応用生物学系 野村真 教授らの研究グループは、ネアンデルタール人などの絶滅した人類に特徴的なタンパク質の変異 (GLI3R1537C)が哺乳類の解剖学的な多様性に寄与することを発見しました。
アフリカで誕生した私たちヒトの祖先は、全世界に拡散する過程でさまざまな人類集団と交雑したことがわかっています。昨年のノーベル生理学・医学賞を受賞したスバンテ・ペーボ博士らの研究によって、絶滅したネアンデルタール人やデニソワ人のゲノムの一部が現生人類のゲノムの中にも存在していることが明らかとなっています。本研究では、器官発生に重要な役割を持つタンパク質であるGLI3(グリ・スリー)に注目し、化石人類が持っていたタンパク質変異がさまざまな遺伝子の活性状態や骨格に影響を与えることを発見しました。この成果により、ヒトの特徴をもたらすゲノムの進化や疾患の原因となるタンパク質の変異についての理解が深まり、ゲノム医学や進化医学の推進に貢献することが期待されます。
本研究は科研費「基盤研究(B)(課題番号21H02591)」、小柳財団、大隅基礎科学創成財団、大学女性協会の支援により実施されました。
図 GLI3R1540Cマウスの骨格の変化。左側は野生型マウス。Gli3にアミノ酸変異を導入したマウス(右側)では、頭蓋の肥大化(上段、矢印)や、肋骨の増加(下段、矢頭。GLI3R1540CではT14が追加されている)、腰椎の減少 (野生型はL6まで形成されるが、GLI3R1540CではL5までしか形成されていない)などが観察された。
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本論文は2023年11月2日午前7時(世界標準時間)に国際学術誌「Frontiers in Cell and Developmental Biology」にオンライン(外部リンク)掲載されました。