注目研究の紹介 2020年2月

 本学の注目研究を毎月1つずつ紹介します。

【2020年2月】
 室温で液体のように流動する金属ナノ材料の開拓と高分子・繊維材料への応用研究
(材料化学系 中西英行 准教授)

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室温で液体のように流動する金属ナノ材料の開拓と高分子・繊維材料への応用研究

 室温で液体のように溶ける金属のナノ材料を開発しました。この材料を用いると、あらゆる物体の表面や内部に金属を組み込むことができ、熱伝導性や電気伝導性、触媒活性を示すようになります。

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多孔質金属

 紙はセルロースファイバーが絡み合った多孔質な構造をしており、流体を通し、軽量で強度も高いことから近年、優れた材料として再び注目されています。紙内部の1本1本のセルロースファイバーの表面を金が覆っているため、良好な電気伝導性(1 Ω/sq以下)と優れた接着性を示します。そのため、屈曲させたり、擦ったり、通常の使用範囲内では金属の剥離や断線による電気伝導率の劣化は生じません。同様の効果はレーヨンなどの幅広い繊維材料でも得られています。

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導電性ゴム

 私たちの方法では物体の内部に金属を注入するので、繰り返し延伸させても電気伝導率は初期の値から変化せず耐久性に優れます。上の図は銀を導入したポリウレタンゴムを表していますが、目的の高分子に合わせて様々な溶媒を用いることができるので天然ゴムやPDMSなどその他の幅広い高分子材料の内部を導体に変えることができます。

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不均一触媒

 溶液中の物質と電子の授受が可能な活性な界面を有する不均一触媒の調製と担持を同時に行うことができます。パラジウム触媒を担持した濾紙に反応溶液を通すだけで、反応が進行し、生成物が生じます(左:黄色 → 右:透明)。触媒のない場合、反応は全く進行しないため、作製したパラジウム触媒は活性であることを示しています。

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合金ナノワイヤー(成形加工)

 細孔(鋳型)に金属を生成させ、その後鋳型を取り除くと図のようにナノスケールで金属を成形加工することができます(ナノワイヤーの直径:100 nm)。また、異なる金属を混ぜて合金にすることも可能です。

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【主な発表論文】

  • Nakanishi, H., Kikuta, I., Teraji, S., Norisuye, T. & Tran-Cong-Miyata, Q. Langmuir 34, 15674-15680 (2018).
  • Nakanishi, H., Kikuta, I., Segawa, H., Kawabata, Y., Kishida, R., Norisuye, T. & Tran-Cong-Miyata Q. ChemSusChem 10, 701-710 (2017).
  • Nakanishi, H., Kikuta, I., Kawabata, Y., Norisuye, T., Tran-Cong-Miyata, Q. & Segawa, H. Adv. Mater. Interfaces 2, 1500354 (2015).

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