オープンキャンパス2023研究室紹介(電子システム工学課程)

電子システム工学課程の研究室の概要を紹介します。
もっと詳しく知りたい方は、電子システム工学課程のホームページもご覧ください。

集積システム研究分野  (小林 和淑、髙井 伸和、廣木 彰、新谷 道広、古田 潤)
【研究テーマ】量子コンピュータ/集積システム・パワーエレクトロニクスのモデル化/信頼性評価/AIを使ったアナログ回路設計の自動化/トランジスタのモデル化
【キーワード】集積回路/パワーエレクトロニクス/シミュレーション/アナログ回路/ソフトエラー/経年劣化/AI/設計自動化

 半導体集積回路は、微細化・高集積化を続け、電子機器の低電力化、小型軽量化・高性能化を支えています。スマホや自動運転も集積回路の進化のおかげです。その基本構成要素であるMOSトランジスタは、大きさが数nmまで微細化されています。
 本研究分野では、集積回路、パワーエレクトロニクスに関する研究を行っています。具体的には、ソフトエラー、BTI(Bias Temperature Instability)、RTN(Random Telegraph Noise)などの信頼性問題、AIを使ったアナログ回路設計の自動化、パワートランジスタのゲートドライバ、GaN集積回路、微細トランジスタのデバイスシミュレーションモデル、パワートランジスタの回路シミュレーションモデルなどを行っています。
 なお、小林教授、古田助教の研究テーマは2020年7月に本学の注目研究として紹介されました。

高周波通信工学研究分野  (島﨑 仁司)
【研究テーマ】ウェアラブルデバイス用小型/薄型アンテナの開発
【キーワード】無線工学/高周波回路/アンテナ/電波伝搬/導電布

 現代の情報通信社会において無線は欠かせないものとなっています。本研究室では「電磁現象」、特に電磁波の放射・伝搬を対象として、その情報通信分野への応用技術について研究を進めています。現在の具体的なテーマは次のようなものです。
1)身に着ける、あるいは着ることのできるウェアラブルデバイスに無線通信機能は必須のものですが、その小型・薄型アンテナ及び高周波回路の研究、特に導電性をもつ織物を使った回路
2)スマート農業の基盤となる農場用センサーネットワークへの応用展開に向けたサブGHz帯の無線通信技術、特に植生地における電波伝搬の調査・解析
などを主テーマにしています。

先進電磁波動工学研究分野  (上田 哲也、田村 安彦、黒澤 裕之)
【研究テーマ】マイクロ波帯の電磁メタマテリアルと無線通信・電力伝送応用
【キーワード】電磁メタマテリアル/アンテナ/ランダム媒質

 本研究室では、メタマテリアルと呼ばれる特異な電磁波伝搬を可能とする人工媒質、構造体とその応用に関する研究を行っています。これまでに、表と裏で屈折率がそれぞれ正及び負の値となる非相反メタマテリアル、誘電体による人工磁性体、カイラルメタマテリアル、低姿勢アンテナなどを提案しており、今後も新奇電磁気現象の発現、新機能デバイスの創出を目指し、さらに無線通信・電力伝送への応用を図っていきます。
 その他、電磁波・光等によるイメージング、リモートセンシングや非破壊検査の基礎研究を目的として、不規則表面からの波動散乱やランダム媒質中の波動伝搬の理論解析を、見本過程と統計量を統一的に扱える確率汎関数法により行っています。

光通信システム研究分野  (大柴 小枝子)
【研究テーマ】光通信と無線通信技術の融合による次世代無線通信システムの研究
【キーワード】光無線通信/ユニバーサルデザイン/ユーザ通信品質制御

 2020年には実用化される「5G」通信、AIやIoTの普及に伴い、超高速、超大容量の無線通信に期待が高まっています。一方で、光信号は広い周波数帯域を持つことから、数テラビットの高速通信を実現することが可能です。
 本研究室では、光通信と無線通信技術を融合させることで、次世代の高速無線通信を実現させ、より便利な社会を目指します。また、電波の帯域制限を受けず、信号機などの既存の光源を使った光無線通信により、ユニバーサルで、ヒューマンセントリックなユーザの体感品質を満足させる通信システムの研究を行っています。

光エレクトロニクス研究分野  (山下 兼一、髙橋 駿)  ※山下 兼一教授の紹介動画はこちら
【研究テーマ】有機系材料やナノ構造を用いた高機能光電子デバイスの開発
【キーワード】有機光電子デバイス/フォトニックナノ構造/太陽電池/光スピン

 光エレクトロニクスデバイス技術の発展はシステムの高機能化や低消費電力化に不可欠です。本研究室では、新しい機能性材料やナノテクノロジーを取り入れた高機能光電子デバイス開発を行っており、将来のオプトエレクトロニクス産業を見据えた研究に取り組んでいます。
 具体的には、有機系材料を媒体とした発光素子や太陽電池の開発や、ナノフォトニック構造による小型・低消費電力の新機能光波制御デバイスの研究を行っています。
 なお、山下教授の研究テーマは2023年2月に本学の注目研究として紹介されました。

