オープンキャンパス2023研究室紹介(デザイン・建築学課程)

デザイン・建築学課程の研究室の概要を紹介します。
もっと詳しく知りたい方は、デザイン・建築学課程のホームページもご覧ください。

情報デザイン研究室  (櫛 勝彦、畔柳 加奈子)
【研究テーマ】ボトムアップ型デザインアプローチの手法及びその応用研究
【キーワード】プロダクトデザイン/インタラクションデザイン/デザイン方法論

 情報技術が進化した今日、デザインの対象は、実体をともなうモノだけでなく、例えば、ネットワーク上のサービスにまで拡がっており、超高齢化・成熟社会とも相まって、人・社会のニーズがますます見えにくくなっています。しかし、社会状況の変化にも関わらず、ニーズの発見とそれに対する創造的解決の生成が、デザイン行為であることに変わりはありません。
 研究室では、複雑化する社会におけるデザイン方法論を、情報収集と分析における論理性と、直観・体験を基とした感覚的アプローチを組み合わせることによって構築しようとしています。

現代デザイン研究室  (水野 大二郎)  ※水野 大二郎教授の紹介動画はこちら
【研究テーマ】持続可能な未来への移行を実現するためのデザイン理論、手法、戦略に関する実践的研究
【キーワード】デザインリサーチ/スペキュラティヴデザイン/サーキュラーデザイン/プルーリバース/サステナブルファッション

 本研究室では、主に立体物のデザインを対象として社会とデザインの関係を研究しています。立体物に対する社会的な課題やニーズはどのように生まれるのか。デザインという行為によってそれらはどのように解決され、満たされるのか。過去あるいは現代の事例を分析するとともに、製造や流通の現場に実践的に関わることによって、社会的な課題やニーズに応えるための新たなデザイン手法の開発を進めています。

視覚デザイン研究室  (中野 仁人)
【研究テーマ】グラフィックデザインの展開、伝統工芸と伝統文化、メディカルインフォメーションデザイン
【キーワード】タイポグラフィ/写真/映像/イラストレーション/印刷/エディトリアル/伝統工芸

 現代社会における視覚デザインの役割を調査、分析し、その社会的効果を理論的に検証すると同時に、デザイン活動に如何に反映させ、有効なデザインの実践をおこなっていくかを研究しています。タイポグラフィ、イラストレーション、写真などをベースにして、広告、エディトリアル、商品開発やブランディングなども含みます。
 また、京都の伝統をキーワードにしたデザインの実践にも積極的に取り組み、商品開発とともに展覧会等も随時開催しています。
 <写真:中野ゼミ展 ポスター&フォント デザイン>

伝達デザイン研究室  (西村 雅信)
【研究テーマ】コミュニケーションデザインの展開、構築とその応用
【キーワード】ヴィジュアルデザイン/パッケージデザイン/インフォグラフィックス/新製品開発デザイン/V.I/C.I

「生活をつくるグラフィックデザイン」
 「生活」を「環境・モノ・情報」でとらえた上で、視覚デザインの分野から平面、立体を問わず、広く研究・活動を行っています。特に商品開発デザイン、パッケージデザイン、ブランド構築デザインを専門とし、「価値の伝達」を核に、タイポグラフィ、図像処理、印刷技術、カラー&マテリアル、成形技術、インフォメーション&サインシステムデザイン等を駆使し、検討、実践を行い、今日的視覚デザインの営為の本質を解明し、世に問いかけます。

生活環境デザイン研究室  (多田羅 景太)
【研究テーマ】デザインを通じた本質的に豊かな日常生活の探求
【キーワード】インテリアプロダクトデザイン/ファニチャーデザイン/インテリアデザイン/北欧デザイン

 本研究室では生活環境を形成する家具や照明器具などの物理的エレメント、そしてそれら物理的要素によって構成される空間的エレメント、さらにはその空間の中で営まれる日常生活を対象に幅広くデザイン・研究室活動を行っています。研究室で活動する大学生の研究テーマも多岐に亘りますが、日常の様々な問題に対する最適解を共に学びながら模索するスタイルでゼミ活動を行っています。
 また研究室担当教員のより専門的な活動として、北欧のデザインやライフスタイルを対象にした研究を行っています。
 <写真:椅子の実測演習>

