作家であることの理由が作品を作っていることにあるとすれば、展覧会期間中、すなわち作品を作っていない間の作家は、作家であることをやめていると言えるかもしれません。むろん、その一時的な休止は、作家活動を続けていくうえで、必要不可欠なものです。使い慣れたアトリエから展示空間に自作を移し、客観的に眺め、鑑賞者からの批評を受ける。そのうえで自身の課題や問題意識を再設定し、展覧会が終わったら、再び歩みを進める。展覧会はこのようにして、日々の制作活動や長く続く作家活動にリズムを形作っていきます。
さて本展は、京都工芸繊維大学美術工芸資料館が若手作家の成長支援を目的に実施している「未来の途中」プロジェクトの3期生として、公募と推薦によって選ばれた若手作家10名の作品を展覧するものです。出品作家たちが手がける作品ジャンルは、絵画、彫刻、映像、染織、陶芸、漆工と多様であり、本展がなければ、彼らが同じ展覧会に出品することはなかったかもしれません。その意味で本展は、若手作家たちにとって、制作活動の成果を発表する機会であることはもちろん、異なったジャンルで活動する同世代の作家たちの作品と自作とを比較し、自身の取り扱うジャンルの固有性を見つめ直す機会となるでしょう。そしてさらに、発表した作品に対して、鑑賞者のみなさまから批評を受ける機会でもあります。
自身の望む未来に向かって歩みゆく10名の若手作家たち。彼らの活動は、この展覧会が終わったあとも長く続いていくことでしょう。本展は、そうした彼らの活動のこれまでの成果を確認するとともに、その成果を鑑賞者や他の出品作家とともに見つめることで、若手作家たちの作家活動に新たなリズムをもたらすことを目指しています。「未来の途中」にいる 10 名の若手作家たちの瑞々しい表現を、鋭い眼差しをもって、存分にお楽しみください。
*本展覧会は、文化庁平成27年度助成「大学美術館を活用した美術工芸分野新人アーティスト育成プロジェクト」の一環として開催されるものです。
出品作家がゲストとともに、出品作品やこれまでの作品について意見交換します。