナーやアーティスト、研究者、市民とのさまざまな実践を通じて、オープンデザインやデジタル・ファブリケーション、バイオテクノロジーがより一層身近な技術として受容される未来像を描きます。また、これらの技術による循環型社会や自然共生社会の構築や、サステイナビリティの向上に向けたデザイン運動としての側面に着目し、その可能性の追求に取り組みたいと思っています。
現代建築設計研究室 (米田 明、中村 潔)
【研究テーマ】現代建築の設計思想・手法研究
【キーワード】空間/場所/テクトニック/構造/構想力/現代思想/庭園/日本の思想
モダニティの本質は、事後的に観察される進化や進歩ではなく、また革命的な刷新でもなく、現時点で世界にある過去や自然や思考からもたらされたすべてのものを材料とみなして、未来が善く美しくなる可能性に賭けた、現時点では世界にない新しいものを形成しようとする意思の持続です。私たちはそうした形成への意思をもって、新しい空間形式の実在化を図る建築を現代建築と定義します。
本研究室では、現代建築の設計を方向づける建築理念の創出、方法の開発、過去データベースの再解釈を研究します。さらにそうした形成の原動力となる、技術や身体や環境や歴史へと回帰し、それらの意味を更新しつつ再統合する構想力を養います。
建築設計研究室 (角田 暁治)
【研究テーマ】村野藤吾の設計プロセス及び建築造形の根拠の在り様について
【キーワード】村野藤吾/情緒性/建築造形
本研究室では、建築設計に関わる有形無形の諸要素や現象についての理論的研究や、建築言語の造形原理の根拠についての分析を行うとともに、実践的な設計を通してその具体的な展開を検証しています。着想したアイデアを建築として成立可能なものとするために幅広い視点から問題を捉え、自らの意図を正しく第三者に伝えるための修練を行っています。
また、本学美術工芸資料館所蔵の村野藤吾の設計図面の整理と分析を通して、設計プロセスと作品の関係についての考察も行っています。
建築設計学研究室 (長坂 大)
【研究テーマ】既存環境と新しい空間構想
【キーワード】コンテクスト/地球/環境/都市/集落/建築/ランドスケープ/建築家
建築設計とは人間のための地球の改修計画です。建築単体はもちろん都市や自然といった地球上の空間すべてに美意識を持ってほしい。
私が学生時代に最も衝撃を受けたのは「建築家なしの建築」に登場する世界の集落でした。天才建築家といえども到達できない圧倒的な造形美。長期的な時間軸で育まれる人間の生存活動の軌跡。単純な原理と複雑な結末。美しい都市や個性的な集落には、個性的発明や各種の生成原理が蓄積されています。
それでは私たちは建築家として、家や村や都市を設計するにはどうしたらいいのでしょうか。本研究室ではこんな問いを契機として、新しい建築をつくるための実践的方法を探求しています。
建築・都市設計論研究室 (松隈 洋)
【研究テーマ】日本のモダニズム建築から現代の都市と建築の在り方を学ぶ
【キーワード】モダニズム建築/前川國男/ル・コルビュジエ/村野藤吾/坂倉準三
建築から都市へと広がる公共空間を軸に、設計方法論を幅広く学ぶ研究室です。特に日本のモダニズム建築に着目し、そこで試みられた方法などを建築家の仕事から学びます。その成果として、美術工芸資料館が所蔵する村野藤吾の設計原図を用いた展覧会を継続的に14回にわたって開催してきました。
その他、ル・コルビュジエ、A・レーモンド、坂倉準三、C・ペリアン、前川國男、白井晟一、谷口吉郎・谷口吉生、丹下健三、大髙正人など、全国各地で開催される多くの建築展の企画にも協力しています。
モダニズム建築に学びながら、現代に有効な設計方法を見つけ出し、実践的な設計デザインに有効な幅広い研究に取り組むことが目標です。
建築デザイン研究室 (木下 昌大)
【研究テーマ】最適化する建築-持続可能な風景をめざして