製品デザイン計画研究室  (木谷 庸二)
【研究テーマ】デザインマネジメントの視点を通した製品デザイン計画
【キーワード】デザインマネジメント/製品デザイン計画/デザイン論/ブランディング/ネットワーク

 本研究室では、デザインの拡がりを研究しています。我々の生活環境を広い視点で捉え、バランスの取れた価値の高い製品を企画・構想し、その実現プロセスを上手くマネジメントしていくことを、デザインを通して研究しています。デザインの計画・企画では、景観や企業のイメージなどをブランドやデザインとして捉えることも非常に重要です。
 そしてこれらの計画を市場にどう理解させるか、人・モノ・金・情報の現実的な検討を重ねながら、どのように経済活動として成立するかを研究し、実際のプロジェクトを通して実践しています。
 <写真:研究室プロジェクト打合せ風景>

色彩・感性工学研究室  (北口 紗織)
【研究テーマ】モノ・コトと人のつながり -感覚・感性の数量化-
【キーワード】色彩工学/感性工学/繊維科学

 私たちの身の回りには、工業的に作られたモノがいっぱいあります。色彩・感性工学研究室では、このモノの特性を評価する研究を行っています。モノの特性評価には、いろいろな評価がありますが、本研究分野では、モノの物理的・化学的評価と人間側から見た感覚的な評価の橋渡しを行っており、特に、「色彩」の評価を中心に国内外のいくつかの研究機関と共同で研究しています。
 具体的には、色彩から受ける印象の数量化と国際比較、カラーマーケティング、グローバルカラーコミュニケーション、色彩の文化的側面の客観的解析、繊維製品の色彩評価などを研究しています。
 <写真:測色器とカラーサンプル>

情報環境工学研究室  (三村 充)
【研究テーマ】ICT/IoT技術を用いたQOLの向上・知的活動支援
【キーワード】IoT/ICT/ユーザインターフェース/コミュニケーション/発想支援

 スマートフォンをはじめとする携帯型スマートデバイスの普及やセンシング技術の発展、IoT技術によって、人々は常に多くの情報に触れると共にその行動・活動はデータとして収集されています。その規模や精度はかつての比でなく、人々の生活を取り巻く情報環境は近年大きな変化を迎えています。これらのデータは人々の行動や振る舞いを分析・予測するために使われ、マーケティングや技術開発を通じて人々の生活にフィードバックされます。
 本研究室では、このようなデータをQOLの向上や生産性の向上に生かすため、コミュニケーション支援や発想支援、学習支援など、人々の生活・活動を支援するための検討を行っています。

環境デザイン経営研究室  (松本 裕司)
【研究テーマ】ワークプレイスデザイン、Computational design and design tools
【キーワード】ワークプレイス/Computational design/Shape grammars

 ワークプレイスを中心とした空間に関する研究を行っています。ワークプレイスは、〈ワークスタイル〉、〈ワークツール〉、〈ワークスペース〉の3つで構成され、これらの要素を総合的に調和させる必要があります。我々は、これらの3つの視点から、調査、デザイン、評行、評価のプロセスを繰り返すことで、実際に役に立つワークプレイスをデザインする手法の構築を目指しています。
 また、ワークプレイスにかぎらず、価値の多様化に伴って、解くべき課題がますます複雑化、高度化しています。そうした現代のプレイスデザインへのアプローチとして、コンピューテーショナルデザイン(IT技術を活用したデザインの手法)についても研究しています。

製品産業経営学研究室  (勝本 雅和)
【研究テーマ】イノベーションの企業経営に及ぼす影響や活用法についての研究
【キーワード】イノベーション/MOT/知的財産権

