今年は、戦後70年の節目の年にあたります。20世紀の二度にわたる世界大戦の時代、ポスターは人々を戦時体制へと誘導するメディアのひとつとして重要な役割を果たしました。
この特集展示では1930年代から1945年まで―満州事変を経て日中戦争・太平洋戦争へと突入していく十五年戦争期―の日本のプロパガンダ・ポスター約20点を展示いたします。併せて、アメリカで活躍した画家・ベン・シャーン(1898-1969)による第二次世界大戦期アメリカのプロパガンダ・ポスターおよび第一次世界大戦期の欧米のプロパガンダ・ポスターを展示いたします。
これらのポスターを通じて、過去の歴史を反省的に再考し平和への希求へとつなげるひとつの機会となればと思います。
第二次世界大戦でワルシャワの街が崩壊されたポーランドは、ソ連の支配下に置かれ、社会主義国となりました。そのため、広告や商業ポスターの必要性はなくなり、政治や社会的なプロパガンダポスターとともに、映画や演劇などを宣伝するための文化ポスターが多く作られました。政府は文化ポスターを政治とは関係ないものと考えて検閲を緩め、デザイナーたちは自由にポスターをデザインすることができました。また、選び抜かれた人だけがデザイナーとしての仕事に取り組んだために、芸術性の高いポスターが多く見られます。
1950年代から60年代初頭にかけて制作されたこれらのポスターは、海外からも高く評価され「ポーランド派」と呼ばれて親しまれました。当時のポーランドの人々のように、ポスターの前で立ち止まり、ポスターの持つ様々な魅力を楽しんでいただけると幸いです。