【キーワード】建築デザイン/設計手法/最適化/サスティナビリティ/風景
建物がつくられるとき、そこにはあらゆる次元で多くの与条件が存在します。それらの与条件が取りこぼされず、切り捨てられず、高度に統合されたとき、その建物は内外の環境をより最適なものに変える“建築”と呼べるものになると考えます。そのような“建築”をどのようにしてデザインするのか、その方法論を研究と実践の両側面から探究していきます。
建築計画・地域施設計画研究室 (高木 真人)
【研究テーマ】伝統的空間の機能的継承/こどもを元気にする空間づくり
【キーワード】中間領域/こども環境/地域施設
建築計画の分野において、特に伝統的な中間領域的空間に関する研究やこどものための空間づくりに関する研究を行っています。
1) 廊・縁側など伝統的な中間領域的空間を機能的な側面から分析・再評価し、再生・継承することや、保育施設など現代の地域施設計画への応用を考えています。
2) こどもが自由に外遊びできる環境に関する研究や、保育施設計画に関する研究、公立小学校の再編やそれにともなう廃校の利活用に関する研究を行っています。
都市史・都市論研究室 (中川 理、大田 省一)
【研究テーマ】日本・アジアの近現代都市空間の形成・変容過程と都市解析
【キーワード】都市空間史/近代都市計画史/都市論
近代の建築の歴史研究を発展させて、建築を成り立たせる都市空間の歴史と論理の研究に取り組んでいます。都市には、政治、経済、文化、生活とあらゆるものが積層しています。都市の空間に着目し調査することで、その状況を分析し、都市を構成するさまざまな要素と、その関係を明らかにしていきます。分析対象として取り組むフィールドは、主にアジアと日本の都市です。
都市史研究室 (小野 芳朗、岩本 馨)
【研究テーマ】日本の都市空間の歴史的研究
【キーワード】都市史/空間史/環境史/名所論
本研究室では、都市や地域がたどってきた歴史を様々な史料を用いて捉え、その形成・発展あるいは衰退の過程と要因について考究しています。具体的なテーマとしては、近代都市の形成史研究、都市と水に関する研究、近代都市景観の成立史研究、近世武家地・寺社地の空間構造の研究などに取り組んでいるところです。
日本建築史・都市建築遺産論研究室 (清水 重敦、松田 剛佐、MARTINEZ ALEJANDRO)
【研究テーマ】都市建築遺産の調査研究とその保存活用の実践、日本建築等の木造伝統建築の様式や意匠、材料や技術などの実証的な調査研究
【キーワード】文化遺産/都市建築遺産/文化的景観/伝統的建造物群/日本建築/建築生産史/寺社/数寄屋/民家
本研究室では、日本・東アジア、あるいは世界における木造を中心とした伝統建築を研究対象とします。日本あるいは東アジア建築史・都市史の研究を基盤として推進するとともに、研究室から積極的に外に出て、伝統建築、町並み、都市、文化的景観といった文化遺産、すなわち「都市建築遺産」を幅広く対象として具体的な保存再生・まちづくりのプロジェクトを実施していきます。
現在のテーマには、①文化遺産の保存活用に関する制度と理念の研究、②文化的景観や歴史的町並みの調査研究とまちづくりの実践、③日本建築等の木造伝統建築に関わる意匠・技術・文化の研究、などがあります。
近代建築史・近代建築保存再生学研究室 (笠原 一人、中山 利恵、三宅 拓也)
【研究テーマ】近代建築の歴史および保存再生、活用、リノベーション
【キーワード】近代建築/保存再生/リノベーション/建築修復技術/建築アーカイヴズ
近年、優れた近代建築や近代の建築(民家・町家等も含む)が各地で解体の危機に瀕しています。しかし、歴史を正しく生かしつつ現代の用途に適合する優れた保存・活用ができれば、私たちの都市環境に歴史的な深みと新しい機能の両者を与えることができます。