 本研究室は、急速に変化する社会・経済環境の重要な動因の1つであるイノベーションに焦点をあて、その企業経営に及ぼす影響や活用法について研究を行います。領域としては、マクロレベルの技術経済や科学技術政策から、ミクロレベルの技術経営(Management of Technology[MOT])までを対象とします。
 具体的には、技術経済領域において情報技術の活用度の国際比較、政府プロジェクトの効率的な選定法など、また技術経営領域において、企業の技術戦略、技術系ベンチャー企業の起業戦略などの企業戦略、知的資産経営に地域資源も含め企業経営だけでなく地域経営や、技術をはじめとした知的財産の金銭的価値評価手法を研究します。

メタデザイン研究室  (水内 智英)
【研究テーマ】複雑な社会におけるデザインの再定義、協働による社会移行
【キーワード】ソーシャルイノベーション/コ・デザイン/デザインフューチャーズ

 現代の地球環境や社会環境、精神環境が抱える、複雑化し単純な解決法が見出せない社会課題に対し、デザインの意味や役割はどうあるべきか、実践と理論を往復することで追求しています。とりわけ、多様な背景を抱える人々、モノや生物を含む広義な主体との関係のうちに行われる協働デザイン/ソーシャルイノベーションの可能性を探求しています。平面・立体の区別なく包括的な観点から行うデザインプロジェクトを通じて、オルタナティブな未来像を示し、批評的に現代デザインのあり様を捉えなおします。
 <写真:“Food Scope – Rediscover tastes of futures”@ Forum Design Paris 2018>

メタデザイン研究室

デザインフィロソフィー研究室  (照井 亮)
【研究テーマ】Democratisation of design process – デザインプロセスの民主化
【キーワード】Narrative Environments/Design Philosophy/Visual Actantiality/Visual Ethnography/Participatory Design

 都市再生の文脈における空間正義(Spatial Justice)と市民とのエンゲージメントによるデザイン実践の民主化に焦点を当てています。Narrative environmentsのデザインの原理から派生した参加型デザインの方法論であるActantialityにより、都市環境を人間や非人間の行為者が相互に関連し、そのすべてが主体性を持つダイナミックなネットワークとして理解することを可能にするための実践とセオリーを展開しています。2006年以降、イギリス・ロンドン、エジプト・アレクサンドリア、日本・北海道にて、幅広い層の市民や参加者が、愛着、歴史、日常的な慣習、地理的条件、存在する力関係、そしてそれらが表現される物語と意識という観点から、地域のアイデンテティを再定義することからはじまり、ビジュアルな手法を用いて行為性の意図を共有し、パブリック・エンゲージメントの強化を目指してきました。
 この方法論ではデザイナーの社会的役割における潜在的に矛盾した価値についても議論しています。今日のデザイナーは複雑化する社会課題と向き合う必要があり、様々なステークホルダー間を取り持つメディエイター的な役割を担っている一方で、環境・社会・倫理・政治的な視点を無視することは難しく、デザイナーは否応なしにアクティビスト的なスタンスと向き合う必要があるのではないかと考えます。

現代芸術論研究室  (平芳 幸浩)
【研究テーマ】現代の芸術実践を社会的文脈(対話・衝突・変容)において検討する
【キーワード】現代アート/受容/キュレーション

 既成の価値観を問い直し新しい価値を創造する「現代芸術」について、多角的なアプローチで研究を行います。個人の表現と解されがちな芸術創造の背景には、表現者自身も気づいていない歴史的・地理的・文化的・政治的文脈が存在しています。いったん生成した表現は解釈を生み、解釈という言葉がもたらす「意味」は、表現を変質させることもあります。
 それゆえ、現代芸術について研究するということは、社会における価値の在り方を問い、文化や社会全般について深く考察することでもあるのです。
 <写真:研究をもとにしたキュレーションにより、京都国立近代美術館で実施した展覧会 2017年>

日本美術・文化史研究室  (井戸 美里)
【研究テーマ】建築空間における障壁画・室礼に関する調査研究、風景・都市に関する絵画史料分析
【キーワード】日本美術/絵画/障壁画/室礼/芸能