光エンジニアリング/集積フォトニクス研究分野  (裏 升吾、井上 純一)
【研究テーマ】放射/導波モード回折結合を基盤とした集積光デバイス工学
【キーワード】集積光学/回折光学/光デバイス工学/光配線/光センサ

 将来の携帯型スーパーコンピュータ実現のための電子技術と光技術の融合を目指しています。具体的には超高速電子回路プロセッサ間の大容量信号接続を光配線で構成する要素技術を研究開発しています。そのための新規の光学素子やデバイスの提案、設計、作製プロセスの開発、基本動作の実証などを実施しています。産業技術総合研究所と共同研究を推進し、主要関連企業とも将来像について議論検討しています。
 また、光波制御素子・デバイスの研究開発も展開しています。具体的には半導体レーザの発振制御やセンサ応用、高効率回折光学素子の量産化に関して、新規素子やシステムの考案、作製技術開発などを実施しています。

光エンジニアリング/画像フォトニクス研究分野  (粟辻 安浩)  ※「光エンジニアリング研究分野」の紹介動画はこちら
【研究テーマ】3次元映像技術/システム並びに超高速映像技術/システム
【キーワード】光工学/画像工学/光学イメージング/ホログラフィ/3次元画像

 人間は外界からの情報のうち90%以上を視覚から画像情報として取り込んでいると言われているくらい、画像は有益な情報を与えてくれています。「百聞は一見にしかず」は端的にそれを表しています。近年、2次元画像の高精細化、動画像伝送など画像に対する高性能化・高機能化が行われており、画像に対する要求はますます高まる一方で、逆行することはありません。
 本研究グループは光の物理的特長を活用することで、これまでの画像装置には無い3次元画像表示、3次元動画像計測、超高速画像記録と観察など新規画像技術やシステムの研究を行っています。また、これらの画像技術やシステムにおける新規光学素子や光情報処理技術の研究も行っています。
 なお、粟辻教授の研究テーマは2020年5月に本学の注目研究として紹介されました。

光エンジニアリング/先進センシング工学研究分野  (北村 恭子)  ※北村 恭子准教授の紹介動画はこちら
【研究テーマ】先進センシング応用に向けたレーザ光源の開発
【キーワード】光量子電子工学/特異点光学/フォトニック結晶

 近年、バイオセンサ、車載用センサなどのセンシング分野において、様々な光の利用が進んでいます。バイオセンサにおいては、レーザ光をタンパク質などの微小な生体物質に照射し、蛍光や散乱などから、情報を検出しています。車載用センサにおいては、レーザ光を前方の広範囲に照射し、衝突可能性のある物体からの反射より情報を検出する技術が開発されています。
 本研究室では、このような分野の高感度・高精度・小型・高速化に、光源開発の立場から貢献することを目指しています。特に、光の有する強度や偏光・位相と言った物理量を自在に制御できる半導体レーザの開発を行っています。
 なお、北村准教授の研究テーマは2022年8月に本学の注目研究として紹介されました。

電子デバイス工学研究分野  (野田 実、WERNER CARL FREDERIK)
【研究テーマ】知能性ナノ材料特性を高効率に発現利用するIoTエッジデバイス
【キーワード】IoTエッジデバイス/知能性ナノ材料/ニューロンシナプス素子/センサ/不揮発性メモリ/バイオエレクトロニクス

 今後IoT技術でますます重要になるIoTエッジデバイスとして、知能性ナノ材料特性の有効利用・半導体集積技術・MEMS/NEMS(微小電気機械システム)技術を組合せた、センサ技術指向の電子デバイスの創成を目指しています。
 機能性・知能性の宝庫である酸化物材料を用いた電子デバイスとして、AI発展を大きく推進するニューロンシナプス素子、新たな省エネ超集積化不揮発性メモリ(強誘電体型、抵抗変化型)、バイオエレクトロニクスにおいて重要な人工生体細胞モデル分子を用いた、バイオマーカーなど重要ターゲット分子の新しい検出原理の開拓に基づくバイオセンサ、さらにはバイオ化学イメージセンサの研究を主に行っています。

電子デバイス工学研究分野  (山下 馨)
【研究テーマ】発電からセンサ・システムまで:圧電MEMSデバイス・システム
【キーワード】圧電/MEMS/センサ/ハーベスタ/センシングシステム

 電気エネルギーと機械エネルギーを物質内部で直接変換できる、圧電体と呼ばれる材料を応用したマイクロ電子デバイス(圧電MEMSデバイス)の研究を行っています。この研究を通して、IoTや自動運転支援、次世代ロボットを支える技術や、人間を超える視覚・聴覚・触覚を実現するセンサなど、これまでにない機能を持つデバイスの創成を目指して、材料からデバイスの設計と作製、さらにシステム化まで進めています。
 本研究室では理論から技術習得までトータルに学生をサポートしています。学生は自分のアイデアを形にする技術を身に付けて、独自の発想で新たなデバイス・システムを創り出しています。

半導体工学研究分野  (吉本 昌広、西中 浩之、鐘ケ江 一孝)  ※西中 浩之准教授の紹介動画はこちら
【研究テーマ】次世代を担う半導体材料/デバイスの創製
【キーワード】次世代通信用レーザー/半金属半導体/酸化物半導体/パワーデバイス

