電気電子工学系 山下兼一 教授らの研究グループは、光/物質ハイブリッド状態における量子重ね合わせを新たに実現しました

 電気電子工学系 山下兼一 教授らの研究グループは、光と物質のハイブリッドな性質を持つ量子状態として知られるポラリトン状態が、全無機鉛ハライドペロブスカイトと呼ばれる特殊な半導体材料の使用により、量子的な重ね合わせ状態を形成可能であることを示しました。ポラリトン状態は、ある密度以上で生成されると、多数のポラリトンが協同してエネルギー凝縮(ポラリトン凝縮)を引き起こし、巨視的に全体で一つの量子としての振る舞いを示します。全無機鉛ハライドペロブスカイトでは、このポラリトン凝縮状態が室温で形成可能となります。今回の研究では、この室温ポラリトン凝縮の直交する二つの偏光状態間で量子的な重ね合わせ状態が形成できることを実験的に見出しました。本発見は、量子計算をはじめとした様々な量子技術を室温で駆動するための基礎物理となり得るものであり、デバイスの低消費電力化技術の発展への寄与も期待できます。

光の波長程度(1マイクロメートル以下)の微小な光共振器中においては光と物質の相互作用が強められ、ポラリトン状態を形成します(左上図)。今回の研究では、この微小共振器中に全無機ペロブスカイト結晶を配置し、直交する二つの偏光状態の光波と相互作用させてポラリトン状態を形成しました(左下図)。エネルギー凝縮したXおよびY方向に偏光したポラリトン状態はそのエネルギーが近いため、重ね合わせ状態を形成します(右図上段)。右図下段はその観測結果の一例です。

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本研究成果は2023年12月20日の国際学術誌「Communications Materials」オンライン版(外部リンク)に掲載されました。