 芸術作品を成立させる諸要素について多角的に分析を行います。私自身は日本の絵画(特に建築や室礼空間とともに存在する屏風絵や障子絵)を中心に、それらが享受された空間や描かれた図像学的な意味について研究を進めています。
 本研究室では、さまざまな方法論を学び、同時代の文学、歴史、建築など領域横断的な研究を通して、人々が生み出した作品の持つ豊かな世界を明らかにすることを目指します。地域、文化、時代に関わらず、学生は各自の関心のある作品やテーマについて調査し、自分の言葉で伝えることを目標とします。
 なお、井戸准教授の研究テーマは2021年3月に本学の注目研究として紹介されました。
 <写真:美術館での作品調査の様子>

デザイン思考・アントレプレナーシップ研究室  (Sushi Suzuki)
【研究テーマ】人や社会に向けた新しい価値の創造と共有に関する研究
【キーワード】デザイン思考/イノベーション/アントレプレナーシップ

 どうやって世の中に新しい価値を生み出すのでしょうか?この数十年で、イノベーションはニッチな言葉からビジネスの流行語になりました。デザイン思考は20年前には存在していませんでしたが、今では誰もが話題にしています。スタートアップとシリコンバレーの精神は、サブカルチャーから多くの都市の注目の的になりました。アイデアはどのように製品化され、どのように起業され、どのように企業として成功するのでしょうか?
 特定の業界、製品/サービス、または地理に限定せずに、世界で新しい価値を生み出すためのミクロおよびマクロレベルのプロセスと背景を考察します。

サステイナビリティデザイン研究室  (津田 和俊)
【研究テーマ】デザイン、ファブ、バイオ:サステイナビリティの実践的研究
【キーワード】資源循環/ライフサイクルデザイン/工藝/サーキュラーデザイン/パーソナル・ファブリケーション

 オープンデザインやデジタル・ファブリケーション、バイオテクノロジーなどの技術の急速な進展や民主化を背景に、多様な個人が、これらの技術を扱うための知識や実験機器を手元に備え、芸術表現や文化創造、課題解決、工藝制作、または日常生活へと活用していく動きがはじまっています。
 本研究室では、デザイナーやアーティスト、研究者、市民との様々な実践を通じて、オープンデザインやデジタル・ファブリケーション、バイオテクノロジーがより一層身近な技術として受容される未来像を描きます。また、これらの技術による循環型社会や自然共生社会の構築や、サステイナビリティの向上に向けたデザインリサーチの可能性を模索したいと思っています。

都市地域居住空間計画学研究室  (魚谷 繁礼)
【研究テーマ】京都及び国内外の都市地域の計画・変容そして現況に関する調査研究、都市地域における建築モデルの提案
【キーワード】都市/地域/建築/タイポロジー/モデル/グリッド都市/京都/アジア

 都市や地域を歩いているなかで出逢う多様な空間はどのようにして生成されるにいたったのか。多くの都市は計画により建造され、少なくない都市は、計画主体亡き後も、人々が棲みこむことによりその構造を変容させつつ生き続けてきました。その延長としての都市構造の現況を調査研究したいと思います。
 主な対象は京都旧市街です。(加えて国内外の都市、特にアジア諸都市を対象に、その形式と構造の変容過程についても比較研究したいと思います。)またそのような都市において、いかなる建築を計画すればいいでしょうか。この問いに応えるべく現代において型となりうるような建築モデルの設計案を検討したいと思います。それは新築かもしれないし、既存建築の改修や増築かもしれないですが、例えばそれは街区構造を改編するような建築であると考えます。

建築設計研究室  (角田 暁治)
【研究テーマ】村野藤吾の設計プロセス及び建築造形の根拠の在り様について
【キーワード】村野藤吾/情緒性/建築造形原理

 本研究室では、建築設計に関わる有形無形の諸要素や現象についての理論的研究や、建築言語の造形原理の根拠についての分析を行うとともに、実践的な設計を通してその具体的な展開を検証しています。着想したアイデアを建築として成立可能なものとするために幅広い視点から問題を捉え、自らの意図を正しく第三者に伝えるための修練を行っています。
 また、本学美術工芸資料館所蔵の村野藤吾の設計図面の整理と分析を通して、設計プロセスと作品の関係についての考察も行っています。

