本学機械工学系 山川勝史准教授は、シャープ株式会社と共同研究を行い、空気清浄機搭載エアコン*1のウイルス飛沫粒子*2の捕集における有効性を確認しました。
山川准教授は流体力学が専門であり、豚インフルエンザの流行(2009年)をきっかけに流体力学に基づいたウイルスの動きをシミュレーションする研究を行っています(図1)。
独自に開発した飛沫シミュレーションソフトは、ウイルスの特性(飛沫水分の蒸発、飛沫同士の衝突、不活性化時間、室内の温湿度環境、唾液中のタンパク質の影響等)を取り入れた高精度な飛沫計算が可能であり、ウイルス飛沫粒子が飛散する瞬間だけなく、その後の状況を15分以上に渡りシミュレーションすることに世界で初めて成功しました(図2)。
今回の共同研究は、十分な換気ができない室内などの空間において、エアコンの気流がウイルス飛沫粒子にどのような影響を与えるかについて関心が高まっていることを受け、上記ソフトを用い、空気清浄機搭載エアコンや空気清浄機の使用時における飛沫粒子の解析を行いました。
シャープ株式会社が、エアコンおよび空気清浄機の気流の速度や方向を計算し、実使用を想定した居住空間内での気流の動きを解析(図3左側)しました。その解析データに基づき、山川准教授がウイルス飛沫粒子を放出した際の動き(機器での捕集、周囲への付着)を解析(図3右側)したところ、空気清浄機搭載エアコンや空気清浄機を使用した場合、空間内のウイルス飛沫を捕集し、浮遊するウイルス飛沫粒子の減少に役立つことが確認されました。
本結果は、あくまでシミュレーション上の検証であり、実使用環境とは異なりますが、山川准教授は、「ウイルス飛沫粒子は空気中を漂うため、吸い込んでしまう恐れがあります。そのため、その浮遊ウイルスを捕集するか室外へ排出させることが重要となります。特にエアコンを使用する夏や冬は換気頻度が下がるため、換気以外の対策が必要になります。今回、室内におけるウイルス飛沫粒子の振る舞いをシミュレーションし、窓開け換気が困難な環境下においても、浮遊ウイルスを減らす方法が見えてきたと考えられます。」と語っています。
【用語解説】
*1)空気清浄機搭載エアコン:日本電機工業会の定める空気清浄機の基準(JEM1467)に準拠した家庭用ルームエアコン。
*2)ウイルス飛沫粒子:咳やくしゃみ、声を出すことなどで発生する飛沫のほか、これらの飛沫のうち特に小さいものであるエアロゾルなど。今回の検証では一般的なウイルスを想定しており、特定のウイルスを想定したものではありません。