オリンピックは1896年のアテネ大会から今日に至るまで、大戦で中断されながらもおよそ120年間に渡り開催されてきました。「平和の祭典」とも呼ばれているように、スポーツが人と人とをつなぎ、今でも世界中の人に愛されています。
オリンピックが開催されると、開催地には世界中の国と地域から多くの人々が訪れます。そのため、オリンピックに用いるデザインも世界に通用するものでなければなりません。とりわけ、オリンピックの顔とも言えるポスターは、その時代、地域の総力をあげて製作され、当時のデザインや社会を知る上でも重要な役割を果たします。今回の展覧会は、美術工芸資料館の所蔵品により歴代のオリンピックポスターの変遷を辿るとともに、日本国内で開催された3つのオリンピックのデザインを紹介し、デザインと社会とのかかわりについて考察していきます。デザイナーたちが時代をどう捉えて、ポスターをデザインしたのかを知ることは、未来を考える上でも非常に意義のあることだと思われます。
オリンピックでは、人は言語も文化も国境も飛び越えて、スポーツで競い合います。こうした場では広がる人の輪をつなぐものこそが、優れたデザインなのではないでしょうか。ポスターに込められた熱意やそこから伝わる当時の様子を振り返りながら、また想像しながら、2020年に開催される東京オリンピックに思いを馳せてみてください。
なお、この展覧会は「博物館実習」の一環として京都工芸繊維大学の学生によって企画・実施されるものです。