建築デザイン研究室  (木下 昌大)
【研究テーマ】最適化する建築 -持続可能な風景をめざして
【キーワード】建築デザイン/設計手法/最適化/サスティナビリティ/風景

 建物がつくられるとき、そこにはあらゆる次元で多くの与条件が存在します。それらの与条件が取りこぼされず、切り捨てられず、高度に統合されたとき、その建物は内外の環境をより最適なものに変える「建築」と呼べるものになると考えます。そのような「建築」をどのようにしてデザインするのか、その方法論を研究と実践の両側面から探究していきます。

建築設計研究室  (金野 千恵)  ※金野 千恵特任准教授の紹介動画はこちら
【研究テーマ】生きることとつくることをつなぐ建築意匠論・設計論
【キーワード】建築設計/建築意匠論/ロッジア/コモン/ケア/コンビビアリティ

 現代の私たちの暮らしと、それを取り巻く環境の関係について、調査研究や設計を通して思考していきます。近代化を経て、私たちの生活は安定し便利さを獲得しましたが、その代わりに生きる術や、暮らしを楽しむクリエイティブな能力を減退させてきたのではないでしょうか。
 私たちの身体に比して大きな建築やまちを含む環境を、対象化するのではなく身体と連続する存在と捉え、ともに構築し持続させていく術を考えていきたいと思います。

建築設計研究室  (武井 誠)  ※武井 誠特任教授の紹介動画はこちら
【研究テーマ】建築の新しい境界空間
【キーワード】建築設計/境界空間/中間領域/閾/ピロティ/都市計画

 建築を生み出すことは文化をつくることです。人間が本能的に身を守るために洞窟を住処にしてから、人間が創造する構築物が日々の暮らしを豊かにし、人々が集まり住まい、都市が形成されます。そうやって建築を通して人間が歴史をつくっていくことが文化なのです。地球という自然の中で建築をつくることは、地表との物理的な関係性を構築すること、言いかえれば重力を相手にすることです。
 例えば、ル・コルビュジエが自然物と人工物の間の新しい境界をつくり出す建築形式「ピロティ」を考案したように、現代において、私と公、内部と外部、土木と建築といった、異なる2つの領域を横断し、建築の利用者だけでなく、人々が気軽に立ち寄ることのできる、多様な活動を育む新しい境界空間のあり方を探求していきたいと考えています。
 なお、武井特任教授の研究テーマは2021年9月に本学の注目研究として紹介されました。

現代建築設計研究室  (中村 潔)
【研究テーマ】現代建築の設計思想・手法研究
【キーワード】空間/場所/テクトニック/構造/構想力/現代思想/庭園/日本の思想

 モダニティの本質は、事後的に観察される進化や進歩ではなく、また革命的な刷新でもなく、現時点で世界にある過去や自然や思考からもたらされたすべてのものを材料とみなして、未来が善く美しくなる可能性に賭けた、現時点では世界にない新しいものを形成しようとする意思の持続です。私たちはそうした形成への意思をもって、新しい空間形式の実在化を図る建築を現代建築と定義します。
 本研究室では、現代建築の設計を方向づける建築理念の創出、方法の開発、過去データベースの再解釈を研究します。さらにそうした形成の原動力となる、技術や身体や環境や歴史へと回帰し、それらの意味を更新しつつ再統合する構想力を養います。

