京都工芸繊維大学美術工芸資料館が若手作家の成長支援を目的に実施している「未来の途中」プロジェクトの3期生として、公募と推薦によって集った10名の作家たち。彼らは昨年度、「未来の途中のリズム-美術・ 工芸・デザインの新鋭10人」展(京都工芸繊維大学美術工芸資料館、2016年1月から2月)を開催しました。そして今年度、プロジェクト2年目のプログラムとして、京都にある15の大学附属ミュージアムのネットワークである「京都・大学ミュージアム連携」と連動し、京都造形芸術大学ARTZONEならびに京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAとタッグを組み、ゲスト作家として招聘したプロジェクト1期生と共に展覧会を実現することで、さらなる飛躍を目指します。
「新しい手段で制作せよ」。京都造形芸術大学ARTZONEでは、日本画の勢野五月葉、版画の河股由希と楠本孝美(プロジェクト1期生)、漆工芸の吉岡尚美、これまでそれぞれのジャンルの固有性に即したかたちで作品を制作してきた4名の出品作家たちに、こうしたインストラクションを課しました。新しいテーマ、新しいモティーフ、新しいコンセプト。次なるステップを目指す若手作家たちは、常に自身にとって「新しい」何かを模索し、日々実験や研鑽を重ねています。その中で本展が「手段」に着目するのは、それぞれの作家が制作の際に用いる「手段」 が、各作家の制作に対する考え方や振る舞いを規定していると考えるからです。
たとえば、丹念にデッサンを行ってから制作にのぞむ画家が、デッサンなしで絵を描くとき、どのような変化が起こるのでしょうか。あるいは版画家が支持体を変え、平面ではないものにイメージの転写を行うとき、 どのような作品ができあがるのでしょうか。
自らが慣れ親しんでいる作品を制作する際の「手立て」を一旦手放して、仮の手段である「方便」を使ってみること。そうすることで、それぞれの作家が無意識的に行っていた慣行を捉え返すこと。あるいは「方便」 を使ってもなお残る各作家の個性を明らかにすること。
本展での試みが、それぞれの作家の「未来の途中」に、さらなる展開を導くことを期待しています。
文化庁委託事業「平成28年度次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」