数年間に渡り、私たちの研究室で行ってきた活動の一部を社会に向けて紹介することに致しました。
日本には、様々な理由で未完成となり、そのままつくることも捨てることもできなくなった道路やダム、高架橋、トンネル、擁壁、土手、掘削跡などがたくさんあります。あるいは、一定期間使用されたもののその後粗大ゴミとなっている場合もあるでしょう。
通常そこには多くの資金やエネルギーが投入されているため簡単に廃棄するわけにはいきません。また、廃棄しようとすると再び多大な費用がかかります。それらを無駄に捨てるのではなく、その物体としての資質を生かして利用できないだろうかと考えるのは自然なことではないでしょうか。私たちはこうした対象を発見し、完成させるのでも廃棄するのでもない第三の道を考えてみることにしました。
私たちはこの対象を「造形遺産」と呼ぶことにしました。
文化材として評価された歴史的建造物のようなものではなく、原則として対象そのものの文化的価値は十分低いもの、ただし、そのままでは無用の造形物ですが、その物性を生かして新しい意味や機能を与えれば、遺産と呼べるような価値が生まれてくるもの、という意味です。
建築の世界では、リノベーション、コンバージョンといった言葉がよく使われるようになりましたが、それの土木工作物・地形バージョンだと思っていただければいいかもしれません。建築設計、ランドスケープデザインのスキルを生かして、当初の目的にはとらわれずに有効活用するアイデアを提案しています。
主催:京都工芸繊維大学 長坂 角田 木下研究室
協賛:総合資格学院