近代京都の陶芸界は、明治初期には輸出用製品が好評を博したために好況が続いたが、その勢いも明治20年代になるとかげりを見せるようになる。そこで、不振からの脱却を目指して、陶磁器試験場の設置などの回復策が試みられ、同時に各窯元でもさまざまな模索をおこなった。この明治時代後半に、京都の陶芸界を支えたひとりが住友春翠(1864-1926)であった。
春翠は、住友家15代当主として産業界に大きな功績を残す一方で、美術愛好家、パトロンとしても知られている。明治36年(1903)に大阪で開催された第5回内国勧業博覧会では、協賛会長として尽力するとともに、博覧会見物に訪れた皇太子・同妃、徳川慶喜などを茶臼山別邸でもてなすなど、社交の中心として活躍した。本展では、泉屋博古館分館が所蔵する春翠が収集した近代京都の陶磁器作品のうち三代清風与平、七代錦光山宗兵衛、初代宮川香山の作品を中心に36件を集め展示する。
京都工芸繊維大学の前身である京都高等工芸学校の初代校長中澤岩太や初期の教官たちは、彼ら陶芸家と交流して新しい時代に対応する陶芸のあり方を模索していた。この展覧会では、京都高等工芸学校とかかわりの深い陶磁器作品を通して、明治後期の京都の陶芸界の縮図を示してみたい。
本展の連携企画展が下記のとおり開催されます。浅井忠の《武士山狩図》をはじめ、鹿子木孟郎、霜鳥之彦など京都高等工芸学校の教員たちの絵画作品、彼らが〝教材〟に選んだ欧米の工芸品のほか、泉屋博古館所蔵の、浅井、鹿子木ら洋画家を支援した住友家ゆかりの品々を展示し、近代関西の美術工芸と美術教育、生活文化に浅井忠らが何をもたらしたのかを再考します。あわせてご覧下さい。
《 特別展「浅井忠の京都遺産―京都工芸繊維大学 美術工芸コレクション」 》