建築設計学研究室  (長坂 大)
【研究テーマ】既存環境と新しい空間構想
【キーワード】コンテクスト/地球/環境/都市/集落/建築/ランドスケープ/建築家

 建築設計とは人間のための地球の改修計画です。建築単体はもちろん都市や自然といった地球上の空間すべてに美意識を持ってほしい。私が学生時代に最も衝撃を受けたのは『建築家なしの建築』に登場する世界の集落でした。天才建築家といえども到達できない圧倒的な造形美。長期的な時間軸で育まれる人間の生存活動の軌跡。単純な原理と複雑な結末。美しい都市や個性的な集落には、個性的発明や各種の生成原理が蓄積されています。
 それでは私たちは建築家として、家や村や都市を設計するにはどうしたらいいのでしょうか。本研究室ではこんな問いを契機として、新しい建築をつくるための実践的方法を探求しています。

建築構造研究室  (金尾 伊織、満田 衛資、村本 真、小島 紘太郎)  ※「建築構造研究室」の紹介動画はこちら
【研究テーマ】歴史的建造物を含む建築物の耐震性能評価と構造設計技術の開発
【キーワード】耐震構造/伝統的建築/構造力学/構造設計/建築ロボティクス/情報技術

 本研究室では、歴史的・伝統的建築を含む様々な建築物の耐震性能を向上させる研究から、構造設計技術に至るまで幅広い分野を対象としています。建物が崩壊に至るまで追跡可能な大変形骨組解析法の開発を行うと共に実験的検討を行い、建物の性能を精確に評価する手法を検討しています。
 さらに、長周期地震動と建築物の共振現象を効率的に評価する方法の開発も行っています。評価手法の確立と並行して、構造設計者支援の立場に立ったAIやIoTを用いた新しい時代の構造設計手法の開発を行います。これらの研究成果に基づき、デザイン性と安全性に優れた構造設計技術を確立することを目指しています。
 <写真:茶室などにみられる極めて薄い土壁の性能評価実験の様子>

建築・まちづくり計画研究室  (阪田 弘一)
【研究テーマ】多様性に開かれ持続性に富んだ建築・まちづくりへの取り組み
【キーワード】居住/公共性/再生/防災

 住まいをはじめとする建築、その総体としてのまちは、人の生活の基礎となる空間です。望ましい建築そしてまちをつくることは、住まい手や使い手自身が計画や建設、そして維持管理に積極的に関わり続けていけることが重要です。しかし現代社会は分業化・複雑化が進み、人々が建築やまちとそうした直接的な関係をうまく持てずにいます。
 そこで本研究室では建築・地域計画の分野において近年は以下のような研究テーマに、設計・ものづくりの実践、当事者への支援活動なども含め、取り組んでいます。
1)災害時避難に配慮したまちづくり
2)被災者のための応急居住空間
3)難病患者や認知症高齢者が住み続けられる住まい-まち
4)建築・まちの再生・復興手法
 <写真:都市・建築防災研究と被災地支援の一環として、東日本大震災の津波で全壊した石巻の歴史ある映画館と石巻市民の復興を願い、映画館跡地近くでの一日限りの仮設野外映画祭の企画・設計・施工に携わった。>

建築計画・地域施設計画研究室  (高木 真人)
【研究テーマ】伝統的空間の機能的継承/こどもを元気にする空間づくり
【キーワード】中間領域/こども環境/地域施設

 建築計画の分野において、特に伝統的な中間領域的空間に関する研究やこどものための空間づくりに関する研究を行っています。
1)廊・縁側など伝統的な中間領域的空間を機能的な側面から分析・再評価し、再生・継承することや、保育施設など現代の地域施設計画への応用を考えています。
2)こどもが自由に外遊びできる環境に関する研究や、保育施設計画に関する研究、公立小学校の再編やそれにともなう廃校の利活用に関する研究を行っています。

都市計画・都市史研究室  (岩本 一将)
【研究テーマ】質の高い都市空間の形成手法に関する研究
【キーワード】歴史まちづくり/景観まちづくり/都市計画/都市史/土木史