本研究室では、近代の建築家や大工などの技術者とその作品、そこで展開された造形と技術、それを支えた制度と地域について研究しています。加えて、その近代建築の保存・改修をめぐる理念・方法・技術・美意識について、グローバルな視点での調査・研究を行っています。
西洋建築史・建築論研究室 (西田 雅嗣)
【研究テーマ】建築とは何かを歴史の中に考える
【キーワード】建築史学/建築考古学/比較建築論
フィールド調査を軸にした西洋中世建築の考古学研究と、日本建築をフランスの研究者と考える比較建築文化論の研究室です。日仏共同研究の他、学生も含めた日仏間の行き来が盛んで、特にパリ=ソルボンヌ大学の美術史・考古学研究グループとは密接な関係にあります。
建築史・建築論は、理論的な基礎研究分野ですが、フランスの中世教会保護活動や、フランスにある日本建築の修理などにも、現地研究者や公共団体などとともに関与しています。
建築構造研究室 (金尾 伊織、満田 衛資、村本 真、小島 紘太郎) ※紹介動画はこちら
【研究テーマ】歴史的建造物を含む建築物の耐震性能評価と構造設計技術の開発
【キーワード】耐震構造/伝統的建築/構造力学/構造設計
本研究室では、歴史的・伝統的建築を含む様々な建築物の耐震性能を向上させる研究から、構造設計技術に至るまで幅広い分野を対象としています。建物が崩壊に至るまで追跡可能な大変形骨組解析法の開発を行うと共に実験的検討を行い、建物の性能を精確に評価する手法を検討しています。
さらに、長周期地震動と建築物の共振現象を効率的に評価する方法の開発も行っています。評価手法の確立と並行して、構造設計者支援の立場に立ったAIやIoTを用いた新しい時代の構造設計手法の開発を行います。
これらの研究成果に基づき、デザイン性と安全性に優れた構造設計技術を確立することを目指しています。
<写真:茶室などにみられる極めて薄い土壁の性能評価実験の様子>
建築計画・設計研究室 (阪田 弘一)
【研究テーマ】多様性に開かれ持続性に富んだ建築・まちづくりへの取り組み
【キーワード】居住/公共性/再生/防災
住まいをはじめとする建築、その総体としてのまちは、人の生活の基礎となる空間です。望ましい建築そしてまちをつくることは、住まい手や使い手自身が計画や建設、そして維持管理に積極的に関わり続けていけることが重要です。
しかし現代社会は分業化・複雑化が進み、人々が建築やまちとそうした直接的な関係をうまく持てずにいます。そこで本研究室では建築・地域計画の分野において近年は以下のような研究テーマに、設計・ものづくりの実践、当事者への支援活動なども含め取り組んでいます。
1)災害時避難に配慮したまちづくり 2)被災者のための応急居住空間 3)難病患者や認知症高齢者が住み続けられる住まい~まち 4)建築・まちの再生・復興手法
<写真:都市・建築防災研究と被災地支援の一環として、東日本大震災の津波で全壊した石巻の歴史ある映画館と石巻市民の復興を願い、映画館跡地近くでの一日限りの仮設野外映画祭の企画・設計・施工に携わった。>
都市・建築サーヴェイ研究室 (登谷 伸宏、赤松 加寿江)
【研究テーマ】日本および西欧の歴史都市、歴史的建造物に関する調査・研究
【キーワード】都市史/領域史/景観史/京都/日本建築史/都市・建築サーヴェイ
本研究室では、日本やヨーロッパの建築・集落・都市を対象とし、実測調査、古文書・絵図の読解などを通してそれらの持つ歴史的な価値や多様性を理解することを目指しています。さらに、調査・研究を通して、これらを将来の文化遺産としていかに保存・活用してくのかについての提案も行っています。
現在は、①近世京都の都市史研究、②中近世移行期における城下町の形成に関する研究、③近世寺社建築の調査・研究、④近世イタリアの都市史研究、⑤イタリアの建築・集落・都市調査と保存・再生手法の研究、⑥ヨーロッパにおける文化的景観の研究、を進めています。