京都の文化遺産をテーマとした多文化共生教育プロジェクト

京都を知る

本プロジェクトでは、2005年度から京都市や地域の人々と連携し、京都の文化遺産である神社仏閣、文化遺産の発掘現場、伝統工芸の工房、裏千家今日庵など通常は入ることができない場所で、日本人学生と留学生がともに学ぶアクティブ・ラーニング型の授業科目「京の文化行政」「京の伝統工芸-技と美」「京の伝統工芸-知と美」「京の伝統工芸―知美技」「相対的日本文化論」を展開している。実際に天然の素材で、工芸品を作ったり、染色したりする体験や、茶道、華道を実習することで、日本文化への理解を深めるとともに、異文化を尊敬し理解しようとする態度を養う活動を行ってきました。 本プロジェクトの目的は、文化・芸術分野において、国内外で活躍できる人の育成をすることです。京都にはユネスコ世界遺産が17か所あります。世界遺産とは「現在を生きる世界中の人びとが過去から引継ぎ、未来へと伝えていかなければならない人類共通の遺産」であり、その意味を真から理解し、地域貢献から国際貢献へと、世界で活躍できる地球市民としての視点を涵養しています。2010年11月には、ユネスコ事務局長イリナ・ボコバ氏の視察の結果、高い評価を受け、ユネスコ世界遺産センター長フランチェスコ・バンダリン氏から正式な本プロジェクトを支援する証明を受けました。

※知美技 伝統工芸写真

異なる世界を体験する

本学には、主に造形・デザインを専攻する学生と、主に工学を専攻する学生が混在しています。そのなかで、30カ国、200名程度の留学生が常に学んでいます。異なるバックグラウンドの学生であっても、本学で学ぶ学生は古都京都の伝統的な文化に潜在的に興味をもっています。古都京都には、日本独特の文化を担ってきた伝統工芸の工房や伝統芸能の拠点が多くあります。このユニークな土壌を生かし、様々な国籍と専攻を異にする学生で構成する少人数のグループを多数作り、伝統工芸の工房でのものづくりを経て、異文化、異分野の融合が体験できます。日本語がまだ使えない学生でも教師や日本人学生の助けにより、言語の壁を越えて学べるようにデザインされています。また、日本人学生にとっては留学をしなくても、外国人留学生と共に学び、コミュニケーションの機会を増やすことができます。 その他、授業以外でも国際交流が行える場として図書館にグローバル・コモンズを設置しました。ここでは、コンシェルジュが常駐していて、多言語・多文化の活動について支援しています。相手を見つけお互いの言語や文化を教え合う「ランゲージ・エクスチェンジ」、様々な国の映画を短時間に分けて上映する「ちょっとシネマ」、様々な言語スタッフと言語や文化について、気兼ねなく話せる「Mカフェ」などの活動があります。

※黒谷和紙見学

地球規模でつながる

これまで、イギリス(2009年)、韓国(2010年)、フランス(2010年)、イタリア(2011年)、シンガポール(2014年)などの国際交流協定大学で、シンポジウム、ワークショップ、展覧会を行ってきました。今後も、伝統工芸をはじめ、有形・無形文化遺産が非常に豊富である京都に京都工芸繊維大学が位置するという地の利を活かし、更に多くの訪問先を増やすのみならず、能や三味線、尺八などの伝統芸能や、茶道・華道・香道などの現代の日常生活では経験できない日本文化を京都の各地で体験し、京都全体を学びの場へと変えていくことで、多面的な日本文化への広く深い知識の涵養を目指し、留学生と日本人学生が地球規模で繋がる活動へと発展させていきます。 さらに、留学生と日本人学生の多文化共生の資質を育むために、コミュニティースペースなどの学習環境もより充実していきたいと思っています。京都の地で多言語・多文化活動を地道に行いながら、学生一人ひとりが異なる文化や言語の出会いを楽しみ、将来の人生に活かしていく礎を築いていく活動を目指しています。

※ユネスコ事務局長訪問