 都市空間を対象に、社会の抱える様々な問題(環境改善や交通事故の減少、地域コミュニティの強化、歴史的資源の保全・活用)の解決に寄与している国内外の公共空間整備に着目し、フィールド調査やヒアリング調査、資料(史料)調査を通じて、官民連携の体制構築や合意形成手法、空間設計の工夫、都市の歴史的変遷などを分析することに取り組んでおります。現在は大きく以下の3テーマを研究しています。
1)歴史まちづくりに資する公共空間デザインに関する研究
2)海外の先進的な公共空間活用の実現過程に関する研究
3)港湾都市の形成に関する都市史研究

日本建築・都市史研究室  (登谷 伸宏)
【研究テーマ】日本建築・都市史研究/歴史的建造物、伝統的町並みに関する調査・研究
【キーワード】日本建築史/日本都市史/京都/城下町/寺社建築/文化財調査

 本研究室では、2つの大きな柱を立てて研究に取り組んでいます。ひとつが、現存する古建築、都市・集落、古文書・古記録・絵図などさまざまな史資料を読み解くことにより、これまで描かれてこなかった歴史の新たな側面をみつけることです。もうひとつが、各地に現存する古建築や都市・集落を調査・研究することによって、それらの歴史的・建築的な価値付けを行っていくことです。
 私たちの生活している環境は、多くの人々が積み重ねるようにつくってきたものであり、歴史的に多様な価値を持っています。そして、それらは社会全体として未来へ継承していく必要があります。そうした価値を明らかにし、それを社会へ発信すること、そこに歴史を研究する意義があると考えています。

都市史・領域史研究室  (赤松 加寿江、大田 省一)  ※赤松 加寿江准教授の紹介動画はこちら
【研究テーマ】西欧の歴史都市、歴史建造物、文化的景観に関する調査研究/日本・アジアの近現代都市空間の形成・変容過程と都市解析
【キーワード】都市史/領域史/景観史/文化的景観/京都/城下町/寺社建築/文化財調査/都市論/日本美術/視覚芸術/絵画

 都市や領域(集落、農地、地域など)には、政治、経済、文化、生活など、人間活動の歴史が積層しています。本研究室では、その歴史的空間に着目しつつ、都市を構成するさまざまな要素と、それらの関係を明らかにしていくことを目指します。都市・領域を構成するモノ(建築・道・耕地など)の調査、および古文書などの文献史料や絵図・地図などの図像史料の分析などによって研究を行います。フィールドは京都市内・近郊からイタリアなどヨーロッパ、またアジア各地にまで及んでいます。
 なお、赤松准教授の研究テーマは2022年11月に本学の注目研究として紹介されました。

近代建築史・近代建築保存再生学研究室  (花田 佳明、中山 利恵、笠原 一人、三宅 拓也)
【研究テーマ】近代建築の歴史及び保存再生、活用、リノベーション
【キーワード】近代建築/保存再生/リノベーション/建築修復技術/建築アーカイヴズ

 近年、優れた近代建築や近代の建築(民家・町家等も含む)が各地で解体の危機に瀕しています。しかし、歴史を正しく生かしつつ現代の用途に適合する優れた保存・活用ができれば、私たちの都市環境に歴史的な深みと新しい機能の両者を与えることができます。
 本研究室では、近代の建築家や大工などの技術者とその作品、そこで展開された造形と技術、それを支えた制度と地域について研究しています。加えて、その近代建築の保存・改修をめぐる理念・方法・技術・美意識について、グローバルな視点での調査・研究を行っています。

日本建築史・都市建築遺産論研究室  (清水 重敦、MARTINEZ Alejandro、松田 剛佐)  ※MARTINEZ Alejandro助教の紹介動画はこちら
【研究テーマ】都市建築遺産の調査研究とその保存活用の実践/日本の木造伝統建築の様式や意匠、材料や技術等に関する実証的な調査研究
【キーワード】文化遺産/都市建築遺産/文化的景観/伝統的建造物群/日本建築/建築生産史/寺社/数寄屋/民家/文化財建造物