 本研究室では、半導体デバイスや、そのもととなる半導体材料に関する教育・研究を行っています。具体的には、次のようなテーマを進めています。
1)発信波長が温度に依存しない通信用新型レーザに向けた新しい半導体半金属合金の創製
2)超ワイドバンドギャップ酸化物半導体による超省エネパワーデバイス
3)細胞外に電子を伝達する微生物と光半導体を融合した新しい人工光合成システムなど
学内外の研究グループと連携しながら、新しい半導体材料や機能などを提案するシーズ的な研究と、産業界が直面する具体的な問題の解決をはかるニーズ的な研究の両方を同一研究室内で進めることで、大学院生がより広い視野を醸成することを目指しています。
 なお、西中准教授の研究テーマは2020年4月に本学の注目研究として紹介されました。

機能性材料工学研究分野  (今田 早紀)
【研究テーマ】窒化物のバンド構造エンジニアリングによる新光電変換材料開発
【キーワード】光電変換/人工光合成/窒化物半導体/X線吸収・発光スペクトル分析

 太陽光と水、二酸化炭素を原料として、水素燃料やアルコール燃料などを合成する人工光合成技術は、地球温暖化問題を解決する技術として実用化が急がれています。本研究室では、アルミニウム、窒素と、チタニウム、クロム、鉄などの3d遷移金属元素という、ありふれた元素だけからなる、紫外から可視、赤外にわたる太陽光スペクトル全体を高い効率で吸収できる新物質を創成し、実用的な高効率人工光合成デバイスに応用する研究を行っています。

電子物性工学研究分野  (髙橋 和生)
【研究テーマ】プラズマによる半導体プロセス、生体応用技術、微小重力環境科学
【キーワード】プラズマ/微粒子プラズマ/半導体プロセス/医療・農水産業応用/微小重力環境科学

 「ものの性質は電子の振る舞いで決められる」が信念です。電子のエネルギーをうまく活用できるプラズマを道具とし、物質や生体中の電子と相互に作用させることにより新しいもの(材料)、こと(プロセス)、空間(反応場)の構築を目指します。
 扱う分野は半導体プロセス、宇宙、医療、農水産業と多岐に渡ります。次世代の集積回路プロセスのためのエッチング及び成膜技術、重力の真理に迫りながら様々な可能性を示す微粒子プラズマ、微生物制御と細胞操作から迫るプラズマ医療、そして自然との共存とより豊かな永続社会を目指す放電利用農水産技術の開発に取り組み、獲得した知識を明日の人へ、また未来の地球へと捧げられるよう尽力します。
 なお、髙橋准教授の研究テーマは2022年2月に本学の注目研究として紹介されました。

プラズマ基礎工学研究分野  (比村 治彦、三瓶 明希夫、河内 裕一)
【研究テーマ】先進核融合エネルギー、先進プラズマ物理、新奇プラズマナノプロセスに関する研究/複雑プラズマダイナミクスの解明、応用、および先進計測技術の開発
【キーワード】プラズマ科学/核融合学/先進プラズマプロセス/ナノテクノロジー/プラズマ応用/プラズマ/乱流/電磁流体/データ駆動科学/電磁気計測

 本研究室では、プラズマ科学をベースとした先進核融合エネルギー源の開発に関する基礎研究、既存のプラズマ理工学を新奇な電子デバイスの製造プロセスや化学・生物学分野へ応用することでグリーンイノベーションを実現するという、他に例を見ない最先端の研究に次々と着手しています。独自のアイデアを検証する実験が主ですが、シミュレーションも行い、国内外の研究機関や企業と連携して様々なテーマで共同研究も行っています。
 博士前期課程では、プラズマ理工学だけでなく広範なエレクトロニクス最先端事項を学びながら、個別の研究テーマの遂行を通じて、皆さんが将来必要とする研究開発の進め方を習得できるプログラムを準備しています。

ナノ構造科学研究分野  (一色 俊之、西尾 弘司、蓮池 紀幸)
【研究テーマ】電子材料・デバイスのナノ構造解析と結晶欠陥・応力評価
【キーワード】ナノ構造解析/結晶欠陥評価/電子顕微鏡法/ラマン分光法

 多種多様な物質は原子の種類や配列の違いによって形成され、それぞれ異なる性質(=物性)を示します。物質の持つ性質を活用し我々の社会に有用な「材料」を開発するためには、ナノメートルのスケールで原子の配列を見極め制御することが重要で、その技術は今日のナノテクノロジーの根幹となっています。
 本研究室では電子ビームやレーザー光を用いた物質のナノ構造解析や結晶欠陥・応力評価を研究しています。電子顕微鏡法や顕微ラマン分光法でのナノ評価技術の開発を行い、その成果は半導体・金属・セラミックス・高分子などの新素材やデバイスの開発と応用に生かされています。学生諸君には講義やゼミ・特別研究を通じてナノ構造解析と分光分析の基本を教授しています。

ナノ構造科学研究分野