 本研究室では、日本・東アジア、あるいは世界における木造を中心とした伝統建築を研究対象とします。日本あるいは東アジア建築史・都市史の研究を基盤として推進するとともに、研究室から積極的に外に出て、伝統建築、町並み、都市、文化的景観といった文化遺産、すなわち「都市建築遺産」を幅広く対象として具体的な保存再生・まちづくりのプロジェクトを実施していきます。研究室の現在のテーマには、
1)文化遺産の保存活用に関する制度と理念の研究
2)文化的景観や歴史的町並みの調査研究とまちづくりの実践
3)日本建築等の木造伝統建築に関わる意匠・技術・文化の研究、などがあります。
 なお、MARTINEZ助教の研究テーマは2023年3月に本学の注目研究として紹介されました。

西洋建築史・建築論研究室  (西田 雅嗣)
【研究テーマ】建築とは何かを歴史の中に考える
【キーワード】建築史学/建築考古学/比較建築論

 フィールド調査を軸にした西洋中世建築の考古学研究と、日本建築をフランスの研究者と考える比較建築文化論の研究室です。日仏共同研究のほか、学生も含めた日仏間の行き来が盛んで、特にパリ=ソルボンヌ大学の美術史・考古学研究グループとは密接な関係にあります。
 建築史・建築論は、理論的な基礎研究分野ですが、フランスの中世教会保護活動や、フランスにある日本建築の修理などにも、現地研究者や公共団体などとともに関与しています。

建築メディア論研究室  (山崎 泰寛)
【研究テーマ】建築展を中心とした建築メディアの実践・理論に関する研究
【キーワード】編集/キュレーション/建築雑誌/建築展/近代建築史

 一度建設されると容易に移動しづらい建築物は、近代以降、雑誌や書籍などさまざまなメディアを通じて世界中の人々に届けられました。そのなかでも図面や写真、模型、テキストといった多様なメディアの複合体である建築展は、空間的な編集物として鋭いメッセージを託され、ときに実物の建築を超えた影響力を持っています。また、建築家以外の多様なステークホルダーが関係するために、芸術的意図を飲み込む、社会性や政治性の只中に置かれてきた側面もあります。
 本研究室では、そのようにメディアとしてあらわれる建築的実践に注目し、その歴史的分析に取り組んでいます。

Sustainable Design Lab/Studio  (Erwin Viray)
【研究テーマ】持続可能なデザイン・建築・環境の可能性
【キーワード】持続可能性/デザイン/建築/環境/デジタル/フィジカル

 科学技術の進歩に伴い、建築の可能性はフィジカルの領域に留まらず、デジタルの領域にまで広がっています。それらの領域において、新しい設計手法やメディア表現、編集技術を駆使し、持続可能な建築のあり方を研究します。

コンピュテーショナルデザイン研究室  (木内 俊克)
【研究テーマ】建築・都市領域におけるコンピュテーショナルデザイン
【キーワード】コンピュテーショナルデザイン/デジタルファブリケーション/建築情報学/資源循環/ボトムアップな都市介入

 現代は地球規模での課題にあふれています。気候変動やエネルギー資源の問題はその最たるものですが、では建築や都市といった人工環境をつくり維持する産業や活動をどう本質的に捉え直し、より持続的でかつそこに喜びを感じられるような仕組みに更新していけるかが問われています。サーキュラーデザインの台頭や、リユース、リペア、リノベーションへの注目はすべてこうした問題意識の現れだと考えます。
 本研究室では、これらの状況に対し、情報技術やデジタルツールを駆使したコンピュテーショナル・デザインにより切り込んでいく研究に取り組んでいます。既存建築の3Dスキャニングや解体資材のデータ化、取り込んだデータ活用による適応性の高いデザインシステム構築、環境シミュレーションによるヴァナキュラーな建築の成り立ちや価値の再検証・利活用提案、また技術的な資材の再利用にとどまらないデータを介した建築の記憶や物語の継承・読み替え、リユース・リぺアの魅力を引き出すデザインの実践などが目下のテーマですが、今後も研究室のメンバーひとりひとりがリアリティーをもって取り組めるトピックを掘り出し、これからもいまの時代だからこそ取り組むべき課題にチャレンジしていきます。